イチオシ!スポーツ Book Review一覧

2014-5-2

月給取りになったらアカン―私の履歴書

bookreview_0096_01 企業活動とスポーツは似ていると感じる。所属する組織への愛着、そしてマインドの統一が、団体の発展に欠かせないと思うからだ。

 「働きがい」もこれに繋がってくるのではないだろうか。私は就職活動を通じて、ベンチャー企業は「やりがいを感じる」、との話を聞いた。確かに、ベンチャー企業にとって、一つひとつの仕事が大きく企業の発展に繋がり、各個人における責任感からやりがいを感じるのも容易に想像できる。

 しかし、著者である瀬戸雄三氏が会長まで務めたアサヒビール株式会社はベンチャー企業とは全く言えない、ビックカンパニーである。それにもかかわらず、アサヒビール株式会社は、日本における「働きがいのある会社」ランキング(Great Place to Work(R) Institute Japanより)に、2013年度まで毎年ランクインしている。その背景には一体何があったのだろうか。

 アサヒビール株式会社には良きリーダーがいたのだ。なにか一つの物事に対して、メンバーの意志を結集させるのには、リーダーの存在が非常に大きい。本書では、リーダーは「演出家」であれ、と記されていた。一般的に、リーダーというのは、その集団の中で一番目立つ存在だ。しかし、著者は、それでは駄目だと言う。リーダーは、役者=メンバー達を引き立たせるための舞台を作るべきなのだと。但し、責任は全て、リーダーが背負うべきであるとも言う。

 スポーツに例えるならば、リーダーは監督や指導者の役割であろう。もしくはクラブチームであるなら社長やGMといったところか。選手たちの力を最大限に発揮するためには、その環境づくりに注力し、その責任を全うすべきなのだ。そのように言うならば、体罰や、暴力はもってのほかである。

 本書は、瀬戸雄三氏の体験談を中心に書かれているが、読み終えても、一つも自慢とは感じられず、とても爽やかな気持ちになった。そんな気持ちにさせる話し方や、スタンスを持っている人こそ、メンバーのベクトルを一つに向けることのできるリーダーにふさわしいのであろう。