「あそビバ!」プログラム開発の背景
6.幼少年期の動作の発達
〔幼少年期の動作の発達〕
生涯にわたって、幼少年期(2,3歳)から幼稚園から小学校を卒業する(11、12歳)までの期間が、一生の中で動きを身につけることに最も適した時期と言われています。教育学では「発達課題」と言われています。心理学などでは「臨床期」、「臨界期」、あるいはそのときに一番身につけることが大事ということで「強調期」というふうに言われています。
この時期は、子どもたちにとって、動きの多様化、量的な獲得をして、動きを洗練化させ上手にしていくために大事な時期と言えます。投げ方が上手になる、蹴り方が上手になる、ボールのつき方が上手になることが最も身につきやすいと言われています。そのため、この時期にいろんな動きを経験して、いろんな動きを身につけて、なおかつ、動きが上手になっていくことが必要です。
動きの習得には、多様な「動き」を多く獲得することと、その獲得する「動き」が上手になる、洗練されるという二つの方向性を持っています。いろんな動きをたくさん経験することによって、その中で、一つひとつの動きが上手になっていきます。
こういった、動きの質に関する研究を日本で最初にやったのは、現在、十文字学園女子大学の学長をされている宮丸先生です。運動を結果で見るのではなく、動き方を見る研究です。
例えば、陸上競技において、「速く走れ」と言うことは指導とはいえません。速く走るためには、「腕を大きく振りましょう」とか「脚を高く上げましょう」といった動き方の指導をしていきます。投げた距離、走った時間、あるいは跳んだ距離といった結果だけではなくて、動き方そのものを見ていく研究があります。
〔からだの動き、基本36動作〕
引用:中村和彦(日本トップリーグ連携機構 理事・山梨大学教育学部長)
幼少年期に身につけてほしい「いろんな動き」を36示します。36の動作には、平衡系9コ、移動系9コ、操作系18コの動きが含まれます。平衡系は「バランスをとる動き」、移動系は「体を移動させる動き」、移動系は「物を操作したり、自分や相手の体を操作したりする動き」です。これが、量的な動きの獲得、多様化というところに値します。幼少年期の間に子どもたちが、36コの動きをいろんな形で経験することが大切だと考えられています。
アメリカの研究では、平衡系はスタビリティムーブメント、移動系はロコモーティブムーブメント、操作系はマニピュレ-ションムーブメントと言います。
これは生涯にわたって、この幼少年期の頃に身につけることが望ましいと思われる基本の動きを抽出しています。基本の動きとは何か?どんな動きをしたらいいのか?という研究は、30年くらい前に各国で行われました。
日本では、1980年に当時の文部省(現文部科学省)の外郭にあった、体育科学センターが84種類の動きを示しています。ヨーロッパ、アメリカといった欧米の研究者たちも基本の動きを提示していて、24種類、51種類の動きをそれぞれ示しています。今の日本の子どもの実態に応じてまとめると、この36というのが基本の動きとして、よいのではないかと思っています。
NHKの「からだであそぼ」という番組では、この36の基本の動きをコンセプトとし、いろんな動きを経験できるような内容になっています。2010年4月から「あさだからだ」に変わりましたが、子どもの動きに着目した番組を5年間続けています。