ホッケー日本リーグ

2013-6-3

地域に愛され、世界に通じるホッケーのために コカ・コーラウエスト レッドスパークス

高円宮牌2013女子ホッケー日本リーグが終了し、昨年の覇者コカ・コーラウエスト レッドスパークス(以下CCWR)は惜しくも連覇を逃しましたが、選手の9名が代表候補に選ばれており、監督は代表監督でもある柳承辰(ユー・スンジン)さん。CCWRはまぎれもなく女子ホッケー界の頂点に立つチームの一つです。柳監督にCCWRについて、日本の女子ホッケーの今後について伺いました。

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ユー監督

Q : リーグ戦が終了しましたが、今秋には全日本女子選手権、全日本社会人選手権、国体があります。いまのチームのムードはいかがですか?

 リーグ戦ではこちらにも反省点がありました。守備的な戦術をとってくるチームも多いので、私たちはそこを突破していかなければなりません。自分たちのホッケーができなかった部分を今年後半で挽回していきます。代表チームとの兼ね合いについては問題はありません。4月末にも遠征がありましたが、リーグが日程をうまく組んでくれていますからね。

Q : CCWRの監督就任から6年目。チームはどのように変わって来ていますか?

 初めに比べると選手たちに要求する部分が少なくなりましたね。その分、選手の自立心やレベルが上がってきました。応用も自分たちでできるようになってきています。大半の選手が、お互いをよく理解していますし、私も理解してくれています。うちのチームは歴史は浅いんですが、個々のレベルも意識も高いので、後輩もしっかり指導しています。今後の伝統につながるだろうと思っています。

 チームのコミュニケーションについて言うと、試合は実力ですから、先輩後輩は関係ありません。ただ、グラウンドを離れたらサポートしあうよう私も強く求めています。駒澤キャプテンはグラウンドの外でも信頼されていますよ。自ら先頭に立って行くタイプですから、まわりも自然と彼女についていくんですね。試合が終わってチームでの打ち上げがある時には、全員必ず参加してくれます。監督の私ともコミュニケーションを取りたいという気持ちがあるようで、それは嬉しいことですね。

 自分には、国内でも世界でも、ある意味これまでとは違ったホッケーをやりたいという気持ちがあります。今それができるのがこのチームだと思っています。

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Q : 柳監督が日本にいらしたのは20年以上も前のことになります。日本に来ることを決心した理由は何でしたか?

 名古屋で9年、奈良で9年、そしてCCWRで6年になります。日本は第二の故郷ですよ。皆さんに色々と助けてもらっていますから、自分はホッケーの指導をすることでその恩をお返ししていきたいです。日本代表の監督になってランキングを10位から5位に上げました。ロンドンでは選手の怪我もあり、思ったような結果が出せませんでしたが、いい経験になりました。もっと色々な面でレベルアップしていきたいです。

 最初に日本に来ると決めた時には、まわりの反応は、反対と賛成半々でしたよ。確かに、韓国ではかなり批判されましたが、自分はホッケーをスカウトされたわけですからね。自信もあったし、日本で一緒にやっていけるような雰囲気も感じていました。日本は先進国ですし、海外でもっと学びたい、自分を磨きたいと思いました。当時は体育の教師を目指していたんですが、来てよかったと思っています。特に中京大学で学べたことは感謝しています。

Q : ランキングでは日本はまだ韓国に及びませんし、日本選手は韓国選手よりもフィジカルが弱いと言われます。両国の差を監督はどう思われますか?

 ホッケーというのは無酸素系の競技で、持久力よりもスピード系、短距離系、瞬間的なパワーが大事なんです。なので、昨年の12月からストレングスコンディショニングを取り入れて、ウェイト中心のトレーニングをしています。CCWRも代表も、広島のトレーニングクラブの同じスタッフに任せています。トレーニングをやっている人とやっていない人との差は歴然です。

 韓国チームのフィジカルの強さもトレーニングによるものですが、1993年まではやっていなかったんですよ。でも4年間みっちりやったおかげでメダルが取れました。(注:1996年アトランタ五輪 韓国女子ホッケーが銀メダルを獲得)やはりフィジカルを強化しないとどこかで一歩抜け出すことはできません。高校生の時から専門的にやってもいいと思いますよ。代表に入る時点で身体ができていてほしいというのが正直なところです。

 実は、韓国のホッケー人口はいま3000人もいないと思います。日本の10分の1ですよ。それでも日本より強いのは、チームの強化のやり方が違うからです。そう考えれば、日本のランキングはもっと高くていい。レベルアップはホッケー界全体の課題です。例えば韓国はホッケーの強化校があって、中学や高校からホッケー選手としての身体ができていきますが、日本の学校では多くの運動部がある中にホッケー部もあるので、選手の取り合いになってしまいます。国家の強化予算にも差はあります。私は長時間練習しなくても、プログラムをしっかりしたものにすれば大丈夫だと思うんですが、代表選手はさまざまなチームから来ているので、トレーニング方法に差がありますからね。なかなか難しい面はあります。

Q : なでしこジャパンは世界一になりましたが、日本のボールゲーム全般が伸び悩んでいる現状があります。ホッケーを含む日本のボールゲームをパワーアップさせるにはどうすればよいと思いますか?

 スペインに行った時に、プロサッカーチームの収入を下部のホッケーなど、あまりメジャーではないスポーツに分配していく方法を知りました。チームが独立できるようになるまでの支援としてとても良い方法です。地域にそうしたスポーツクラブができて、ジュニア、ユース、トップチームという層の厚さが作れれば、本当に理想的だと思います。スポーツは子供たちの健全な発育のためには欠かせませんし、やはり経営する側の発想が大事だと思います。

Q : 今後のことについてお聞かせ下さい。まず、コカ・コーラウエスト レッドスパークスの課題と魅力は?

 課題は、やはりチームが常に強くあること、日本の女子ホッケーをひっぱっていくチームであり続けること、そのために個々の能力をアップさせることです。勝利をめざしているわけですが、その中でも王者としてふさわしい活動をしなければならない。そういう組織でないといけないのです。地域密着のチームとして活動していますが、まだまだ足りないです。もっともっと地域とふれあい、ホッケーの魅力を知ってもらう必要があります。スクールは機会あるごとにやっていますが、組織的にもっと楽しんでもらうようがんばっていきたいです。自分たちが愛されてこそホッケーの認知度が上がるわけですから、代表での実績も残さなければなりません。

 魅力は、前向きな姿勢ですね。FOR ONEというスローガンは、全員がチームのために一つになってがんばるということです。さらに、組織があって個人を活かす、試合でも組織的なプレイをしながら、個々のスキルや特徴を見せて行くこと、そこを指導しながらやっています。

Q : 柳監督ご自身の今後の目標は何ですか?

 まずはCCWRを常に女子ホッケーをリードするチームにすること、世界に通じるような選手、地域に愛されるチームを作ることです。代表チームに関しては、まずアジア大会できちんと結果を出し、リオの五輪でメダルがとれるようなチームにしたいです。大きな大会での達成感を分かち合うのが一番楽しいですね。いまはとてもエンジョイしていますよ。

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◎ インタビュー後、「ゴルフが大好きなんですが、行くヒマが全然ないんですよ」と笑顔でおっしゃられた柳監督。今年も、国内の試合以外に、6月13日からオランダでFIHワールドリーグセミファイナル、9月21日からアジアカップ、11月1日からアジアチャンピオンズトロフィー、そして12月1日からFIHワールドリーグファイナルと、大きな大会が続きます。日本の女子ホッケーへの多大なるご貢献に感謝すると同時に、今後のCCWRとさくらジャパンのご活躍をお祈りしております。

またお忙しい中、お時間を作って下さった柳監督、國延GM、田村GM代行に心よりお礼を申し上げます。


<CCWR観戦アルバム>

◎ 4月19日(金) 広島広域公園第二球技場  対グラクソ・スミスクライン戦

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両チームの選手たち。
フィールドが濡れているのは転倒時の人工芝での熱傷を防ぐためです。
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試合を見守る國延久昭GMと田村洋二GM代行
 

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会場に華を添える、チームのマスコットキャラクター「スパークイーン」。

プロポーション抜群!

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地元、広島経済大学のブラスバンドが応援に駆けつけました。
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攻めるCCWR。結果は2-0。No.18イ・インギョン選手が2得点を上げました。

◎ 5月12日(土) 岐阜県グリーンスタジアム   対天理大学ベアーズ

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試合が始まります。
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No.11駒澤李佳選手
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No.21岩尾幸美選手
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No.16キム・ミソン選手
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地元の学生たちも真剣に観戦。
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ハーフタイムにも水をまきます。
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攻めるCCWR!
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選手に指示を飛ばす柳監督。
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5-0で終了!前半は天理大学ベアーズの堅い守備に1得点にとどまりましたが、
後半はCCWRの猛攻で4得点を奪いました。

コカ・コーラウエスト レッドスパークス ホッケー オフィシャルサイト

日本ホッケー協会 女子日本代表チーム 公式サイト