サッカーJリーグ

2013-10-16

GM対談 in OKAYAMA <第2回>

 日本トップリーグ連携機構に加盟している国内のボール競技12リーグの中には、企業チームから高校・大学のチームまで223のチームがあります。その中でも、自ら資金を集めて運営しているクラブチームには今後への期待が集まっているものの、収益構造の維持や人材の確保に苦労しているチームも少なくありません。そこで、岡山の地で着実に前進している2つのチーム、岡山湯郷Belleと岡山シーガルズの両GM、黒田和則GM、岡野實GMにチーム運営の現状、岡山のいま、夢や理想などを自由に語り合って頂きました。進行はびわこ成蹊スポーツ大学の吉倉秀和助教です。ぜひ、チーム運営の参考にしていただければ幸いです。

なお、連日の猛暑の中、ご多忙にも関わらずご承諾下さった両GMには心よりお礼申し上げます。(全3回)

<第2回>

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左より、岡山湯郷Bell GM 黒田和則氏、岡山シーガルズ GM 岡野實氏、びわこ成蹊スポーツ大学助教 吉倉秀和氏


選手に関して (雇用、肖像権)

吉倉  選手の雇用について伺いたいんですが。

黒田  そういえば岡野さん、人件費の件、どうなりました?

岡野  企業さんに社員として雇用してもらい、うちに派遣する形をお願いしています。いまはこちらの出した労働契約案を検討してもらっているところです。

黒田  週のうち1日、2日だけでは社会保険や年金の点で厳しすぎますからね。

岡野  黒田さんのところは雇用してもらっているからいいですが、うちは全員社員ですからね。栗原(恵選手)と山口(舞選手)はプロ契約ですけど。

黒田  それと、アマチュア規定とか色々ありますでしょ。

岡野  肖像権についてはやっと今年、社内のPRならいいということになりました。でも他企業のPRはできないんですよ。シーガルズや株式会社ウォーク(チーム運営会社)のPRをしても意味はないんですけどね。もしPRとしてメディアに出るなら出演という名目になります。

黒田  なでしこの場合、本人が肖像権をチームに委譲し、チームが一括してリーグに委譲するんですが、本来個人に帰属するものなので規制はありません。代表に関することは決まりがありますが。選手が働いている会社のチラシに出てよいか、といったことは、出す前に連絡してくれれば問題ありません。

岡野  いいですね。

黒田  サッカーもいつか人気に陰りが来ると思うので、それを保って行くにはそれぞれのチームががんばらないといけないというのが根底にありますからね。

スポーツ立県おかやま

吉倉  岡山はスポーツ立県宣言をしていますね。

岡野  はい。地域連携で行政がスポーツをからませたいというのがあるんですが、チーム岡山と言うのがあって、ファジアーノ岡山、岡山湯郷Belle、吉備国際大学Charme、岡山シーガルズのトップ4チームが岡山大学のキャンパスに集まって、いかにして産学官の三つをからめていけばいいかを討議しました。元々はプロ野球チームを作ろうと、商工会議所の青年部が発起人になってチーム岡山県民応援団というのを作ったんですが、頓挫していたんですよ。でもここに来て再度何かやろうとしています。黒田さんのところとは「女子会」をやろうという話もありました。チームそれぞれに事情がありますから難しさはありますが、事務局の方には精力的に動いてほしいですね。

黒田  二段階でいいと思いますよ。うちとシーガルズがまず何かやって底力をつけてから、ファジアーノとシャルムを後で絡める方がいいのではないかと私は考えています。

岡野  チケットの話ですが、ファジアーノとシーガルズは、kankoスタジアムと桃太郎アリーナは隣ですし、ファジアーノの開幕とシーガルズの3月大会が同じ時期で時間もずれるので、サッカーの半券でバレーが観られるような共通券を出したかったんですが、JリーグからNOが出てしまった。でも黒田さんのところ(なでしこ)はOKなんです。サッカーとバレーとは時期が逆なので、年間にわたって両チームを応援するファンクラブみたいなものを作って、通し券を作る方法もあるかなと思っています。

地域連携の現状

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黒田和則GM(左)岡野實GM(右)

吉倉  チームの地域連携に関してですが、市町村ではなく県との連携はありますか?  

岡野  国体で招致を受けてできたチームですから県から補助金が出ていました。過去10回優勝しているので貢献はしてますよ。それから、県のスポーツ振興課とはさまざまなコラボレーションをしています。例えば、岡山県デーのような形で予算をつけてもらいアリーナの外にテントを出して、岡山県産品を紹介したり、市長のご挨拶やJAのサンプリングがあったり、お米を参加チームにプレゼントしたり。あとは岡山のクリーン作戦や、岡山市の観光大使「観光アスリートメイト」という名刺を選手に持たせて県外で配らせて、それを持って来た人は観光施設の入場料を半額にしたり。 それから、2005年国体の後、競技力を下げないために、県のトップアスリート派遣事業というのがあって、県がコーチ派遣料を予算化してくれています。トップチームで頑張っているチームの選手と、国体で6位以上に入賞した選手が登録していて、要請があった時に派遣されるんです。初年度は年間百数十回にもなりました。派遣料は交通費込みで12500円です。予想以上に増えたので、徐々に予算は減っていますけど。

黒田  うちはそもそも2002年日韓ワールドカップの時、美作のラグビー・サッカー場に事前キャンプを誘致しようとしたのが始まりです。(注:スロベニアの事前キャンプが実現)その時は県も一生懸命でしたね。でも美作なんて誰も知らない、「みまさか」と読めない、湯郷だって「ゆのごう」とは読めない。名前を売るには何がいいかと考えていた時川淵三郎さん(注:当時Jリーグチェアマン)が「女子サッカー面白いよ」と言うので女子チームを設立することになったわけです。だから県との関係は良好です。あの時立ち上げていなかったら今の我々はいないでしょうね。 県の体育協会から言えば国体がメインになるんですけど、岡山国体当時、競技力対策課にたくさんの選手が雇用されてましたが、いまうちのチームは一人だけです。美作市の体育協会に派遣という形になっています。県としては国体で上位に入ることが夢でしょうしね。もし20位台に下がって来たらまずいですね。

深刻な競技人口の減少

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吉倉秀和助教

吉倉  現在、競技人口はどのようになっていますか?

岡野  日本バレーボール協会が2、3年前からゴールドプランという若年層への普及・振興の活動をしていますが、なかなかうまく行っていないようです。トップのVリーグに下部組織、ジュニアチームを作る、地域の都道府県の協会と連携して小中高一貫指導をする、といったことでぜひ協力してほしいと言われています。私も県の協会の常任理事なので、ゴールドプラン岡山版の立ち上げに協力しているんですが、この6月に第一回プロジェクトチームを立ち上げたばかりです。そこで、岡山県下のバレー人口を調査していますが、中学に部活があるか調べたら、女子は82〜83%と全国平均レベル。でも男子は25%。平均以下です。小学生は、連盟に登録しているチームと、スポーツ少年団の登録チーム、まったく登録していないチームがあり、把握がなかなか大変です。最近は個人登録に切り替えているところもあるし、大会に遠征したくないからと登録しないチームもあります。いずれにせよ、減っているのは確かで、バスケットよりもバレーの数の落ち込みの方が激しいです。男子が少ないのは全国的傾向ですね。サッカーや野球に行ってしまう。バレーはバスケットよりもテレビの露出度が少ないでしょう。子供にとってメディアは大きいですよ。それに指導者不足がよく言われますが、日体協(日本体育協会)の指導員制度に登録している人が県下に350人ぐらいいるんです。指導者がいないというのは嘘です。ただ、部活は学校体育なので教師の中から顧問をつけなければいけないんですが、なり手がいない。だからU-15といった地域のチームを作ろうということになります。サッカーはその点、進んでいますよね。

黒田  サッカーは子供は男女一緒なんですが、女子は部活がなくて一つの学校では無理なので、地域の複数の学校が集まってチームを作ることを進めています。確かにドイツでの優勝以来サッカー人口は増えたかもしれませんが、人口に比例して増えているとは思えませんね。50000人とか言われますが、決して急に増えたわけではないと思います。登録が増えただけで。ただ、岡山には2001年にうちができて吉備国際大学もあって、高梁日新高校や林野高校にも女子サッカー部ができたり、という増え方はしていますが、2000年当時は、女子サッカー不毛の地と言われていましたからね。底辺は広がっているかもしれませんが、中間がもっと頑張らないと。少子化で子供のとりあいでしょ。うちの選手は仕事しているので、土日祝日に幼稚園や保育所に巡回指導していますが、そこで必要なのはスター選手です。宮間がいけば盛り上がります。そして、指導先の子供たちが手紙を書いてくる。宮間と福元は必ず返事を書く。これはいいことですよね。まだ岡山は捨てたもんじゃないぞ、と思いますよ。

岡野  それは子供たちにしてみたら、最高の宝物になるんじゃないですか?

<第3回につづく>

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黒田和則氏 プロフィール

昭和20(1945)年12月6日生まれ。美作町助役を経て、平成13(2001)年5月岡山湯郷Belle 部長、12月G Mで現在に至る。平成13(2001)年 5月より日本女子サッカーリーグ評議員代理、平成23(2011)年4月から一般社団法人日本女子サッカーリーグ理事(現職)。

岡野實氏 プロフィール

昭和23(1948)年石川県加賀市生まれ。NECフィールディング関西第二支社長を退任後、平成18(2006)年4月岡山シーガルズ企画部長就任。平成21(2009)年6月岡山シーガルズの運営会社、株式会社ウォーク取締役。平成24(2012)年7月〜GM(ゼネラルマネージャー)に就任。一般社団法人日本バレーボールリーグ機構理事。

吉倉秀和氏 プロフィール

1983年大阪府出身、びわこ成蹊スポーツ大学助教。平成21(2009)年早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修了。平成19(2007)年より日本トップリーグ連携機構サポートスタッフとして従事。スポーツマネジメントを専門とし、現在は、当機構トップレベルスポーツクラブマネジメント強化プロジェクトプロジェクトメンバーも務める。

岡山湯郷Belle 公式サイト

岡山シーガルズ 公式サイト