日本フットサルリーグ

2013-12-4

選手の熱い思いに 僕はカメラを向けた

 後半戦に突入したFリーグ。バサジィ大分やデウソン神戸が「絶対王者」名古屋オーシャンズに肉迫する熱い戦いを繰り広げています。

 フットサルには、他のスポーツには類を見ない迫力とスピード感があります。肉眼ではとても追い切れない、選手たちの激しい動きや一瞬の表情をプロのフォトグラファーは確実に捕らえます。今回ご紹介する、Fリーグオフィシャルフォトグラファー 軍記ひろしさんもその一人。カメラを手に、フットサルの魅力を伝え、フットサルという文化の発信を続けていらっしゃいます。試合前の貴重なお時間をいただき、お話を伺いました。

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Fリーグオフィシャルフォトグラファー 軍記ひろしさん

Q : Fリーグのオフィシャルフォトグラファーになられたのはいつですか?

 リーグ立ち上げの時ですから2007年です。リーグがまだ何も固まっていない状態だったので、今がチャンスだと思い飛び込みました。あの時に動けたのは大きいです。

 フットサルに完全にはまったのは、2004年フットサルワールドカップで世界のトップを見てからです。これはライフワークにしていきたい、そのためにどうするか、と考えました。フットサルをより知る為に翌年にはヨーロッパ選手権にも行きました。そしてフットサルの専門誌と契約し、撮るものはすべてフットサルに変えていきました。その頃からフットサルコートも増え始めましたので、フットサルを一つのカルチャーとして押し上げられたらいいな、と。

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Q : なぜフットサルを撮ろうと思ったんですか?

 10年以上前、自分もやっていたというのはありますが、あまりフットサルを撮る事に興味はなかったんです。当時、スーパーリーグという民間リーグをよく見る機会があって、身近な人たちがやるスポーツ、ストリートに近い匂いを感じてました。でも、選手と知り合うと、ライトな感じでやっているのかと思ったら、真剣に取り組んでいる人たちがいました。彼らの熱い思いを聞くようになって、撮ってみようかなと思うようになりました。それまでも何度か撮る機会もありましたし。サッカーのメディアにフットサル選手(小野大輔=湘南ベルマーレ)の連載があって、その仕事をしていたので深く知るようになりました。もっと知りたい、何かできないかな、と思いました。フットサルというのは単なる競技名ではなくて、フットサル専門のメーカーがあったり、タウンで着られるファッションの面もあって、全てひっくるめてフットサルだと思っていたのでそこも押し上げれば何かできるんじゃないかな、と思いました。なので、競技も撮りますけど、メーカーのカタログや広告を作ったり、ファッション系の仕事もするのが、僕のスタイルですね。

Q : 写真の世界に進まれたきっかけは?

 きっかけは特にないんですよ。なんかいいんじゃない?って感じで漠然としていて。興味は少しあったから写真学校に行っただけで、こだわりは全然ありませんでした。

子供の頃も、スポーツは好きでしたけど、カメラには関心がなかったし。ですから、カメラを最初に意識して写したのは20歳の頃かな。

Q : 意外と遅かったんですね。でも今はプロとして活躍されているわけで、そこにはやはり何かきっかけがあったのでは?

 真剣に写真を始めるきっかけになったのは、写真学校で瀬戸正人さんという方にお会いしたことです。木村伊兵衛写真賞を受賞された写真作家です。

(※瀬戸正人ウェブサイト)

 すごい空気を持っていて、専門学校の先生とは全然違う。自己紹介も特にないのにそのすごさが伝わってきました。話をするようになって、写真を見るようになって、撮るならこういう距離感で撮りたいと思うようになったんです。本質を見る事の格好良さを学んだ気がします。弟子入りしたわけではないですけど、色々面倒みてもらいました。そのスタンスがまたいいんですよ。自由な感じでありながら、語らずともわかるという感じで。

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Q : そして学校卒業後、プロを目指したわけですね。

 そうですね。学校の先生などのおかげで最初から多少なりとも仕事はありました。助手もしたし、雑誌やポスターの仕事をしたりして、人脈を広げました。でもその頃はまだ定まっていなくて、日々、これでいいのかという気持ちはありました。ただもう夢中で何かを掴まなくちゃと思っていました。その中でフットサルに出会ったわけです。最初は遊びっぽく撮ったこともないし、フットサル雑誌を作っている人が近くにいたけれど、その頃は見るだけでした。まだ自分の中で火がついていなかったんですね。でもリーグや代表戦で戦っている選手や関係者の意気込みや夢を聞かされて、その一生懸命さに惹かれて行きました。早いうちにワールドカップに行っちゃったというのが大きいですね。選手もワールドカップに賭ける気持ちが強かったので、それなら仕事にしてしまおうか、と。まだFリーグができる前のことです。

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Q : そして今フットサルを撮っていらっしゃるわけですが、とっておきの撮影秘話のようなものはありますか?

 ちょっと悲惨な話はありますよ(笑) 昨年のタイのワールドカップでのことです。日本は敗戦してすでに帰国していたんですが、取材は続けていました。そしてブラジル対スペインの決勝戦を撮っていたんです。ブラジルのファルカンという選手をどうしても撮りたかったんですよ。僕がフットサルを真剣に撮るきっかけになった選手なので、感情移入をかなりしていましたし、それまでにも何度も撮っていましたがこんなにワクワクする選手はいません。ファルカンは日本戦で怪我をしていて本調子ではなく、一試合戦えるだけの状態ではなかったので、決勝戦は後半になって出てきたんです。「よし!出てきた!」と思いましたが、そのファーストシュートが僕の左目を直撃したんですね。

Q : 顔面、ですか?その時軍記さんはどこで撮っていらしたんですか?

 FIFAは撮影場所を指定するんですが、それがゴールのすぐ脇なんですよ。コーナー付近はダメなんです。経験上ほんとに危険な場所だと分かっていたので、FIFAには「これじゃ怪我人が絶対に出るぞ」とみんな言っていたんですが、いやなら撮るな、よければいいだろう、という感じで。で、その怪我人が自分になってしまって。

 ドリブルして打つのならモーションがあるのでこちらも準備できるんですが、その時は、ファルカンが相手にぶつけて落ちたのを打ったらミスキックになった。で、カーブがかかったボールがゴールをそれて僕の左目を直撃。眼鏡は木っ端みじん。これまでもボールが何度も当たったことはあって、眼鏡が飛んだりしていたんですが、世界最強の選手のシュートはハンパじゃなかったですよ。自分に当たったことすらわからなかった。その瞬間に撮った写真がこれです。

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 気がついたら、観客がティッシュやらタオルやらを投げ入れている。隣のカメラマンが「やばいぞ」みたいな顔をしている。よく見たら、ピッチに眼鏡のかけらが散乱している。ボールが眼鏡に当たって割れたものがまぶたの上に当たって流血してたんですね。割れた眼鏡は拾わないと保険がおりないので拾いましたけど(笑)

<後編に続く>

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軍記ひろしさんの写真に見るFリーグヒストリー
軍記さんご自身にセレクトしていただいた写真を掲載しました。ぜひご覧下さい!

軍記ひろしさん プロフィール

1978年富山県生まれ。写真家。

18歳で上京し日本写真学園に入学。

卒業後、フリーの写真家として活動をはじめる。友人に誘われ観戦した競技フットサルに魅了され、以降フットサルシーンの最前線で撮影を続けている。競技フットサルの頂点に位置するFリーグの創設に合わせ自身が代表を務めるfutsalgraphicを設立。2008年からFリーグのオフィシャルカメラマンを務めている。また、スポーツ写真だけでなくサッカー・フットサルブランドのカタログ・広告写真の撮影、フットボールカルチャーマガジン『GREEN』の制作にも関わるなど、幅広く活動している。

futsalgraphic 公式サイト

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