サッカーJリーグ

2015-3-9

平成26年度日本トップリーグ連携機構 GM研修会 講演録 および ワークショップ 講義録 (3)

 2014年5月16日(金)〜18日(日)、味の素ナショナルトレーニングセンター(東京都北区)で行われた平成26年度 GM研修会の講演録、及びワークショップの講義録を掲載致します。この研修会は、クラブ型スポーツチーム及び企業スポーツの活性化に重要な役割を果たす各リーグのGM(ゼネラルマネジャー)、マネジメント担当者、各リーグ運営者などを対象にしたもので、当機構が平成20年度から行ってきた、マネジメント強化のためのコンサルティング・研究事業を具体的方策として各チームにフィードバックすることを目的に行われたものです。講義やグループワーク、情報交換や交流を通じて課題を共有し、解決策を研究・討議しました。

【ワークショップ】「企業経営戦略とスポーツ事業」

川崎市 市民・子ども局市民スポーツ室 スポーツ指導支援専門員

金井 由明(かない・よしあき) 氏

kanai

ファシリテーター:

筑波大学大学院人間総合科学研究科スポーツ健康システム・マネジメント専攻

准教授 高橋 義雄(たかはし・よしお)氏

■高橋

 午前中、私はクラブ型を担当しておりましたが、クラブ型の中でもクラブが生き延びるためには、地方自治体との関係構築が大事だという話が出たと思います。日本の場合、工場敷地内で、スタジアムや体育館を持っている企業は別ですが、日本全国で、スポーツ関連施設をどこが所有しているのかというデータを文部科学省が発表しています。同省の発表によりますと2/3が大学を含めた学校(小、中、高、大)の体育施設になります。1/4が公共の体育施設です。この2つを足しますと1/12で、わずか1/12が民間のスポーツ施設だという文科省データがあります。

 ということでスポーツ大会やスポーツイベントをやろうとすると、どうしても税金、公的資金によって建てられたスポーツ空間を利用せざるをえないというのが日本の環境です。欧米のように、自分たちのクラブで私有地を持っているような状況にない日本においては、自治体、行政と連携し、うまくスポーツクラブ経営をシンクロさせていくということが、重要なポイントになります。

 今日は、地方行政とスポーツクラブの連携というテーマで、川崎市のお二方に来ていただいています。後ほど説明がありますが、日本のスポーツ政策自体が大転換を迎えているところです。2011年のスポーツ基本法ができて以降、国の計画を基にして日本全国の地方自治体が、「地方スポーツ推進計画」というものを作っています。ここ3年ぐらい、皆様が拠点とされる自治体でもバタバタと作っているはずで、その推進計画を見ていただきますとスポーツ基本法自体が、これまでのような健康体力増進のための”する”スポーツという発想から、「見る」「支える」など、スポーツ全体をプロモーションしていくような方向性を目指しましょう、ということになっています。日本全国の自治体の皆さんも「する」だけではなく、「見る」ための施設環境づくり、それから「支える」というのは市場も含めたクラブ、スポーツ全体を支える人々の環境づくりも進めないといけませんね、ということになっています。

 そうした流れをつかまない手はありません。ということで、今日は川崎市の事例を紹介いただきます。皆さんの拠点とする自治体にイメージを伝えられるよう、ぜひ質問も投げかけていただければと思います。時間も2時間ありますので、テーマごとに時間を区切りまして、質問を受け付けたいと思います。「ここはちょっとわからないな」と思われましたら、話の最中でもよろしいですから、途中で手を挙げていただいて、確認していただいてけっこうです。そういった形で進めていきたいと思いますので、ご発言をよろしくお願いします。

■金井

 皆さん、こんにちは。ご紹介いただきました金井と申します。私はプロフィールにも書いてあるように、37年間、中学校で保健体育の教員として勤務しておりました。教員生活37年のうち10年間は管理職でしたので、子どもと接したのは27年間ということになります。今現在は定年退職しまして、川崎市役所の中にある「市民・子ども局」というセクションの中の「市民スポーツ室」でお世話になっております。私の上司の青井課長にも来ていただきましたが、私はとにかく学校現場のことしか知らないので、範疇外の質問に対しては、青井課長から回答してもらおうと思います。まず皆様には、川崎市の事業にご理解、ご協力いただいていることに御礼申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 最初に、まずちょっとだけ自己紹介させていただきます。なぜ体育教師になったのかという話ですが、私は小学校の時、電信柱の後ろに隠れたら、姿が見えなくなるくらい華奢な体格でした。本当に体力のない小学生で、父親から「体力をつけろ」「お前は女性的だ」などと年がら年中言われてまして、その影響で、体力をつけなければいけない、男らしくならなきゃいけない、ということを常に自分に言い聞かせておりました。とにかく、できないことの多い子どもでした。鉄棒ができない、泳ぐこともとできないで。ただそれが、中学校の体育の水泳の授業で、泳げるようになったんです。自分自身、嬉しくて仕方がなくてですね。自信がついて、いろいろなことに挑戦するきっかけになりました。

 高校では柔道部に入り、毎日毎日練習していくうちに体力もつきました。もっと自分の体を鍛えられるスポーツはないかと思い、大学でアメリカンフットボールを選んだのです。高校の時に自分の体がみるみる頑丈になり、鏡を見るたびにいかつい体になってきて、「あぁ、努力すれば自分でもこういうふうになれるんだな」。そんな喜びを子供たちに教えたいという思いがあって、小学生の時から「学校の先生になりたい」という思いを抱き始めました。「体育の先生になろう」と決めた時期でしたね。

 大学では授業に出て、放課後にはフットボールという生活でした。大学4年間はアメリカンフットボール部にいたのですが、「理不尽」という言葉が一番ぴったりくる時間を過ごしていました。精神論だけの時間ですね。自分自身の経験から、授業でできない子供の気持ちがわかりました。そういう子のペースに合わせて、授業計画を作ったり、そんなふうに授業に取り組んでまいりました。

 最初、川崎について説明させていただいて、川崎市のスポーツ推進計画の概要についてお話をさせていただいて、そこで区切って質問をいただいて、実際に市行政とスポーツクラブの連携について説明をしたいと思います。

 川崎市はいい街です。川崎市は多摩川が流れておりまして、これを挟んで対岸が東京都、そして反対側が横浜となっております。東京と横浜に挟まれております。地形は、比較的平坦です。丘陵地帯もありますが、そんなに高い山があるわけではありません。

 ずっと鉄道が走っています。JR南武線で、川崎と立川を結んでおります。これが川崎市のメイン鉄道になりますが、これが魚の背骨とすると、横骨のように、電車が何本か走っております。そういう意味で通勤にも生活するにも便利な街です。羽田空港も近い。大きな工場もいくつかあったのですが、移転しまして、跡地にマンションや住宅が立って、人口が140万人と書いてあります。しかし今年の4月に出た資料ですと、5万人増えて145万人の大都市になっているようです。

 今年が市政90周年です。大正13年に川崎市は2つの町と1つの村が合併して誕生し、90年を迎えました。阪神甲子園球場が今年で90年ということで、甲子園球場と同い年です。

 海から山まであります。海の方は重工業、商業があり、ものづくりの街です。町工場があったり、それから野菜や果物、梨、王禅寺の「禅寺丸」という柿、それから中原区の花、「パンジー」が有名です。

 川崎市には行政区が7つあります。145万人を7つの行政区で割ると1つの行政区は約20万人となります。鎌倉市が17万人ですから、鎌倉市が7つあってもおつりがくるというような大きな街です。

 学校の方は、公立小学校が113校、中学校が52校、高等学校が全日制5校、定時制5校です。教育環境もかなり整っている状態といえます。

 スポーツ施設の方ですが、川崎球場と呼んでいたものは、大洋ホエールズ、ロッテ球団などがホームグラウンドとして使用していた球場です。私が子どものころ、父に川崎球場に連れていかれて、試合を見たことがあります。ジャイアンツの2軍の試合でしたが、当時、まだジャイアンツにいた「ジャイアント馬場」さんがピッチャーをしていまして、「大きいなぁ」と思った記憶があります。そんな川崎球場も今年の4月に、アメリカンフットボールを中心とした競技場に生まれ変わりました。片側のメインスタンドが完成し、今現在、片方のスタンドが工事中です。両方完成すれば4000人ぐらいの観衆が集まれるスタンドへと変わります。メインスタンドが完成したので、完成祝いで、アメフトの全日本チームとドイツチームが親善試合を行いました。

 スポーツ文化複合施設についてですが、今現在は川崎市体育館があります。非常に古い建物で、老朽化によって改築しなければならない。体育館の向かいに文化会館というホールがあるのですが、こちらも老朽化しています。この2つを合わせた施設、スポーツと文化、両方の用途で使えるような施設を作ろうと、秋ぐらいから着工し、2017年に完成予定です。国際試合ができる体育館に生まれ変わっていきます。

 それから各区に体育館、スポーツセンターがあります。幸区には幸スポーツセンターなどがあります。資料の一番上に「多摩スポーツセンター」とありますが、川崎市の中で、一番新しいスポーツセンターとして完成したもので、こちらは温水プールも備えているのがウリです。

 「とどろきアリーナ」は中原区にあります。国際試合ができるアリーナです。さらにその下に陸上競技場とありますが、サッカーJ1、川崎フロンターレのホームグラウンドにも使われています。メインスタンドが古く、観客収容数が少ないということで、今現在、3万人が収容できるスタンドに生まれ変わろうとしています。来年のシーズンには間に合うように着々と工事が進んでいます。これらが川崎市の主な施設です。

 さて本題に入ります。「川崎市スポーツ推進計画」についてです。先ほど言いましたが、私が小学生のころはグローブもない時代で、手打ち野球をやったり、土に土俵を書いて相撲を取ったり、そんな遊びをしていまして、テレビもなかなかなかった時代で、どこかの店舗に入って野球のナイター観戦をした時代でした。中学2年の時、東京オリンピックが開催されました。1964年ですけれども、そのころやっとカラーテレビが家庭に入ってきたころで、我が家にはなかったのですが、外でカラーテレビを買った家庭があって、そこにお邪魔して開会式を見た記憶があります。なんだかんだ言って、そこから50年という月日が流れたわけですが、そういう中で先ほどお話ししましたように、時代とともにスポーツも変わってきました。

 「スポーツを楽しむ」と一言で言っても、ひとりひとりの思いが違います。スポーツをすることによって汗をかく、真摯な絆を築く、健康増進する、ダイエットする・・。スポーツは人と人の交流ができ、そこに喜びがある。それからスポーツは人間の可能性を極限まで追求している。そういう姿を見ていると感動する。そういった様々な思いがあり、時代とともに意識が高まってきて変容している。そういった中で、スポーツの役割も多様化しているし、社会における重要性も大きくなってきている。市民のスポーツに対する意識の変容や多様化を受け、地方自治体も努力をしていかなければならない時代になりました。先ほど話しましたように、スポーツ基本法が施行されましたので、市もスポーツによる街づくりをあらためて見直していかなければいけないことになったのです。

 今まで、行政の中でスポーツにかかわる部署は、教育委員会の中にありました。「生涯学習部」というものでした。教育委員会には学校体育や学校にかかわる部署もあり、それらの連携もあったのですが、教育を中心としたスポーツ作りみたいになっていて、市民を対象にスポーツを展開していくには、ちょっと無理があった。そこで現在、先ほど紹介させていただいたように、市役所に部署が移り、市の「子ども局」の中に、「市民スポーツ室」という部屋を設け、そこで川崎市全体のスポーツ事業に取り組んでいこうという風に変わってきました。

 法律改正があって、皆さんの拠点とする自治体のスポーツ関連行政がどの部局によってなされているかは、ご確認いただけると思います。以前は教育部局ですから教育委員会の中にあったものが、法律改正によって市役所、県庁の首長部局に移してもよくなった。学校大綱は除くのですが、移してもいいという法律改正があって影響が出ていると思います。ぜひご確認をお願いします。

 今お話しましたように、法律が変わりまして、川崎市全体の構想になると、どんな図式で、何年位を目安にして取り組んでいくか、どういうふうなことをして市民に満足してもらえる街にしていったらいいのかという原点から、いろいろ話し合いを重ね、策定したものがこの推進計画であります。いろいろなところと連携しながら、事業を進めていかなければいけないのですが、1つの計画を立てた場合、お伺いを立てなければいけない当該部署との連携で進むのですが、もとになるのはどこ?ということなり、今、我々がいる「スポーツ室」ができました。ただスポーツ室だけで、企画立案や事業運営を行うのは無理なので、逆に今までの流れの中で作った関係機関、関係部署と連携しながら進めていく。それにはしっかりとした交流と計画がないと進められないねという話で策定されたのが、推進計画です。市民の皆さんも、川崎市スポーツ室の取り組みがわかるように、このような概要を作らせていただいてアピールしている。こちらの方で皆さんにわかりやすく取り組んでいくということが重点施策、基本理念ですね。

 スポーツで川崎をもっと楽しく。この「楽しく」をキーワードに進めております。基本方針は5つ。スポーツを身近に、楽しくできる街。スポーツを通して、仲間とふれあえる、地域での交流が楽しめる。スポーツを通して川崎の魅力、活力を楽しめる街。スポーツに挑戦する楽しみがある街。生涯にわたって、スポーツを元気に楽しめる街。こういった5つの基本方針を定め、スポーツの街、川崎にしていこう。これをもう少し噛み砕いて、事業関連という形になっていくと思いますが、こうしたことを川崎市の方で事業化して取り組んでいきましょうと。だいたいが、私たちがいるスポーツ室の方で取り組んでいますが、障害をお持ちの方のスポーツは違う部署が担当し、ビーチバレーに関しては、また違う部署でやっていくというふうに、全部網羅して、私たちが事業として取り組むこともできません。でも、もっと大きく川崎のスポーツというものを考えるのであれば、そういうところも一緒になり、個人的な思いですが「スポーツ局」みたいなものを作って動けるようになったら望ましいと思っています。私たちのグループの中は3つに分けてありまして、1つは競技を中心として取り組んでいくグループ。生涯学習、生涯スポーツという形で取り組んでいくグループ。そして私たちがいる街づくりを根幹にしてスポーツを中心にして取り組んでいるグループになります。

 例えば競技スポーツが行われているのは、陸上競技のゴールデングランプリ、市民マラソン、駅伝、多摩川を利用したカヌー教室、神奈川県の川崎、横須賀の相撲場を有効活用したものや小学生の水泳大会。市立高校には50メートルのプールがございまして、これを利用して水泳大会も行っています。全国の高校生ボーリング大会もあり、大きいボーリング場を使って実施しています。生涯スポーツは、スポーツ施設との連携ですね。活動型クラブとの連携を充実させ、市民の体力向上と取り組んでいます。私たちのグループではサッカーJリーグの川崎フロンターレとの連携もしています。2007年にアメリカンフットボールのワールドカップが川崎で開催されたのを契機に川崎市はアメリカンフットボールを活用した街づくり事業を進めています。

 それからホームタウンスポーツの推進にも取り組んでいます。「音楽の街川崎」「スポーツの街川崎」と、盛りだくさんで、いったい川崎は何を狙っているの?と感じられた方もいたのではないかと思うのですが、要するに川崎のシティーセールスです。イメージアップのためには、今ある川崎の資源を有効活用しようということ。これは前市長のお考えですが、川崎には産業があるじゃないか。自然だけじゃなくて音楽大学も2校あるし、スポーツもある。企業もたくさんあって、企業が持っているスポーツクラブも資源として活かそうと。文化芸術の街、音楽の街というふうに、川崎のそれぞれの資源を有効活用して、活力のある街にしていくという戦略の一つが「スポーツの街」であると。「スポーツは資源である」。川崎市は市内のチームを応援します、PRします、だからチームの方は、川崎のイメージアップに協力してくださいという考え方です。

 例えば選手が小学校に行って、子供たちとふれあう教室を開催したり、試合に市民を招待したり、市民との交流イベントを考えていただいたり、とチームに川崎市をイメージアップしていただくわけです。ウィンウィンの関係ですね。川崎市はこれに対して予算化しますよということで、生まれてきたのがオレンジ色の小さい資料ですが、「かわさきスポーツパートナー」を制定したわけです。女子バレーボールの「NECレッドロケッツ」、野球は「東芝ブレイブアレウス」、アメリカンフットボールは「富士通フロンティアーズ」、サッカーは「川崎フロンターレ」バスケットボールで「東芝ブレイブサンダース神奈川」と「富士通レッドウェーブ」など、バレー、バスケ、サッカー、野球と、スポーツ支援を有効活用しようということで、パートナー制を設定しました。

 要綱は、川崎スポーツパートナー設置要綱ということで、目的は、川崎市をホームタウンとして活躍するトップチームを「川崎スポーツパートナー」と設定します。これらはチームなので、一分野で著しい功績を築いた川崎にゆかりのある個人に対しては、「川崎トップアスリート」として認めようと。トランポリン全国優勝の中田大輔選手が、パートナー制度の中のチームと個人という形で認められました。

以前は「川崎ホームタウンスポーツ推進パートナー」などと言っていたのですが、名称と中身を変え、個人よりも市のパートナーとして設定しようと。パートナー対象の要件は、川崎にホームタウンをお持ちになること、プロスポーツのチーム、または当該競技で優秀な成績を収め、今後の活躍が期待できる。川崎の魅力として発信できるパートナーという形です。

■高橋

 「シティーセールス」という言葉を覚えておくといいと思います。キーワードとして使えると思います。川崎を売り込んでいくということですね。

 市内の人であれば住み続けたい。不動産に居続けたい。川崎市という空間にいたいという魅力ですね。そういうものがないと、市民は他の土地がよければ、引っ越ししてしまいますし、企業も他へ行ってしまいます。そういった価値を高めることと同時に、その情報が外に流れることによって、川崎市に住みたいという人が多く出てくる。立地したいという人が出てくるということが目的ですね。結果的にそれは不動産価値をあげることにもなり、エリアマネジメントにつながるのですが。多くの人が川崎の土地を買ってくれれば、土地の値段が上がっていくと・・。

 そういうことをやらないと、過疎になってしまうということが、全国の例にありますので。町の力を発信して、その土地に住みたい、居続けたい人をいかに増やすか、そことスポーツをどう連携させるかということですが。街のイメージアップの一つにスポーツが選ばれたということがポイントです。スポーツは当たり前のように、簡単にイメージアップにつながるという認識があったということです。

 金井先生からもお話があったように、歴代市長は、市の内部から上がってくる人がほとんどだった。しかし新しく外部から市長が入ってきたことで、「川崎って色々資源があるね、これを活かさない手はないね」ということになった。大企業もありますし、スポーツもあるということで、焦点を充てたのが6チームでした。6チームを活用してやっていこうと、トップセールスして形になった。

 どんどんご質問してください。ちなみにこの要綱というのもポイントなのですが。市の職員、行政は、自由勝手にできるわけではなくて、さまざまな要綱を基にして、その範囲において活動しているというのが、公務員の方の仕事ぶりなわけです。この要綱というのは、誰が発案してどのように作られたのか。スポーツ室もかかわったのだとしたら、皆さんにもヒントがあるのではないでしょうか。

■青井

 市町村ってとっつきにくいよねというお話があります。我々からすると、新事業ということは予算をつけるということになり、財政サイドは、新しい事業をやるなら、中でやりくりしてやりなさいと。年々、予算が少なくなる中で、新しいものを受けるというのはなかなか厳しいのが実情です。そのような環境下でも、トップセールスで、筋道がつけられたものについては、財政サイドもお金(予算)をつけます。例えば6チームというのは大企業で、スポーツ以外でも、川崎市といろいろなつながりを持っている。仕事以外のトップとの付き合いの中で、話が進みやすいと言う気はします。

Q:パートナー対象の中に、「支援」とありますが、どのような支援がありますか?

■青井

 さきほど、施設の中で「とどろきアリーナ」というものがありました。東芝のバスケット、富士通の女子バスケット、NECの女子バレー、公式リーグをやる時にはそういう減免措置を行っています。それとフロンターレにつきましては、今、陸上競技場が改修中ということで、客席が手狭になっているということもありますので、減免措置をしています。それとPRということですが、今、大久保嘉人選手がサッカー・ワールドカップに出ていますが、これも急きょ、代表ということになりましたが、市役所の玄関前に、等身大のパネルを設置し、来庁した市民に応援メッセージを書いてもらいました。それと東芝が都市対抗に出れば、垂れ幕、優勝すれば優勝報告会という形で支援をさせていただいています。あとフロンターレは特別で後援会があり、その補助もしています。

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■金井

 さて、「支える」という部分ですが、先ほどのスポーツパートナーと設置要綱の中に「広報」がありました。川崎市の広報で支援するというものです。具体的に何をやっているのかといいますと、このようなポスターを作り、それぞれの街の広報掲示板に貼っていただいたり、電車の中の広告のような形でアピールしています。このポスターの印刷会社は、入札をかけて業者さんにお願いしています。去年の話ですが、栃木ブレックスというバスケットボールのチームは、印刷からデザインまで、全部クラブから発注を受け、全部クラブで、パートナーの印刷業者、パートナーのデザイン会社に予算をつぎ込むというようなことをやっているそうです。そうすると、印刷会社やデザイナーもクラブに入りこんでいますので、調整が可能になると。おそらくこういうポスターを作ってくださいという話は、市から皆さんにあると思います。また、バッグを作っていろいろなところにお渡ししてアピールしたり。手ぬぐいも作りました「川崎市ホームタウンスポーツ推進タオル」とありますが3年ぐらい前ですね。

■高橋

 どうやって配るのですか?たぶん、一緒に配る戦略を一緒に考えられるといいかと思います。市役所に積んであっても仕方ないので。配り方によって、戦略が・・。私は筑波大に勤めていますけど、2、3月になると、予算の消化で作成するグッズ類などはバンバン作るのですが、結局山積みになっていたりする。そういうふうにならないように、組んでやると。実は最後の予算消化のあたりは、いろいろな予算がありますよね。

■金井

 集合写真をパウチして、学校に配りました。外に貼っていただいて雨にあたってもいいように。学校の掲示板に貼ってもらうためにパウチしました。市立の小中ですね。あとは東芝ブレイブサンダース神奈川が天皇杯で優勝しましたので、その写真を作って、とどろきアリーナで掲示しています。全部のスポーツセンターに配ればいいのでしょうが、なかなかスペースがないということで、一番大きなとどろきアリーナにしました。こうして市民の方に広報しております。

■高橋

 市とか町内会の掲示板にも貼ってあるのですか?

■金井

 例えば、アメリカンフットボールのXリーグが始まったのですが、そのポスターも掲示板に貼っています。

■高橋

 川崎市は、市バスには掲示していますか?

■金井

 Xリーグの試合については電車の中に掲示していますね。あとは、フロンターレの関係ですが、川崎から立川に行く南武線という電車があります。武蔵小杉、武蔵中原の駅には、発車ベルはフロンターレの応援曲です。東横線の新丸子駅もフロンターレの応援曲が流れています。

■高橋

 クラブ側が一銭も払わず、市側が調整されたということですか?

■金井

 お金の方は、クラブ側の後援会の方で、いくらか払っていると聞いています。

■高橋義雄

駅のものは、発車ベル代わりというやつですね。

■金井

 それでは、スポーツパートナーがどのような活動をしているのか説明していきたいと思います。今から説明するのは、小学校です。それぞれの小学校に、「ふれあい教室」がありますというご案内を差し上げ、この日とこの日とこの日は、選手が派遣できますという設定がされます。学校の行事等と照らし合わせて調整し、ふれあい教室を実施します。

 フロンターレの教室については、選手が直接出向くのではなく、コーチが技術指導します。たとえば小学校の体育の授業で、サッカーの時間を7時間なら7時間という計画で立てて、最初の段階で来ていただき、パスの仕方やトラップの仕方などを小学生に教えます。

フロンターレの場合は1年間、試合のないときに対応いただいているのですが、サッカーというと冬のスポーツというイメージがあるみたいで、冬に集中するんですね。ですので、こうして長そでのシャツを着て、小学生が練習しているという光景になるのです。

■高橋

 市として体育の授業をやっているので、体育の教員免許を持っていないと、といった制約はありますか。

■金井

 そこが課題のところで、今後、思慮しないといけないかなと。一応、「ゲストティーチャー」ということでお招きして指導していただいています。

■高橋

 通常の先生が持っている授業ですね?

■金井

 そうです。ですので、必ず担任の先生もついています。

 次は東芝ブレイブサンダース。これは1クラスを対象にして、授業を展開しています。学校によっては2クラス一緒にやってほしいという希望がありますが、学校の希望に応じての展開にしています。子どもたちにとって、トップチームの選手が学校に来てくれ、自分たちと触れ合うというのは、本当に夢の中にいるような感じのようです。雲の上の人が目の前にいるわけですから。授業が終わった後も、廊下で肩車してもらったり、ぶら下がったり、すごい選手なのだという認識は、子供たちはあまりないと思うのですが。バスケットの選手は背が高いですし、あこがれるみたいですね。終わった後必ず「何か質問ありますか」と問いかけるのですが、「どうしてそんなに大きくなるのですか」と子供たちが必ず聞くんですね。そこでほとんどの選手が「牛乳を飲みなさい」と言います。すかさず担任の先生が「あなたも牛乳をちゃんと飲みなさい」と言う。それで牛乳が飲めるようになった子供もいる。

 続いて女子のバスケットボール。富士通レッドウェーブ。ふれあい教室は選手の方がどんどん主導権を握って、指導に入っていきます。ですので、私たちが何かをするということは、まずないですね。レッドウェーブは、ヘッドコーチ自ら来ていただいて、指導していただいています。ここは2クラスか3クラス合同だと思います。ヘッドコーチもいますね。学校側からの要望は、せっかくトップチームの選手が来るのなら、触れ合うだけでなく、素晴らしい技術を見せてほしいと。それで、スリーポイントシュートをしてもらっています。ダンクシュートをやってほしいといった要望もあります。

 次はバレーボールで、NECレッドロケッツです。昨年引退した杉山祥子選手に来ていただきました。

 続いてアメリカンフットボールです。アメリカンフットボールは教科としてありませんので、あくまで「ゲストティーチャー」という形で入ります。防具をつけてのフットボールもできませんから、アメフトというのはこういうものだよと説明して、あとはフラッグフットボールが中心です。川崎で唯一、校庭が天然芝の学校がありまして、そこで夏に体験教室というのがあるのですが、アメフトの指導を受けています。余計なことかもしれませんが、天然芝は養生期間があるので、その期間は子供たちがグラウンドに入れません。そこが少し可哀想なんですね。プールに蓋をして、その上に人工芝を敷き、グラウンド代わりに使ったりしています。

これがスポーツパートナーによるスポーツ教室です。

 次は部活動をしている中学生に対する「クリニック」です。一つはサッカーがあります。こちらも学校から「フロンターレのクリニックを受けたい」という希望を出していただいて、フロンターレに連絡が行き、調整をして部活動の中で指導をしていただくという形です。

 こちらは冷蔵庫でペットボトルに入れた水を凍らせ、グラウンドに置いて、いつでも水分補給ができるように工夫していた学校です。フロンターレのコーチが来て、技術指導しているところです。

 もう一つ。こうやって一校一校対応することもできるのですが、フロンターレ側から、「教えることは同じなので、地区ごとにサッカー部のコたちが1つの学校に集まって、クリニックできないか」という提案がありました。それでやってみようということになりました。7-8校が1つの学校に集まり、クリニックを実施しました。そうすると、ゴールキーパーはゴールキーパー専門のコーチがいますから、まとめて指導ができたり、他のポジションもかなり効率よく指導が進んでいました。

 始めは大きなグラウンドを持っている学校で行っていたのですが、だんだんそれが各区に広がっていき、それぞれの区で、こういう形で何校かに集まって。そんな流れで広がっています。フロンターレの選手で川崎出身の選手がいない。やはり川崎から生まれたフロンターレで活躍している選手を育てていきたい。そういう意味で、フロンターレに入ってくれるような選手が出るといいねという目標もあります。

 ここまでがスポーツパートナーのふれあい教室と、クリニックという形で、活動内容をご紹介しました。いったんここで切らせていただいて、ご質問を受けたいと思います。

■高橋

 チーム側に、この授業のフィーは出ていますか?

■金井

 サッカーのフロンターレとアメフトは、6つの社会人チームの中でも特別で、フロンターレの小学生への派遣については実費程度、1回に2万円弱ぐらいのフォローはしています。フラッグフットボールも、113校の小学校があり、ほとんどの学校で実施していますが、こちらの講師派遣ということで、フラッグフットボールのご経験のある方に、1回5000円を支払っています。それ以外のチームにつきましては当初、5000円程度は払っていたようですが、そのうち「いらないよ」という企業も出てきまして、今は交通費も含めて、全く払っていません。

■高橋

 行政の方が(立場が)強いということでしょうか?

■金井

 何年も運営しているので、チーム事情も聞きながら、小学校のセッティングをしているといた感じですね。

Q:指導だけという形ですね。例えばスポンサーをつけて、学校内でその会社の製品を食べさせたいと言ったらどうなりますか?

■金井

 それはやってないですね。

Q:例えば、食育だと言ってもだめですか?

■金井

 青少年の健全育成が目的なのと、子供たちが選手を見てスポーツに取り組む、選手を見て、その選手を応援していく、そうすると親がついてきてチームや選手の収入に結び付くといった循環を作れたらいいなというのが、ふれあい教室の趣旨だと思っています。スポーツパートナーとは違いますが、川崎の大きな事業として、アメフトを活用した街づくりに取り組んでいます。アメフトを普及させたいのですが、小学生から防具をつけてアメフトをやるのはなかなか厳しい状況があるので、まずはフラッグフットボールを体験させて、それでアメフトを好きになってもらって、今の話のように、アメフトを観に行ってもらうなりプレーしてもらうことにつなげていきたいと思っています。フラッグフットボールの巡回指導という授業も立ち上げて取り組んでいます。これはもう2007年のワールドカップ位からはじまっているもので、7-8年続いています。

 今、川崎市の小学校113校中、100校ぐらいから希望していただいて、私と同じように現役を退職し、アメフトに携わっていた人たちがコーチという形で学校に行き、教えています。学年に応じて、攻撃を2人にして守りを1人にするとか、3人で攻めて2人で守るとか、高学年になったら、人数をどんどん増やしていくとか、そんな風に工夫してやっています。最近は、この授業がかなり定着してきました。一番最初に映像を見ていただきましたが、川崎市には藤子F不二雄ミュージアムがありますが、そこが協力するよと言ってくださいました。自分たちの名前も使っていいし、協力するよと。ということで川崎市のフラッグフットボール交流会を「藤子F不二雄ミュージアムカップ」とし、参加した子供たちに記念品としてシールも作って渡しています。そういう大会も昨年から始まっています。

 それからもう一つ、日本アメリカンフットボール協会の方から、アメリカで使っていたアメフトの防具をお借りすることができました。いただいたようなものなのですが。ヘルメットをはじめとする防具を活用してほしいという話がありました。高津中学校で地域のふれあいフェスティバルというイベントがありまして、そこでアメリカンフットボールという講座を作っていただいて、この防具を活用して、子供たちが楽しんでいるという状況です。

 「支える」「育てる」というところには、いろいろな課題がありますが、これはまた「する」というところでお話をさせていただきたいのですが。このように進めてくる中でのパートナーの試合を休日に観ていただきたいと思っています。真ん中の「見る」というところになりますが。それぞれのパートナーがふれあい教室に行ったとき、自分たちの顔写真が載ったチラシを配って、試合日程のチラシも配って、グッズも配り、リーグ戦も始まるので、ホームグラウンドの「とどろきアリーナ」にぜひ遊びに来てください、という呼びかけをします。それと同時に、市役所の方でも市政だよりに、ご案内を差し上げて市民招待を実施します、往復はがきで申し込んでいただいて、数が多ければ抽選をして返信する。観るという形での協力もさせていただいています。

 もう一つ、アメフト専用といっていい競技場も新しく生まれるので、アメフトと言えば川崎、川崎と言えばアメフトというような街づくりに取り組んでいます。川崎には、Xリーグの富士通フロンティアーズ、アサヒビールシルバースター、それから大学も法政大学と専修大学のアメフト部があるので、これらのチームを活用して街づくりをしていこうとことで、ぜひ川崎球場の方に足を運んでいただきたいと思います。そのために市政だよりでご案内し、チラシも配っています。アメフトは難しくてよくわかんないよという方が大勢いらっしゃるので、「ゼロから楽しむアメフト観戦講座」を開設しました。市民の方に来ていただいて、アメフトってこういう試合なんですよ。こういうルールで試合をやっているんですよと、細かく説明させてただいて、実際にゲームを観ましょうということで、パールボールの決勝戦にご招待したり、それから冬のXリーグのチャンピオンを決めるゲームにご招待したりという取り組みもしています。この講座は、宮前区、次は麻生区、今日の昼間は川崎区の方でも開きました。今回の場合は、今日、実際に富士通フロンティアーズとシルバースターズの試合を観戦し、次回の講座でゲーム観戦後の感想等報告し、質問に答えるという場にしています。

 ここでの課題は、チケットをばら撒いたりするのではなく、チケットを買って集まってくる人がいるという文化を作っていきたいと考えているのです。日本代表とドイツの試合も親善試合で、川崎球場のこけら落としだったのですが、本当ならば招待した方がいいのかもしれません。しかし協会の方で、「やはりそういう対応はやめよう」ということになり、チケットのばら撒きはやめました。チケットを購入し観戦していただきましたが、ほぼ満席になりました。やればできるじゃないかと思いましたし、こういったことが今後の課題でもあります。こういう文化を作りたいです。

ではここで「見る」についての質問を受け付けます。

Q:女子バスケ、Wリーグでお世話になっている五十嵐です。とどろきアリーナを開設していただき、何度か試合もさせていただきました。バレーもバスケも会場使用の優先をいただいているようですが、優先の度合いを、シーズンの間に2試合から4試合。1か月の間に試合がだいたい1試合、この頻度をもっと上げたいなとは思っているのですが、調整が難しいと聞きます。試合の頻度を上げて、目白押しになってしまうことに抵抗があるのでしょうか?

■青井

 優先の関係なのですが、基本的には役所は公平公正というものがありますので、市民の方に同じように使っていただきたいという前提でありながら、その中の優先すべき事項というところで、月に何回かは、チームのために先取りしましょうよというものがあります。日程調整会議の中で、パートナーが優先されているところだと思うのですが、私は直接かかわっていなくてわからないのですが、そういう要望があるということは隣の企画課に伝えます。

■高橋

 これはトップチームに対するえこひいきみたいな形になるわけですね。そうすると、とどろきアリーナのようなキャパと設備を備えたものを一般の方々が使用する意味合いと、見せるために、場合によっては4000-5000人のお客さんを入れることのできる体育館が必要になる。この特性を考えると、ちょっともったいない。ほかにも市民や区民の方々が使える場所はありますし、川崎市の方にも駅近くの施設が一つあります。

 もう一つは、例えばバレーボールがとどろきアリーナで試合をします。国際大会だったと思いますが、仮設の席を作ります。いろいろな優遇もあったと思うのですが、それだけで200-300万円の金がその日のうちに無くなってしまう。そんなことが続くと、業者さん以外は誰も得することがなくて、1か月の間に1000万円近いお金が使われたこともあります。この辺を減免していただいて、工夫できる部分はあるのでしょうか。

■青井

 本来だったら、壁からガガガーっと増設の観客席が出てくるようなものがあればいいのですが。平日になると市民の方が使う形になります。そこでまた原状回復ということで、そういうふうに観客席を回収せざるを得ないのかなと。NECの方からも「あれ、すっごく金かかるんだよね」と言われているのですが、なかなか現状では厳しいと思っています。

Q:機会があれば、意見交換の場でも作っていただきたいと思っておりますが。

■金井

 我々も、パートナーとは頻繁にお話しさせていただいておりますし、そういうお話をいただければ、参加させていただきます。最近、大田区総合体育館はロールバックチェアがあるようですし、今後の改修、建設の際のアイデアにしたいですね。費用との兼ね合いもありますが。

■高橋

 チケットは行政の方で買っているのですか。それであれば、クラブは助かると思いますが。

■金井

 券はいただいております。

■高橋

 クラブとしては、タダで券を渡しているのは、キツイと思いますね。アメフトは、協会に興行権があるので、協会が提供しているのですよね。

■高橋

 協会がチケットを売ればいいんですよね。で、協会がクラブにバックしてくれればいい。ところで観戦のための講座は人気あるのですか?

■金井

 毎回、20-30人くらいの参加があります。

■高橋

 これも講師代を払って、クラブ側に来ていただいている?

■金井

 現在、富士通フロンティア―ズさんに来ていただいていまして、謝礼は出しています。

■高橋

 バスケットボールやバレーボールにはないのですか?

■金井

 アメフトを活用した街づくり事業ですので。

■高橋

 他のスポーツには機会がないのですね?

■金井

 バレーボールやバスケットボールの試合観戦方法の講座があってもいいかなと思いましたが。

 それでは最後に「する」ということになります。私は学校にいたものですから、こんなこと書かせてもらったのですが。文部省の学習指導要綱が変わりました。変わったのですが、前回の指導要領にもある「生きる力」は同じ。これは要するに、マニュアルがないと動けない、指示がないと動けない、そういう子供たちが非常に多くなってきている中で、それじゃダメだとだろうと。自分で考えて自分で判断して、自分で行動できる、そういうこどもを作っていきましょうということです。

 生きる力、世の中をひっくり返すぐらいのバイタリティーがある子どもを育てる。それぐらいのものを作っていきたいと。それを発見させるために、学力をつけさせましょうと。学力の3要素というのは、しっかりと基礎、基本を子供たちに定着させる。例えば25メートル泳げるようにするとあるのだったら、全員が25メートル泳げるようになることが習得だろうと。先生方、躊躇しないでしっかり教えてくださいと言うようなことが今回の体系です。習得した基礎、基本的なものをいかに使用するか表現するかですね。自分で使っていける力。それを支えているのは意欲だということで、「習得」「活用」「意欲」というのは学力の3要素と言われています。それに伴って、今回言われているのは、言語活動の充実ということです。要するに言葉の力ですね。自分の考えていることをしっかりと喋れるようにしましょうね。文章で書けるようにしましょうね。これはコミュニケーション能力ですよねということで言語活動の充実が謳われています。

 そういうことで、指導要領が平成23、24、25年と小中高で新しく動き始めていると。そのような中で子供たちが育っている状況です。体育の方も体力の低下が叫ばれているので、授業時数が増えました。だいたい週に3回、体育の授業があります。学年によっては2回のところもありますが。極端にいうと、体育の授業でしか体を動かさないというこどもたちがいます。小学校は授業の中の一環としてクラブ活動がありますが、運動クラブも文化部もありまして、そこで運動クラブを選ばなければ運動にかかわらない。中学校の部活動も、運動部に入らなければ体育の授業でしか体を動かさない。このような現状です。

 学校の先生が、いかに体育の授業で汗びっしょりかかすかというところも必要になってくるし、そういう授業を展開しなければいけないと。それで、学校でそれしかやらないのだったら、地域で子供たちの受け皿をしっかり作って、運動する場面を作っていかなければならないなと。私たちが子供のころは、原っぱがあって、学校から帰るといろいろな遊びができたのですが、今は家に帰っても、遊ぶ場所がない。子供たちはいったい何しているんだというくらい、家の中で過ごしていて、地域の子供の少年団とか、スイミングスクールやスポーツクラブみたいなところに通っている。そこにはかなりのお金もかかるというので、地域として子供たちを引き入れていくには総合型スポーツクラブが必要になってくるだろうなと思うし、実際にそういったスポーツクラブで成功している地域もあります。運営というより、支援しているんですね。

 私が勤務していた高津中学校をクラブハウスにして、総合型スポーツクラブが運営されています。こちらの方は、当初は隣の小学校にいたPTAのOBたちです。少年野球をやっているお父さんたちが勝手にクラブハウスを作っちゃったんですね。ブロックで簡単な物置みたいなものを作っちゃった。そうしたら役員会で「何をやっているんだ」と怒られちゃいましてね。じゃぁ、そんなに公共のハウスが必要で、子供たちの面倒をみてくださるのなら、どこかいいところないのかということで、高津中学校に教育委員会が来て「ここいい部屋あるじゃないか」ということで、木工金工室がクラブハウスになりました。どういう部屋かというと、木工金工室という部屋がありまして、工作室と合わせて2つもいらないということです。1つが空き教室なので、高津総合型スポーツクラブの事務局として使用しています。平成18年に立ち上がったスポーツクラブですが、当初の種目は、地域の方々が指導できるような種目しかありませんでした。

 国が平成7年から進めている文科省の総合型地域スポーツクラブ事業があるのですが、文科省からも評価を受けての紹介だと思いますが、区も子供の運動不足を実感していまして、中2の女子は、体育時間以外に30分体を動かしているこことがほとんどいない。身体を本当に動かしていないという事実があります。体育の運動能力テストで「どれだけ動いていますか」という質問を毎年聞いているのですが、中2女子の運動不足は顕著ですね。そういったことも文科省の課題になっています。

 高津総合型スポーツクラブ「SELF」の活動。SELFというのは「スポーツ」「エンジョイ」「ライフ」「フレンドリー」が由来です。今話しましたように、自分のスポーツクラブからオリンピック選手を作るというようなスポーツクラブではなく、地域コミュニティー、皆で楽しめるスポーツクラブにしようというのが、SELFの根底にあります。高津区の人口があり、この地域の高津中学校で、SELFが活動していますということです。2006年の2月26日に設立し、高津中学校内にクラブハウスができた。会費が非常に安く、一般が1000円で、子供たちは500円。それでいていろいろな種目があります。カレンダーに、今日はバドミントン、今日はフラッグフットボールという風に種目が記してある。毎日、いろいろな種目を活動しても500円。1種目だけでも500円。最初は種目数がこんなになかったのですが、何年か経っているうちに28種目、43教室まで発展してきました。

 政府の取り組みの目玉と言ってもいいスポーツクラブですので、スポーツはもちろんいろいろな項目がありますが、文化的な種目も行ってきました。書道教室、英会話教室とか。あといろいろな団体との連携、それから福島だったかな、土地を借りて田植えをしたり稲を作ったりしました。政府の事業の中で、「施設の指定管理受託から学校業務」というのがあります。学校に用務員さんがいますよね。その業務をSELFがやっている。高津中学校には用務員さんがいないのです。で、その関連業務をSELFで請け負って、地域の人たちが学校の中にいて、用務員さんの仕事をしている。市の方からお金をもらって、働いている人たちに支払っている。そういうことをSELFでやっています。

 講座はサッカー教室、野球教室があり、フラッグフットボールがあり、フラダンスとウクレレ、田植え、ハイキング、水泳教室もある。地域、神奈川県のスポーツクラブと総合型スポーツクラブの連携もしている。地域のふれあい運動会にも参加しています。文科省と提携し、文科省の事業を請け負って、トップアスリートによる指導も行っている。高津スポーツセンターと多摩スポーツセンター、こちらの方を高津SELFが、指定管理者という形で請け負っています。先ほど言ったように、用務員さんの仕事もしています。これはSELFの予算ですが、年会費収入が1300万円ですね、助成金、これはTOTOの方から入って、指定管理者として、市から2憶5000万円ぐらい入って、約2憶3000万円を年間で支出しています。そんな状況のスポーツクラブです。

 ミッションの方ですが、学校が資源だと考えています。授業をやっていない時の学校って空いているじゃないですか。じゃぁ、それを市民に提供し、有効に使おうよというスタンスでした。高津中学校の場合は、例えば武道場、柔道、剣道をやるところですが、そこは柔道、剣道の授業がないときは使わない。ないときは昼間から使える。そういうところもSELFが調整してヨガとか体操などで使わせてもらっている。昼間から夜まで空き教室をうまく使って運営している。夜間照明もいくつか付けてもらっています。というような素晴らしいスポーツクラブが、私たちの街にあるということで紹介させてもらいました。ありがとうございます。

Q:学校の空いている時間を使うということに関しては、トップの判断があって、いろいろ乗り越えなければハードルがあると思うのですが?

■金井

 私たちだけでなく、違う部署も出まして、その辺の調整をしているのですが、きちっと説明しましたね。教育委員会の方が来て、小学校なら小学校の校長会議、中学校なら中学校の校長会議で、「こういう形で、施設は市民のものですから有効に使ってもいいのではないでしょうか」というような細かい説明をし、セキュリティの問題もありますが、完全にシャットアウトできる施設じゃないから、どんどん手をあげてくださいということで学校長の判断で、会を運営しているところです。

■高橋

 ここで参考にしなきゃならないのは、川崎市にトップレベルのクラブ型がないことです。企業型はこういうことに色気を出しませんけども、皆さんがクラブ型であれば、地域の指定管理者になるとか、総合型を名乗るコトが、実は大事なのかもしれないという話です。総合型を名乗って、自分の事務局を置き、指定管理を取る。学校の施設を利用することが可能ですよという事例ですね。川崎には、企業型だから来なかったですけれど、皆さんは地元でトップチームを持ちながら、総合型スポーツクラブの顔も持つ、湘南ベルマーレのような顔を持つということが大事ですね。湘南ベルマーレさんは、トップでJもやっていますが、地域スポーツクラブとして、国からの助成を受けています。

 指定管理で市の管理も運営しています。というようなことも可能だと、ヒントにしてもらえればいいのではないかと思います。総合型だから違う話だねでなく、自分たちの手足になる場所を確保するための一つの形かなという風に思ってもらえればいい。それから学校教育、いわゆる公的な教育界が求めているのはなにかと言うニーズをつかむのは大事です。学校体育以外で、川崎フロンターレさんは、川崎市の小学生が使う計算ドリルを作っている。「えっ」と思うかも知れませんが、学習教材までフロンターレが入り込んでいます。そういったことも実は考えようということ。「自分たちはトップスポーツクラブだから、計算ドリルは関係ないよ」ではないんです。計算ドリルで入り込める、というような発想の転換がないと、使わせていただいている時間だけで、市民と一緒の挑戦なんて言っても何も変わりません。チャンスがあるということを知っていただくことが凄く大事で、仕組みと段取りを使っていくということが大事だと感じています。

 川崎市はそれを地でいっていて、紹介いただいたということだと思う。ちょっと時間が過ぎていますが、質問があれば受けたいと思います。午前中に自治体の話がありましたけれども、皆さんが拠点とする自治体さんとどんなパートナーシップが組めるかというところをご検討されるのもいいし、企業だから営業外収入になり、定款上してはいけないということはないのですが、会計調査が入るのでやらないという企業も多いのですが、ぜひCSRを名乗るのであれば、公教育に入ってくチャンスなのだと思います。

 今日は川崎市の事例で「育てる」「支える」「見る」「する」というところで、いろいろなヒントをいただけたのではないかと思います。ありがとうございました。 (了)