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2016-3-8

グループマネージメントについて

グループマネージメントについて

 ボールスポーツの競争環境に従事する以上、グループマネージメントは優先事項の1つだ。まずは一般的なグループマネージメントについて考えてみよう。選手のパフォーマンスを向上させるためには、様々な工夫が必要である。チームを導くコーチングスタッフの役割は、全てが戦術トレーニングに集約できない。今回のコラムのキーワードとなるのが、『グループマネージメント』である。私たちのスポーツ環境で実際にプレーするのは、喜怒哀楽の感情を持った選手であり人間だ。そのため指導者は人間グループを扱っている。戦術、技術、体力には見えない人間グループの形成というファクターが、グループマネージメントには大きな影響を与えている。

 人間のグループを管理して導くことは、指導者の大きな任務である。各選手の個人能力やタレントを引き出すためにも、指導者には経験や引き出しが必要となる。まず指導者は人間グループ(チーム)の扱いについて、何を意識するべきだろうか?


 ボールスポーツ環境におけるグループマネージメントのポイントを考えれば、最も大切なことが、チーム全体の参加を促すことである。チームスポーツのトレーニング環境にフォーカスしたマネージメントは、大きく3つのポイントに区分できる。

①全ての選手を可能な限り、レーニングや試合に参加させる
②試合というテストにおいて、勝利または目標達成を目指す
③ピッチ外における活動で、選手が共同参加できる環境を確保する


①全ての選手をトレーニングや試合に参加させる

 フットサル、バスケット、ハンドボールというスポーツは選手がめまぐるしく入れ替わる。ポジションの入れ替わりも激しく、交代も頻繁に発生する。また試合の流れによっては、休憩や待ちの時間なども激しく変動する。その中でベストメンバーだけでプレーすることは、体力的にも戦術的にも非効率的となる。そのため指導者は、選出したメンバー全員を参加させる努力をしたい。

 試合でメンバー全員が参加するためには、トレーニングから全員参加型のトレーニングを実践する必要がある。グループ全体の高いモチベーションを保ちやすく、また選手層の向上、トレーニングの密度の増加なども期待できる。当然ながら指導者には、高いトレーニングスキルが要求される。またチーム全体にも、練習参加に対する大きな責任を生む事になる。チーム一丸となって全員を練習や試合に参加させながら、要求、向上を追求することはグループ全体にとってプラスである。


 選手全員だけではなく、コーチングスタッフも同じく積極的にトレーニングなどに参加することが望ましい。チームの団結力や効率性を高めるためにも、スタッフ全体の役割分担からのチームプレーを活用したい。例えばトレー二ング環境でも、①フィジカルアップ、②技術・戦術アップ、③戦術トレーニング、④ビデオ分析、⑤審判担当、⑥用具整備、⑦リハビリ担当、⑧広報担当、など多数のスタッフで同時に役割分担することが、スペインのフットサルやバスケットクラブでは一般的に見られる。全てのスタッフにより、全てのメンバーと協力することが、グループマネージメントに欠かせない団結力や一体感を作りだすからだ。

②試合というテストに勝利(目標達成)することを目指す

 エリート環境において、トレーニングサイクルの目標は、試合の勝利または与えられた課題のクリアである。過酷な要求の中で、選手の全員が同じ時間ゲームに参加するのは不可能である。チームの中でも、主力選手、サポート役の選手という役割分けは発生してしまう。しかし体力的マネージメント、怪我のリスク、戦術バリエーションも含め、指導者はゲームのあらゆるタイミングで選手全員の状態と可能性を把握しながら、戦術的介入の準備を行なうことが大切だ。そのような努力をトレーニングから実践することによって、チーム全体の試合への関与率は高まることが期待できる。日常のトレーニングから全員参加型のサイクルを作り、可能な限りグループ全体で試合目標の達成を試みる。

 グループ全体が参加しながら、難易度の高い目標を達成することは単純ではない。そのために、コーチングスタッフは多岐にわたる準備を行なう必要がある。マイクロサイクルによるトレーニング構成とアプローチの一環として、トレーニング前後のミーティング、資料準備、スカウティングの用意、そして試合前のビデオミーティングなどの入念な準備が求められる。


 またフィジカル面でも、複雑な作業に直面することになる。フィジカルサイクルの調整や、対戦相手の難易度に応じたフィジカルピークの調整なども求められる。複雑なマイクロサイクルまたはメソサイクルを通して、選手達は各自に与えられた役割を理解しながらトレーニングを実践する。その全てを支えるためにも、専属スタッフによる細かい作業分担やスタッフ全員によるチームへの関与と参加が求められる。選手達にかかる精神的ストレスがいかに多大なものかは、各競技レベルに左右される。

③グループがチームに積極的に関与する環境を確保する

 戦術トレーニング、フィジカルコンディションの調整、試合以外にも、様々なチーム活動が存在する。ミーティング、食事、ビデオ分析、メンタルセッション、フィジカルトレーニング、社交会、地域活動など様々だ。指導者の義務として、その様な全ての活動に、選手を積極的かつ均等に参加させる。このようなチーム作りの舞台を用意しながら、チームマネージメントを円滑に進めるのも指導者のスキルである。

 トレーニングの日常を離れ、スポンサーとの挨拶、メンバーで朝食をとる社交会などを企画することも大切だ。メディアにクラブアピールをすること、公的な活動に参加すること、異種スポーツへ参加するなど、チームに社会性や団結をもたらす方法は様々だ。いずれにしても、選手をトレーニング環境外でも活動させながら、チームマネージメントにポジティブに働きかけることは指導者には欠かせない任務だ。