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2015-10-5

タイムアウトの種類分けと要求条件について

◆タイムアウトの種類分けと要求条件について

 今回のコラムでは、ボールスポーツにおけるタイムアウトについて考えてみる。欧州のバスケットやフットサル監督は、どのタイミングで何を考えながら、毎回のタイムアウトを活用しているのだろう?最も典型的なタイムアウトは、チームが失点などを重ねリードを許す状況での悪い流れを切るものかも知れない。しかしそれ以外にも、タイムアウトには様々な分類や目的が存在する。わずか60秒のタイムアウトの時間で、選手達が必要とする情報やアクションを引き起こすタイムアウトにしたい。

 もちろん指導者のタイムアウトに対する知識、経験、即興性の他にも、選手との共通意識や実行能力が求められる。試合のリズムを変えたり、結果を動かすため、タイムアウトは重要な戦略的リソースとして準備されるべきだ。

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◆タイムアウトの種類分けについて

  ①ゲームの流れや局面の向上のために、戦術修正を目的としたタイムアウト。ゲームの攻守の局面において、
   戦術的な主導権をとることを目的としている。しかし試合開始直後には、どんなに流れが悪くてもタイムア
   ウトはお勧めできない。試合時間がある程度過ぎて、ゲームリズムが安定するまでは、戦術の意図によらず
   試合のリズムは不安定であるからだ。

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  ②フィジカル面で選手を休ませるためのタイムアウト。最後の数分間を最高の強度で戦うために、主に体力
   そしてメンタル面での休息を目的とする。このような体力温存のためのタイムアウトだが、かなり頻繁に
   用いられまた有効度も高い。チームのリズムが良くても、試合中にどうしても疲労やストレスが高まる時
   間帯を見極めることがポイントだ。そこでは戦略的マネージメントも必要となる。選手の緊張感や集中力
   を乱さずに、それでも一瞬の休息を与える。仮に対戦相手の方が疲労しているならば、タイムアウトを取
   らない方が賢明だろう。疲れている対戦相手に休息時間を与えてしまうからだ。

  ③特定の攻撃パターンのためのタイムアウト。または特定の時間帯の中でのプレス回避、セットプレー、攻
   撃パターンの指示を行なうためのタイムアウト。例えば前半と後半の終了間際などに、ある特定の攻撃パ
   ターンを指示する。また試合をリードしている場合などは、得点差を守ることを重視した保守的な攻撃パ
   ターンの設定も可能だ。定位置攻撃、セットプレー、リスタートパターンなどを細かく指示したりできる。

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  ④ライバルチームに戦術変更を迫るタイムアウト。相手の守備システムを崩せない戦況などで、タイムアウ
   トを要求して戦術的に主導権を握る。全く違った攻撃戦術や攻撃のバリエーションを導入することで、相
   手チームの守備システムに変更を余儀なくさせる狙いがある。

  ⑤戦術的な秩序を求めたり、落ち着きを取り戻すためのタイムアウト。チームに戦術的まとまりが全くない
   時間帯の解決策。対戦相手が突如戦術などを変更して混乱した場合、対応できずに苦戦している場合など
   に用いるタイムアウト。混乱したチームを落ち着かせるため、ベンチ側は上手に対応をする必要がある。

  ⑥メンタル面での改善のためのタイムアウト。チームを精神的に落ち着かせる、高揚させる、集中を求める、
   インテンシティー、リズムに変化を加える。そのようなメンタル面でのアプローチを目的としたタイムア
   ウト。

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  ⑦特殊状況または数的有利・不利におけるタイムアウト。退場者が出た状況、負傷者や想定外の事態、主力
   選手が負傷や退場した場合の、戦術的な修正を目的とする。または特殊状況による数的有利・不利におけ
   るタイムアウト。

  ⑧タイムアウトに対するカウンター・タイムアウト。つまり相手チームが使ってくるタイムアウトの策に対
   抗するための、対応策としてのタイムアウトだ。一般的には相手のタイムアウト直後のタイミングで実行
   する。

  ⑨相手のタイムアウトによるチャンス・タイムアウト。相手チームがタイムアウトをとることで、自分の意
   図に左右されずに訪れるタイムアウト。予測可能な場合もあれば、予測不可能で突然訪れるケースもある。
   与えられた60秒を有効に使うため、即興性が求められる。

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  ⑩アウェーでの状況による逆境、プレッシャーや審判の苛立ちや焦り、観客からのプレッシャーを回避する
   貯めのタイムアウト。特に熱狂的な相手サポーターがいる場合、このような圧力は選手だけでなく審判団
   にも影響を及ぼす。拮抗した試合では、このような細かいポイントが勝敗を分けることも多い。一度タイ
   ムアウトを使い、雰囲気を落ち着け、審判団も含めて冷静に試合に対応させる。

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  ⑪戦術などを大幅に変更して、状況の打開を試みるためのタイムアウト。全く異なる戦術などを導入する。
   守備システム、攻撃システムを大幅に変えることで一気にリズムチェンジを狙う。選手も多く入れ替える
   ことが可能だ。その場合、選手達にははっきりと自分達の新しい役割を伝える。同時に個人そして集団と
   しての責任を伝えておくことも、重要なポイントだ。そのような情報伝達には時間が必要であり、タイム
   アウトで一度流れを切って整理することが望ましい。

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◆タイムアウトを要求する条件について

 タイムアウトを要求する条件について、ここで簡単にまとめてみよう。まずはチーム状態を理解しながら、対戦相手を知り、ゲームの流れを理解しながらタイムアウトをとる。選手の組み合わせや状態だけではなく、ゲームの局面や流れをしっかりと把握することが前提となる。またタイムアウトはスコアでリードされている場合のみに限らない。もちろん引き分けやリードしている状態からも、タイムアウトを有効活用できる。いずれにしても大切なのは、指導者はしっかりとした根拠を持ち、試合の流れを向上するためにタイムアウトを要求することだ。