インタビュー

インタビュー一覧へ▶
審判インタビュー一覧

2022-11-24

日本トップリーグ連携機構(JTL)審判プロジェクト 審判員活動PR企画【第10回】

 
 JTL審判プロジェクトでは、これまでに審判長会議や審判研修会の開催、関係省庁への働きかけなどを通じて審判員の方々の課題解決に取り組んできました。
 現在も各競技で多くの審判員が活動していますが、昨今判定の正確性やそれに伴う審判員の重圧が大きくなる中、その環境面、待遇面などでは改善の余地が多く残されているのが現状でその実態はあまり知られているとは言えません。そこでJTLに加盟する各リーグの第一線で活躍する審判員の方にインタビューし、皆様のストーリーをご紹介する連載企画を行っています。
 一人でも多くの方にお読み頂ければ幸いです。
 
 第10回の審判員インタビューは、アメリカンフットボールの審判員をされている大野和明さんです。

 

審判員インタビュー 第10回
大野 和明おおの かずあきさん
 

 聞き手:備前嘉文(JTL審判プロジェクトメンバー、國學院大學准教授)
 

NFLに憧れて始めたアメリカンフットボール

 
――アメリカンフットボールを始められたきっかけについて教えてください。
 
大野:もともとは野球少年だったのですが、中学の時に当時NFL(プロアメリカンフットボールリーグ)が大変流行っていて、かっこいいなぁと思っていました。新しいスポーツへの憧れといいますか、楕円形のゴムボールを買って友達同士で投げて遊んだりもしていました。そして、高校に入学した時に、クラブのオリエンテーションでアメフト部の先輩たちがとてもかっこいい紹介を見せてくれて、「自分もやるしかない!」と思い入部を決めました。
 
――そこからずっと選手をされていたのでしょうか?
 
大野:競技歴で言いますと、高校・大学の7年間プレーして、社会人でも3年間ほどやったので、合計で10年間になりますね。それと合わせて、社会人になってすぐに審判も始めました。
 
――社会人になってから審判を始められたとのことですが、審判を始めたきっかけはどのようなことだったのでしょうか?
 
大野:まずは、私の大学のOB会の方と部の監督の方から、審判をやってくれと言われまして、「やってもいいかな」程度の思いで始めたのが最初です。当時はあまりアメフト部を持つ企業も少なかったですし、私の会社も部はなかったのですが、社会人になってもアメフトと縁を持つのもいいかなと思いました。
 
――審判を始められて30年以上経ちますが、続けられるモチベーションはどこにあるのでしょうか?
 
大野:一番は、このスポーツが世の中のどのスポーツよりも面白いと思っていることですね。あとは、アメフトの試合はとても複雑で、1ゲームたりとも全プレーを完璧にジャッジ出来たということがこれまでない訳ですよね。そういったことから、極めて難易度が高いといいますか、ハードルが高いので、常に挑戦し続けようと思う気持ちがここまで続けられた原動力かもしれませんね。
 
――アメフトの競技自体の魅力はどのようなところでしょうか?
 
大野:まずは、やはり防具は付けていますが、身体の激しいぶつかり合いですね。ボールを扱いながらの格闘技ですよね。そして激しいコンタクトに加えて、1発でタッチダウンを取れるパスプレーなどの華々しさもあります。そういったところがこのスポーツの醍醐味ではないかと思います。あと、他のスポーツと大きく違うところは、自分たちで時間をコントロールしながら試合を進められるところです。負けているチームでも1秒あれば得点は可能なので、大逆転も起こったりします。
 
 

 

アメフトのおかげで生涯の趣味も見つけられた


 


 
――普段はどのようなお仕事をされているのでしょうか?
 
大野:普段は保険関係の仕事をしていて、事故に遭われた方からの保険の申請の審査や支払いなどの業務を担当しています。大学卒業後から損害保険の会社に入って、そこからずっと同じ業界にいます。就職するにあたってアメフトは特に関係なかったのですが、同じ会社に学校のアメフト部のOBの方が勤務されているなど、縁みたいなものは感じますよね。
 
――普段の仕事と審判の活動を両立するうえで重要と思うことはありますか?
 
大野:やはり家族の理解ですね。おかげさまで子ども2人に恵まれたのですが、やはり週末は審判の活動がありますので、子どもが小さい頃はなかなか家族とゆっくり過ごす時間を取ることは出来ませんでした。
 
――ご家族の理解はすんなり得られたのでしょうか?
 
大野:説得して理解してもらったと言いますか・・。半ばあきらめていたのかもしれません。しかし、子どもたちはアメフトはやらなかったのですが、私が審判をしていることについては、大きくなってからも家族の話題にはなりますね。また、歳を取っても自分の趣味を持ち続けているということについては、家族も安心してくれています。
 
――シーズン中以外にも審判の活動はあるのでしょうか?
 
大野:今は関東審判部の理事会メンバーもやっていますので、シーズンオフの時でも資料を作成したり、新しいルールについての解釈をしたりといった仕事があります。むしろ、試合のない時期の方が忙しいですね。そのような仕事を15年近く携わっていて、平日の夜も委員会とか審判関係の会議が入ることがあります。
 
――アメフトの審判のやりがいはどのようなところでしょうか?
 
大野:一番よかったところは、学校の友人や会社の同僚とはまた違う仲間が出来たことですね。フットボールという共通のスポーツに携わる多くの仲間と出会えて、今でも仲良くさせてもらっています。ずっと一緒に審判をやってきたメンバーと同じフィールドに立つのは楽しいですし、普段からコミュニケーションも取れているので試合の進行もスムーズに行く気がしますね。
 
 

 

アメフトは試合中にフィールドの中に8人の審判がいます

 
 

 
――試合中は審判同士のコミュニケーションは頻繁に取っているのですか?
 
大野:アメフトの試合ではトップレベルだと、今は1試合につき8人の審判がいます。11人対11人の選手に8人の審判がいるということで、合計30人が同じフィールドの中にいるのですが、審判同士のコミュニケーションがうまく取れると審判にとっても、選手にとっても気持ちよくいい試合が出来るのではないかと思います。
 
――アメフトのトップレベルで活動されている審判はどれぐらいの人数いらっしゃるのでしょうか?
 
大野:私が所属する関東審判部には現在250名ほどの審判がいて、西日本社会人審判委員会にも120~130名ぐらいいると思います。その中で、トップレベルのXリーグを担当している人は200名程度ではないでしょうか。
 
――1試合あたり8人に審判が必要ということは、審判の確保も大変ではないですか?
 
大野:フィールドにいる8名の他に、タイムキーパーの2名も入れると1試合で10名の審判が必要になります。昔は1人の審判が1日2試合も3試合も担当することがあったのですが、今はアメリカンフットボールの技術も高度になったので、1試合終わるとぐったりしてしまいます。ですので、1日に複数の試合がある場合は、20人、30人の審判が必要になるので、特にシーズン中は最低月に3回は予定を空けておいてもらっています。
 
――女性の審判はいらっしゃいますか?
 
大野:関東、関西で1名ずつXリーグや大学の試合を担当できる女性の審判がいらっしゃいます。アメフトはどうしても男社会といいますか、私が若い頃も少なかったのですが、やはりもっと女性の審判も増えて欲しいと思います。そのためには更衣室など施設の整備もしなくてはいけないことは今後の課題ですね。
 
――審判の方の多くは昔選手をされていたのでしょうか?
 
大野:選手だった人もいますし、学生時代はマネージャーだった人もいます。また、お子さんがアメフトを始めたので、自分も審判を始めようと思われた方もいらっしゃいます。今は大学の1部リーグに所属している大学から最低何名の審判を出してくださいとお願いしているのですが、とにかく人手不足なので、競技経験は問わないですので多くの人に参加してもらいたいですね。
 
 

 

毎年ルールが変更になるので、対応が大変・・

 
――審判をされていて大変だったことはありますか?
 
大野:いつも充実した週末を過ごせたらいいなと思って試合会場に行くのですが、チームから大クレームを受けたり、選手の汚い反則プレーを見てしまうと、あまり気持ちはよくないですよね・・。アメフトは激しいコンタクトがある競技だからこそ、スポーツマンシップを持ってプレーすることは大切で、チームへの講習会などでもスポーツマンシップについては勉強しておいてくださいねとお願いするのですが・・。やはり試合になると、どうしても選手は熱くなりますよね・・。
 
――他には大変なことはありますか?
 
大野:日本でもアメフトのルールはアメリカのNCAA(全米大学体育協会)の競技規則に準じて行われるのですが、毎年ルールが変わることと、それに合わせて審判の動き方も変わるのは大変ですね。アメリカ人はあまりルールの変更に拘りがないのか、結構頻繁に変えたりするんですよね。私たちからすれば、「そのルールは去年変えたばっかりでしょ?!」と思うのですが、その変更に対応しなければいけないので苦労しますね。心の中では、「何で毎年ころころルールを変えるの・・」と思いながらやっています(笑)
 
――アメフトはアメリカでの人気が圧倒的に高いスポーツだと思うのですが、国際大会でのご経験はありますか?
 
大野:残念ながら、海外での試合で審判をやった経験はありません。語学の問題もあるのですが、国際大会に出るためにはものすごく長い期間休みを取らなければいけないんですよね・・。普通のサラリーマンではとても無理ですよね。ただ、2007年に第3回のワールドカップが川崎で行われたのですが、その時の経験は審判活動を行う上でとても貴重な経験となりました。
 
――世界選手権でどのような経験をされたのでしょうか?
 
大野:その大会にいろいろな国の審判の方が来られて交流もさせてもらったのですが、その中にはアメリカの有名なボウルゲームを担当された方もいらっしゃいました。そして、その方とお話しをする中で、「目から鱗が落ちるとはこのことか!」と思うぐらい、それまで日本とアメリカの違いなど自分の中でモヤモヤしていたものの答えが出て、クリアになりました。それ以降、彼にはほぼ毎年お世話になっていて、その方のおかげで審判としてかなり成長できたという実感がありましたね。
 
――国際大会での審判は難しさもありますか?
 
大野:国際大会では70-0や60-7など、ものすごく大差がついてしまう試合もあるんですよね。そのような試合では、いかに怪我をさせずにコントロールしながらプレーを進めるかといった、ルールブックには書いていないような上手さも必要になってきます。そう言った技術も海外の審判の方から学ばせてもらいましたね。
 

 

プレーの内容も日々進化している

 
 

 
――アメフトの国際化に向けてはどう思われますか?
 
大野:日本ではアメフトの競技人口が減っていると言われている中で、日本協会やXリーグが目指すビジョンとして、日本での国際大会の開催があります。実際に来年(2023年)の1月に国立競技場でアメリカの大学選抜チーム(アイビーリーグ選抜)を招いて国際親善試合を開催することが決まっています。アメリカ以外にも、メキシコやヨーロッパでもアメフトの人気は高く、国際化を進めることは能力が高い選手が入ってくることなので、審判の立場からしても国際化はよいことではないかと思います。
 
――Xリーグでもここ数年、外国籍選手が増えてきましたが、外国籍選手が入ることでアメフトの内容にも変化はありましたか?
 
大野:やはり最近のアメフトは、昔のアメフトとは全然違いますね。特にXリーグの試合の質がとても高くなったので、審判をする時も緊張感が高くなりましたね。ラグビーも多くの外国籍選手が増えたことで代表チームのレベルが上がったので、アメフトでも外国籍選手が増えることはレベルアップの面においてもいいことではないかと思います。
 
――ルールの変更やアメフトの質が変わる中で、審判技術の向上に向けて日々トレーニングされていることはありますか?
 
大野:過去に行われた試合を編集していつでも試合の動画を見られるシステムがあるのですが、それを活用して、自分が担当した試合や他の審判の試合を見て、映像を使った振り返りのトレーニングをやっています。あとは、関東審判部の方で週に2回、ルールなどのトレーニングの問題を作成して配信しているので、その問題を自分でも解いて知識のアップデートをしていますね。
 
――他に日頃から心掛けていることはありますか?
 
大野:審判は仮に失敗しても取り返すことが出来なくて、あとのプレーで辻褄を合わせることはしてはいけないと、昔ある方から言われたことがあるんですよね。しかし、人間なので、失敗したらどこかで取り返そうという気持ちが生まれるのですが、起きてしまったことは早く忘れて次に切り替えられることも心のトレーニングとして必要かなと思います。
 
 

アメフトの今後の発展について

 
――これからアメフトのシーズンも本番を迎えますが、ここに注目して欲しいという点はありますか?
 
大野:試合中は選手に注目してもらって、特に審判は見なくてもいいのですが・・アメフトは審判がボールを置いて、センターの選手がスナップしてプレーが始まります。審判がモタモタしていると試合のリズムが悪くなって、スムーズな試合運営に支障をきたしてしまいます。ですので、前のプレーが終わってどれだけ早く次のスポットにボールを置けるかが、私たち審判の技術の見せ所でもあるので、少しマニアックではあるのですが、そういった点を見てもらえたら嬉しいですね。
 
――アメフトは見ていてルールが難しい時があると思うのですが・・
 
大野:アメフトでは、試合中にレフリーがマイクを使って反則などについて説明することが出来るので、一般のお客様にもわかりやすい言葉で、冗長にならないように簡潔に説明するように取り組んでいます。
 
――最近ではいろいろな競技でビデオ判定が導入されていますが、アメフトでは取り入れられていますか?
 
大野:Xリーグではすべての試合でビデオ判定を取り入れています。まだまだカメラの台数が少ないので、完全には捉えられていないところもあるのですが、少しずつ環境は整いつつあると思います。
 
――ビデオ判定の導入について、審判の方々はどのような意見をお持ちですか?
 
大野:導入された当初は、ビデオ検証で自分の判定が覆されたら嫌だな・・と思う人もいたのですが、やはり正確な判定が出来ることは選手やチームにとってもいいことなので、ビデオ判定の導入に対してはポジティブな考えの人が多いのではないかと思います。一方で、アメフトは8人の審判がフィールドにいるので、ややもすると誰かに頼ってしまうことがあるんですよね。しかし、それぞれの審判がしっかりとジャッジすることが私たちの役割なので、自分の目で見えたことに関しては自信を持ってジャッジしなさいと他の審判の人にも言っています。
 
――近年、SNSで選手や審判に対する誹謗中傷も度々起こっていますが、SNSでの書き込みは見られたりしますか?
 
大野:人から聞いて見る時はありますが、自分から積極的には見に行かないですね。もちろん気にはなりますが、例え何か書き込みを見たとしても一切気にしませんね。それは審判部の方でも徹底していて、SNSで言ったこと、言われたことに対しては絶対に反応するなと指示を出しています。いくら個人での書き込みと思っていても、世間は我々を審判として見ているので、発言する時は常に自覚を持つようにと他の審判にも言っています。
 
――これから審判を目指そうと思っている人にメッセージをお願いします。
 
大野:もしアメフトが好きであれば、アメフトの審判は一生を懸けてもいいぐらいやりがいのある趣味になると思っています。私が審判になった頃はほとんど教育もなく、いきなり現場で審判をさせられたのですが・・今は先輩(メンター)が一緒に付いてまずは練習試合や時計担当などで経験を積んだり、ルールの講習を受けたりと手厚いサポート体制が整っています。ですので、少しでも興味があれば、迷うことなく一日でも早くこの世界に入って来て欲しいですね。やはり早く始めることで、後々は東京ドームで行われる日本一を決めるライスボウルの試合を担当するチャンスも広がってくると思います!是非お待ちしています!
 
 
――質問は以上になります。本日はどうもありがとうございました。
 
 
 
※この事業は競技強化支援助成金を受けておこなっております。