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審判インタビュー一覧

2023-1-19

日本トップリーグ連携機構(JTL)審判プロジェクト 審判員活動PR企画【第11回】

 
 JTL審判プロジェクトでは、これまでに審判長会議や審判研修会の開催、関係省庁への働きかけなどを通じて審判員の方々の課題解決に取り組んできました。
 現在も各競技で多くの審判員が活動していますが、昨今判定の正確性やそれに伴う審判員の重圧が大きくなる中、その環境面、待遇面などでは改善の余地が多く残されているのが現状でその実態はあまり知られているとは言えません。そこでJTLに加盟する各リーグの第一線で活躍する審判員の方にインタビューし、皆様のストーリーをご紹介する連載企画を行っています。
 一人でも多くの方にお読み頂ければ幸いです。
 
 第11回の審判員インタビューは、WEリーグの審判員をされている荒川里実さんです。

 

審判員インタビュー 第11回
荒川 里実あらかわ さとみさん
 

 聞き手:備前嘉文(JTL審判プロジェクトメンバー、國學院大學准教授)
 

高校の恩師が国際審判員でした

 
――サッカーを始めたきっかけについて教えてください。
 
荒川:サッカーは幼い頃からやりたいと思っていたのですが、育った場所が田舎だったのでなかなかプレーする環境がなく、競技自体は大学からの4年間だけです。
 
――サッカーの審判になったきっかけは?
 
荒川:競技は大学からだったのですが、高校の時に男子サッカー部のマネージャーをしていて、顧問で監督だった元国際審判員の高山啓義先生から「男子の試合でも審判はできるよ」と勧めていただき、審判を始めたのがきっかけですね。
 
――顧問の先生の勧めから審判を始めたということですが、そこからトップレベルの審判を目指そうと思われたのはなぜですか?
 
荒川:最初からトップを目指そうと思った訳ではなく、周りに支えられて今のレベルまで来たというのが正しいところなのかもしれないです。最初のきっかけは高山先生だったのですが、私が審判を始めた当時は栃木県に女子の審判はいなかったので、栃木県サッカー協会をはじめ本当にいろいろな方に大切に育てていただいて今に至るという感じですね。
 
――サッカー(特に女子サッカー)の魅力はどのようなところですか?
 
荒川:一番はやはり得点を決めた時の「やったー!」という喜びですよね。そして、やっていくうちにチームで得点を取ることや競技をする楽しさも魅力に感じてきましたね。女子サッカーの場合、男子に比べてどうしてもフィジカル面が劣るので、その分、ドリブルでボールを運ぶ個人の力や個人の技術レベルは高いのではないかと思います。そういったところが、女子サッカーの魅力だと思いますね。今WEリーグでレフリーをやっている中でも、凄いと思う選手がたくさんいますね。
 
 

 

毎朝5時に起きてトレーニング


 

 
――現在は何か審判以外のお仕事はされていますか?
 
荒川:以前は女性専用のスポーツジムで働いていましたが、2人目の子どもが生まれた時に仕事を退職して、今は家庭で子育てに専念しています。
 
――仕事を探すにあたっては、審判は関係ありましたか?
 
荒川:特に就職に審判は関係なかったですね。私はもともと身体を動かすのが好きだったので、身体を動かすことで誰かの役に立てればいいなと思い、その仕事を選びました。
 
――仕事や家事・育児と審判活動の両立は大変ですか?
 
荒川:そうですね、やはりトレーニングの時間を取れないのが一番大変ですね。普段は家族のみんなが起きる前の朝5時ぐらいに起きて、そこから1時間ぐらいトレーニングをして、みんなが起き出す頃に家に戻るという、朝の時間を有効に使って両立させています。
 
――早朝からどのようなトレーニングをされているのですか?
 
荒川:トレーニングの内容はその日によって違うのですが、時間が取れそうな日は少し長めの距離を走ったり、子どもがぐずってあまり時間が取れそうにない時は短いスプリント系のトレーニングをしたりというように、その時に応じて変えています。
 
――トレーニング以外に、審判技術の向上のために取り組まれていることはありますか?
 
荒川:映像分析を行っています。自分がこれまで担当した試合の振り返りもですが、次に担当する試合に向けて、どのようなチームの特徴があるのか、気をつけたいことを事前に確認しますね。あと、サッカーにも競技規則がありますので、何度も読み返してルールの勉強は日頃からしていますね。
 
――映像分析などはいつされているのですか?
 
荒川:子どもが幼稚園に行っている間や、お昼寝をしている間に時間を見つけて、その時間ですね。
 
――休日は家族でゆっくり過ごされたりするのですか?
 
荒川:今はまだ子どもが小さいので、日帰りで行ける会場の試合の割り当てをお願いしているのですが、休日は土日のどちらかに試合があります。最近は主に土曜日にリーグの試合があるので、土曜は試合に出掛けて、日曜は家の大掃除など平日のドタバタを片付けている感じですね。
 
――お子さんたちもサッカーをされているのですか?
 
荒川:男の子2人なのですが、まだサッカーはしていないです。将来的にもしやりたいと思えばやってくれたらと思っています。違うスポーツをやりたいと言えば、特にサッカー選手にはこだわってはいないですね。
 
――お子さんはママが審判をされているのは知っているのですか?
 
荒川:はい、知っています。まだ小さいので試合会場で吹いている姿を見たことはないのですが、「お仕事いってらっしゃい」や「今日はどっちが勝ったの?」ということは話してくれます。
 
――育児と審判活動の両立は大変だと思うのですが、どれぐらい両立出来ているか点数を付けるとしたら何点ぐらいだと思いますか?
 
荒川:う~ん、まだ30点ぐらいですかね・・(笑)完璧を目指すとイライラが溜まってしまうので、なるべくストレスを貯めないようにやっています。だけど、大事な試合やフィットネステストがある前は子どもたちにカミナリが落ちる頻度が多くなってしまいますね・・。
 
 

 

審判もすべて女性のWEリーグ

 
 

 
――サッカーの審判のやりがいや楽しさはどのようなところですか?
 
荒川:大学時代に一緒にプレーしていた友人たちがまだ選手をやっているので、試合会場で彼女らに会えたりするのは嬉しいと思いますね。また、審判の活動で「今日は長野に行った」「今回は大阪に行った」など全国いろいろな場所に行けるので、そういったことも楽しみにしてもいいかなと思いますね。あとは、やはり試合が終わったあとに選手や監督から「ナイスジャッジだったよ」と声を掛けてもらえると嬉しいですよね。
 
――昨年から新たにWEリーグが始まりましたが、以前のなでしこリーグから変わったことはありますか?
 
荒川:選手はもちろんなのですが、リーグに携わるすべての関係者の気持ちの入り様が全然違いますよね。また、技術面でもプレーの速さなどとても向上したなと審判をしていて感じますね。
 
――WEリーグの審判はすべて女性ですか?
 
荒川:はい、WEリーグの試合はすべて女性の審判で行われています。一方で、昔に比べて女性の審判員の数は増えましたが、まだまだ足りていないと思うので、これからもっと増えたらいいなと思いますね。そのためには、やはりもっと環境面を良くする必要はあるでしょうね。
 
――具体的にどのような環境を改善すれば、もっと多くの人が審判をやってみようと思いますか?
 
荒川:私の場合は結婚をして、出産をしてと、ここまで順調に来る事が出来たと思いますが、やはり家族のサポートは不可欠ですよね。私の夫は素晴らしく、子どもが2人いても試合の時は何も文句を言わず送り出してくれるのですが、すべての人がこのような環境を得られる訳ではないですよね。私は試合がある時は、夫であったり、私や夫のお父さん・お母さんが子どもたちの面倒を見てくれていますが、例えば託児所があったり、試合会場で子どもを見てくれる人がいればより審判の活動に専念出来ますよね。最近ではすべての会場ではないですが、そのような施設があるところも徐々に増えてきたのはいいことですよね。
 
――今年もシーズンが始まっていますが、試合の中で審判のどのようなところに注目して欲しいですか?
 
荒川:審判なので、試合では注目されないことが一番嬉しいことなのですが・・WEリーグの審判員は対戦チームのユニフォームに合わせてその日に着るシャツの色を変えているので、女性らしい可愛いシャツにも注目してもらえたら嬉しいですね。
 
――試合中は審判同士でコミュニケーションは頻繁に取っているのですか?
 
荒川:昔は試合中に孤独を感じながら審判をやっていたのですが、WEリーグではマイクを使えるので、マイクを通じて見た事実について他の審判員と積極的にコミュニケーションを取りながらやっています。
 
 

 

子育ても、審判の活動も

 
 

 
――最近のサッカーではVARなど判定に様々な技術が導入されていますが、テクノロジーの活用についてどのように思われますか?
 
荒川:私自身もサッカーをやっていたので、正しい判定になることはとてもいいことだと思いますね。試合中は見る角度によって判定にも影響することがあるので、出来るだけ真ん中で見るようにしています。もし逆を指してしまった時は映像を何度も確認して、現場と映像を擦り合わせるようにしています。
 
――テクノロジーが導入されると将来的に審判員がいらなくなると言う人もいますが・・
 
荒川:サッカーでもゴールが入った、入っていないなどの判定は機械でも出来ると思いますが、4人の審判員がコミュニケーションを取りながら試合を進めて、最終的な判定は主審が行うので、テクノロジーが導入されたからと言って審判員がいらないということにはならないと思いますね。
 
――男子の試合では選手がエキサイトしたら試合が荒れることもよく見られますが、女子の試合ではそのようなことはありますか?
 
荒川:選手の皆さんは本当に一生懸命試合に集中してくれているので、試合が荒れるということはほとんどないですね。
 
――最近では、審判も試合で誤審などがあればSNSなどで非難を受けることがよくありますが、SNSなどはご覧になられますか?
 
荒川:私は機械音痴で、Twitterも何もやっていないので・・全然わからないです(笑)
 
――荒川さんの今後の目標についてお聞かせいただけますか。
 
荒川:まだWEリーグが始まって2シーズン目なのですが、もっといい試合を吹けるようになりたいですね。私自身もさらに経験を積んで上手く試合をコントロール出来るようになりたいと思います。男子の試合では、ファンの方が「今日の試合の審判は〇〇さんだ」とおっしゃられることがあると思うのですが、女子の試合ではまだそのようなことがないんですよね。なので、「今日の試合の審判は荒川さんだ」と言ってもらえるように頑張りたいですね!
 
――子育てをされながら審判をされている方はまだまだ少ないと思うのですが、最後にこれから審判を目指そうと思われている人にメッセージをお願いします。
 
荒川:年齢を重ねるごとに人生いろいろやりたいことが出てくると思うんですよね。もちろん審判で上を目指すのもいいことですし、審判やりながら結婚をして子供も欲しいなと思ってもいいと思います。私自身もそうだったのですが、その思ったことを全部叶えた方がいいんじゃないかなと思いますよね。やはりやらずに後悔するよりかは、まずやってみてそこから考えてもいいのかなとは思いますね。
 
 
――質問は以上になります。本日はどうもありがとうございました。
 
 
 
※この事業は競技強化支援助成金を受けておこなっております。