「チームメイクのためのマネージメントとコーチング」 No.1
2007/02/07
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2004年のアテネオリンピックにおいては個人競技を中心に日本選手の活躍が目立ったが、団体球技ではここ最近国際競技力の低迷が叫ばれている。日本トップリーグ連携機構が設立された理由として、そのような状況の中で各ボール団体競技が協力しあって強化していくことの必要性が高まってきたことが指摘される。
球技を見る上で日本の場合、やはり伝統的に人気競技である野球がモデルとしての基盤にある。球技は大きく、野球・ソフトボールなどの野球型、バレーボールなどのネット型、サッカー・ラグビーなどのボール型の大きく3つに分けられると考えられる。
しかし、野球におけるチーム作りが、サッカーやラグビーといったボール型球技にそのまま適応されるかというと改めて考える必要があろう。
たとえば、監督が選手に与える影響力や、監督がゲームにどの程度関与できるかといったことは競技によって大きく異なる。もっと分かりやすく説明すれば、ゲーム中、選手と同じユニフォームを着て指揮をとるのは、野球とソフトボールの監督だけである。サッカーの監督が、ピッチサイドで選手と同じユニフォームを着て指揮することはありえない。ラグビーもしかりである。これが各競技を語る上で重要なポイントなのではないかと思う。ボール型の場合、選手自身の裁量がゲームに与える影響が非常に大きい。ということは、主体性や発想力が選手にないと、ゲームはうまく構築されないということである。つまり、この主体性や発想力というものが日常的にコーチングされているかどうかが非常に重要である。一昔前の話になるが私達の頃は、主体性や発想力などはあまり重きがおかれていない時代であった。監督やコーチの「言ったことをやっておけ!」というような世界であった。そのような指導のせいか、日本の場合言われたことをできる選手はたくさんいるが、自分で考えることができる選手が非常に少ないのが現状である。これからの時代、いかに自分で考えられる選手を育てるかということがチーム作りにおけるテーマになってくるのではないか。
先日も企業の人事の方々の会合に参加したのだが、最近の学生を採用する際の重要なポイントは「基礎力」だそうだ。基礎力とは学力とイコールではなく、コミュニケーション能力、課題解決能力といった学校で習わない事を指し、実は社会人として圧倒的に重要な能力それが「基礎力」だそうである。私は、スポーツにはこの「基礎力」を育てる部分が非常に大きいのではないかと思う。
これからの子供達の人間形成において、スポーツは非常に重要な価値を持ってくるのではないだろうか。特にその中でも集団スポーツには多くのことが詰まっていると私は思う。
1. コーチング
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私は、最近のコーチはよく言えばやさしくなった、悪くいえばやわになったと感じている。例えば、最近、怒る指導者がほとんどいなくなり、若い選手達も怒られることに慣れていない。したがって、若い選手が扱いにくくなってきていると感じているコーチも多いのではないだろうか。最近の若い選手を見ていてよく感じるのは、反発係数が足りないということである。20年前のチームには、「なにくそー」と思う選手が多かった。そして、この気持ちを利用するコーチングが主流であったと思う。このようなコーチングスタイルを私は「突き放し的コーチング」と呼んでいる。だからこそ、むかしは練習で上手くいかない、成果がでない場合、「辞めてしまえ!明日から来るな!」というコーチが多数いた。当時は、そのようなことを言われても辞めるような選手は誰もいなかった。逆に目の色を変えて練習する。突き放されれば返ってくるという特性が昔の選手にはあった。最近の若い選手を指導していて感じるのは、突き放したら返ってこない。「辞めてしまえ!」といえば、辞めていく。私は今の若者達に、「突き放し的コーチング」は通用しなくてなってきていると思う。
私自身、NPO法人SCIX(シックス)という団体を運営していて、時々高校生を対象に指導している。今の高校の選手達は、私達の時代よりもまじめだと思う。情報化社会ということもあり最新の海外情報から技術論まで、さまざまな知識を把握している。その意味では、今の若い選手達は非常に能力が高いと言えよう。しかし、「なにくそー」と思う気持ちがどうも弱い。ただし、それが絶対的な能力の低下ということではないと思う。良い部分もあれば、悪い部分もあるといったところであろう。だからこそ、彼らのモチベーションを上げるためには、コーチの方々には選手達を「手繰り寄せて欲しい」と思う。「なんでできないんだ」ではなく、その選手にどんな素晴らしい点があるのか、他の選手と違う長所があるのかという視点を持つことがコーチに必要ではないだろうか。コーチは、単にその人間の欠点ばかりを見るのではなく、その長所が何なのかといったことを見ていく必要があるだろう。