2007-9-10

ダービーカウンティーの育成プログラムについて

2007/09/010

日本トップリーグ連携機構海外研修レポート(4)

 日本トップリーグ連携機構ではヨーロッパのクラブ運営の視察に遠征した。
その中で、ダービーカウンティーという、イギリスはイースト・ミドランド地方、ダービーシャー州にあるクラブ育成プログラムを視察した。ダービーカウンティーは広大な施設を保有し、アカデミーと呼ばれる9歳から14歳までの子供達に対して、様々なサッカー指導を行っている。その指導法についての特徴を紹介していきたい。

組織について

 ダービーカウンティーでは5つのカテゴリーに分かれ活動している。
(1) ファンデーション・・・5歳から7歳の子供達を対象に23の拠点を置き、会費を徴収し指導を行う。学校が休みになれば、普段とは違う形でイベントや教室を行い、指導をしていく。主な目的は次のカテゴリーへのリクルーティング活動であり、23拠点で1.200人が所属。ターゲットは1つの拠点で車を利用し1時間以内での移動が可能な地域を商圏としている。

(2) デベロットメントセンター・・・8歳の子供を対象とし、23拠点を9つのブロックに分けて
各ブロックで優秀な選手をピックアップし指導をしていく。上記のファンデーションと内容は同じ
だが上を目指すための篩の一つと考えている。目的や内容もファンデーションとほぼ同じである。
(3) アカデミー・・・9歳から14歳までの子供を対象にしている。アカデミーに所属する子供達は
指導も無料になり、広大な敷地の中で常に整備されたグランドがあり、指導の内容もより高度で専門的な指導を行っている。入団時には身体検査や面接などトップ選手とかわらない内容の濃さで

ある。1つの学年に約15人所属している。
(4) ユース・・・15歳から18歳までのトップチームの下部組織である。基本的にはアカデミーの卒業生を中心に所属している。商圏は移動時間が1時間30分以内である。
(5) トップチーム・・・下部組織の選手達、全員が目指す場所である。現在はプレミアリーグの2部に所属している。

Ages 5 to 7
Week1 Topie
Week2 Control
Week3 Dribbling
Week4 Turning
Week5 Passing
Week6 1v1s.2v2s
Straotured
games
week
ファンデーションの練習メニュー

 ※5歳から7歳までのファンデーションカテゴリーにおいても、ウォームアップやテクニックを学ぶ時間などが“Session format”として、事細かに設定されている。日本で言う「英才教育」ではないが、このような徹底した一貫教育が、チームを恒常的に強くする要因となっているのではないだろうか。

指導哲学、指導法について

 指導哲学、指導法についても別段、特別な内容を組んでいるわけではないが、全ての面ではっきりしている。
まず、ファンデーションではサッカーの楽しさを知ってもらい、アカデミーへ良い人材を送り込むために指導し、サッカーの基本動作を教え込む。アカデミーでは指導中に怒ることは絶対にしない。
自主性を重んじ、自己判断能力を高める事を学ばせ、サッカーの基本である11人対11人の対戦ではなく、人数を減らして、より判断が必要な場面を試合や練習中に設定して繰り返し訓練していく事で将来的に自己判断して行く事が可能になると指導している。
しかし、怒る事が必要な時期と事柄が出てくる。10歳を過ぎると技術的なミスでは怒らないがサッカーやチームのルール、及び社会的なルールなど規律を守らない選手には徹底的に注意して理解させる事が必要だと言う。但し、注意の仕方を考慮して、個別での指導が必要な場合などは全体的なところでの指導は避けるなど、個人のパーソナリティーを理解したうえでの行動である。
14歳以上になると勝負を意識しなければならないので、単純な技術ミスなども指導していく必要がある。練習時間についても1時間30分と非常に短い時間だが、選手が個別に練習に取り組むなどして足りない部分を補っている。
指導方法でのもう一つの特徴としては、ファンデーションとアカデミーのカテゴリー選手は「ファンデーションブック」と呼ばれる自己評価ブックをチームから支給され、毎回の自己評価を行っている。自分の特徴で伸ばすべき点、補う点、足りない点などを客観的な視点で見られるブックがある。そのブックをもとに、年に2度、親子面談を行い、両親の理解や成長も選手が成長するためには必要な事だと言っている。
最後に、ダービーカウンティーが最も誇りにしている事は、ファンデーションブックのように目に見える形で指導論や今後の指導者へのノウハウの蓄積などを行える事で、子供達の目的意識の明確化を図ることが可能となり、現在ではその相乗効果の連鎖が起こっている。

教育、移籍、地域について

 プレミアリーグ所属の45チームは全て、前述のカテゴリーピラミッドを所有していなければならないので当然のように競争が起きる、その中ではサービスの質を高める為に、学校ではできない日本の塾のような要素を含む教育を、元教師を招き開講している。

アカデミーに所属している選手の1/4の選手はドロップアウトをする為、セカンドキャリアとして教育を入れる必要もある。
 さらなる競争として選手の争奪戦がある。8歳や9歳の時点で、すでに契約チームがあり移籍をする際は移籍金が発生するなど日本では考えられない事も起きている。
 そして、最後に地域と連動して、ダービーカウンティーが地域のチームとして愛されているのかを誇示するためにも教室やイベントを子供達と連動しダービーでプレーすることを誇りに思える仕組み作りが行われている。