ダービーカウンティー 各担当者とのQ&A
2007/09/10
日本トップリーグ連携機構海外研修レポート(5)
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■Fill(担当:9歳〜16歳の教育プログラム担当 ※元教師)
質疑の前に
サッカーだけでなく基礎学力をつける事を重要としている。イギリスでは16歳までが義務教育であるので、16歳以上はフルタイムの契約ができるが、教育が必要なので個別に週2回の教育プログラムを開催している。教育を行う理由はドロップアウト率(トップと契約できない事)が非常に高いので、セカンドキャリアに向けて教育を行う。教育とサッカーは相互関係にあり、スポーツを科学的に捉え、栄養学やフィジオは体験して学んでいる。
サッカーが優秀な選手であれば特に教育プログラム力を入れ1週間で朝1回〜2回のトレーニングを行う。将来的には学校のような形にして、サッカーと教育の全てをダービーで運営していきたい。
Q1 それは学校教育か?
学校で足りない部分を補う形であり、日本で言う塾のような形である。16歳〜19歳の選手には、より高度な内容を教え、内容は以下の4つである。
(1) MBQ(国家資格)
(2) テクニカル(学校で学ぶ補習的な要素)
(3) キースキル(イギリスの必修は国語と算数)
(4) コーチングスキル(サッカーの指導方法)
Q2 大学に行く選手はいるか?
昨年は5人の選手とファンデーションからトップと契約したが2人は同時に大学にも行った。かつて、ドロップアウトした選手でアメリカの大学に行った者やコーチングを学んでいる選手もいる。
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■Gareth Holmes(担当:ファンデーション ※9歳以下の子供対象の教室)
質疑の前に
フットボールファンデーションとは、地域の学校とつながりを作る仕事で23拠点をもち、学校の時間以外で教室やイベントを行い、ダービーのアカデミーにリクルートする入口を作ることを目的としている。5歳〜8歳には、“ミニキッカーズ”と称して運動の基本やサッカーの基本を教え、アカデミーにつなげる入口を作りリクルートして9歳からアカデミーに入ってもらう。また、7歳〜14歳には、ファンデーションブック(チームメントブック)を用いて自己評価をする機会も設け、コーチは毎回その本を見て個人にマッチした指導方法を見つけて、セッション毎に分かれて指導、評価している。
一番の重要課題はタレントの発掘。幅広く数多くの機会を設けタレントを探す。もう一つの役割としては、コミュニティーに対して積極的なPRやアクセスが作れ、チャリティーイベントや女子向けのイベント更には障害者向けのイベントを行うこともできる。
Q1ファンデーションブックはダービー独自のものか?
もちろんダービー独自のもので、子供達に対しても独自性を出せる強みがある。ただし、ファンデーションとアカデミーは別である。ファンデーションはダービーの中でも最重要であり、コミュニティーから反感や苦情が出てもファンデーションがある事でクッション的な役割を果たし、ポジティブなイメージを持つことができる。
Q2サッカー以外の競技はあるのか?
ない、サッカーだけにフォーカスしている。ファンデーションはアカデミーのリクルート機関なので他競技は考えていない。
Q3近隣にはダービー以外のチームはいくつあるのか?
車で1時間以内に9つのチームがある。各チームのルールで14歳までは自転車で1時間以内のチームに所属する事が義務である。14歳〜16歳は1時間30分以内と決めている。よって、ファンデーションのターゲットは1時間30分以内になる。
Q4ファンデーションの実績は?
23センター全部で1週間に1.200人にアプローチしている。
Q5行政からのサポートは?
財政的なサポートはない。また、子供達に教えるためには教員資格のような資格がありそれが必要である。ダービーは資格もあるし、名の通ったチームなので学校側も受け入れやすい。学校が長期の休みに入ればサッカー週間というイベントを開催して、教室を開き収益を上げている。その収益はアカデミーに入れている。
Q6収入はどのように入れているのか?
(1) 長期休暇時期の教室は9:00〜15:00 12.50ポンド(約2.700円)
(2) 通常のファンデーション1時間3.50ポンド(約1.000円)
Q7トップチームに影響はあるのか?
とても大きな影響がありチケットやグッズなど関連商品を購入してもらっている。ファンデーションはアカデミーへ、アカデミーはトップチームへつながっているので、子供たちも分かりやすい目標設定と夢が持てる。
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■Alan Travis(担当:リクルート)
質疑の前に
ダービーの全体構造は底辺にファンデーション(お金を払って参加する)、2層目に9つのデベロットメントセンター(地域の優秀な子供たちを集める)、3層目にアカデミー(9歳〜16歳)、4層目にユース(16歳〜19歳)、そして、5層目の一番上がトップチームとピラミッド型の構造をしている。ファンデーションからトップに上がる選手が年々増えてきている事もあり、子供たちの参加率も上がっている。9つのデベロットメントセンターは、コーチングを受けるには無料で240人いる。目的はアカデミーへの流れを作り、そこから、ユース、トップへと流れる事を望む。ピラミッドと連動して全体で20人のスカウト専用スタッフがいて、他地域からのスカウトや他国からのスカウトもある。今はスロバキアやオーストリアからの選手もいる。日本からもいる。
Q1 スカウトをする年齢は?
15歳〜16歳がメインターゲット(国内外を含む)である。理由としては、選手としてのポテンシャルと教育システムがうまく連動できる年齢層であるから。1年に4回の大きなスカウト活動を行う。
他チーム及び他国からのスカウトした選手は、既存のピラミッドにいる選手よりも優秀でなければならない。また、他国の選手の場合は基本的には代表選手でなければならない。
Q2 契約金的な金銭は発生するのか?
スカウトする選手は優秀なので、すでに他チームと契約を結んでいるケースが多いので、そこに対して支払わないといけない金額がある。
Q3 リクルート人数の総数は?また、どのようなネットワークなのか?
他国選手の場合はエージェントを利用しスカウト及び契約を行う。基本的には専属のエージェントだが、他チームとの競合している場合があるかもしれない。イギリスの奨学金制度はイギリス人かユーロ圏内で国籍を有する者でなければならない。厳しい審査がある。現在オーストリアの選手がいるが、親がイギリス人なので奨学金制度を受けられる事になった。
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■Paul Smith(担当:フィジオ)
質疑の前に
フルタイムのセラピストは2人いる。さらに、毎日数時間のパートタイムでドクターがいる。試合がある場合は6人のパートを呼び、試合に備えている。アカデミーに参加する子供達はメディカルチェックを受けなければならない。
Q1 事故の場合はどのように処理するのか?病院とのタイアップなどは?
タイアップとかはなく、緊急の場合は緊急病院に行く。また、専門的な処置が必要な場合は専門医師にお願いする。選手は個人的な専門医がいるのでそちらとの併用をしている。長期的なコストを考えると、選手が長期の治療を有する場合とセラピストを用意する事で予防した方が経済的である。
Q2 フィジオ業務内容は?
試合対応は2人であり、体の動かし方なども教えている。
Q3 機器については?
日本はドクターの許可が入るがダービーはフィジオの裁量権で使用の判断をしている。
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■Gareth Prosser(担当:9歳〜16歳のアカデミーマネージャー)
コーチに対してダービーの哲学を教えている。ダービーが今あるガイドライン(7歳〜21歳の練習メニュー)の作成及び訂正をコーチと一緒に作成している。ガイドラインには戦術も掲載している。もう一つの役割はタレントの発掘で、アカデミーの選手を継続して成長しているのかを評価している。その判断基準は個人によって様々である。
アカデミーは8チームに分かれ、1チームにつき2人のコーチがいる。GarethとGlynの大きな役割は選手を育てるだけでなく、コーチも育てる事が重要である。1週間に2回のコーチング研修会を行い、1シーズンに27試合を他アカデミーと対戦している。
子供たちの成長度合いと親子関係を円滑に行う為、1シーズン2回面談を行い、次へ向けて親子に指導する。各試合に選手に対してコーチがレポートを提出する。全ての選手が成功するためにサッカー以外のサービスを提供する。(ex.教育、栄養、ウエイトトレーニング、戦術、パソコンなど)
Garethの個人的な役割として試合の対戦相手、審判などの手配やスタッフの給料払い込み確認など総務的な役割もある。
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■Glyn Salman(担当:9歳〜16歳)
質疑の前に
選手はそれぞれ1年契約で、契約終了後、未契約や他のクラブに移籍する選手もいる。移籍に際して移籍金が発生するのが通常だがこじれて裁判になる事もある。例えば、14歳の選手でノッティンガムホレストから移籍した選手は7,000ポンドの金額を支払った。以前は、ダービーアカデミーからリバプールに2人の選手が移籍して1人7,000ポンドで移籍したが、20歳の時に戻ってきた。
アカデミーを立ち上げれば国、プレミアリーグ、サッカー財団から寄付金が支給され3,600万ポンド支給される。その寄付金は4年に1度見直しがある。今年で9年目を迎える。ダービーのアカデミーはプレミアリーグの中で最低ラインであり、年間運営費は8,000万円である。
また、ダービーでは選手の親に対してもセミナーなどを行い、親も育てなければならない。1988年からFA(イングランドサッカー協会)が統一の見解としてアカデミーを各チームで所有することが必須となっている。
ダービーの誇りは選手、新規のコーチ、部外者に対しても目に見える形で資料がある事や知識の蓄積がしっかりしている事である。選手に合わせた個別のプランニング等もある事が重要である。
選手個別のメニューの作成には、必ずフィジオの意見を入れるなど様々な角度からアプローチをしている。例えば、心拍数を計り疲労度を考え試合前のトレーニングを抑えるなどもする。また、グラフや色分けをすることで見やすく加工したりしている。
Q1 クラブ全体でスタッフが何名いて、育成部門に何名のスタッフがいるのか?
アカデミーはフルタイムで8名と事務のスタッフに3人。会社全体でフルタイムのスタッフは約100名で試合になれば、ボランティアやアルバイト含め数百人になる。イギリスは子供を対象にした仕事では審査が非常に厳しく、犯罪歴、窃盗歴など細部にわたり調べる。
Q2 イギリス内でファンデーション〜トップの三角形を所有しているチームはいくつある?
プレミアリーグ所属の45チームがアカデミーを保有している。
Q3 ダービーと商圏が同じチームは何チームある?
12チームの競合がある。
Q4 日本では子供がスポーツをする環境が少なくなるなど社会的な要因があるがイギリスではどうか?
イギリス全体の人口は上がっていて、移民が増えたのが要因の一つになっている。しかし、日本と同じで子供の数は減少している。社会的な問題も含め子供がどのような環境にいるのか?が問題である。昔は外で遊び体を動かす事が当たり前だったが、今は、パソコン、ゲームなど娯楽が増え、肥満が非常に深刻な問題になっている。
だからこそ、アカデミーが積極的にPRしていかなければならない。
Q5 アカデミーからTOPチームに上がる確率は?さらに確率を上げるためには?
1/4はドロップアウトで、近隣の学校400人〜500人に1人の確率でアカデミーに入る。中小クラブはマンチェスターUやエバートンのようなビッククラブよりトップに残る選手は少ない。アーセナルのアカデミー選手は11人中9人が外国人選手であるがビッククラブは地元選手をこつこつ育てるのではなく、TOPチームをいかに強くするかを考え育成している。もちろん、改善はしていくが今は現状維持をしている。
ドロップアウト率を低くするために教育を行っているが、ダービーアカデミーはサッカーをうまくするためであり、リクルートの優先順位はサッカーのポテンシャルが高いことである。エバートンからルーニーが出たように素行が悪くてもサッカーが抜群に上手ければリクルートする必要がある。
Q6 アカデミーの運営状況は?
昨年のクラブ運営は84,500ポンドの赤字である。しかし、本年はボードメンバーが変わりコスト削減などを行い、改善の兆しはあるがプレミアリーグの1部から2部に落ちた事が大きな要因である。
■ダービーカウンティー、グラウンド視察より 担当:Gareth Prosser
Q1 指導哲学はあるのか?
自主性を重んじている。
Q2 8歳、9歳が自分で考えることができるのか?
考えさせるトレーニングを繰り返し、常に11対11で戦うのではなく、人数を減らし個人が考える回数を増やすトレーニングをする。ミスをしてもミスは当たり前なのでミスを認め自分で考えた行動をほめる。
Q3 ミスを認めない年齢にするのはいつから?
10歳以上を目処に怒る回数が増えるがミスで怒るのではなく規律を守らなければ怒る。ルールを徹底的に教える(サッカーの事や一般社会の事も)。14歳以上になるとミスで怒ることが出てくる。勝負を意識することになるから。理由を子供も理解しなければならない。
Q4 一定を超えたら怒られる事に子供は戸惑わないのか?
子供の特徴を理解して個人の合わせた指導をしている。
Q5 1つのカテゴリーに何人いるのか?
10歳以下は15人。12歳〜14歳は17人だが、個人とのコンタクトの回数を考慮すれば、15人がベスト。
Q6 アカデミーの規模は?
アカデミーの質から言えばトップ6には入る。2003年にできた施設、もとは違う場所にあった。天然芝が4面、クラブハウス、勉強施設、トレーニング施設がある。
Q7 前の施設との違いは?
施設の規模が違いである。
Q8 他チームとの兼ね合いは?
他の少年団のチームは有名クラブに入れる事で子供、親、指導者はステータスを感じ入れる事に前向きだから有名クラブ同士の兼ね合いの方が大きい。引き抜き合いや移籍金が発生する。そのため、施設やサービスの充実が必要である。
Q9 移籍金の仕組みは?
カテゴリー(ステージ)が上がっていく度に相手チームに支払う。金額は様々で個人能力によっても変わる。
Q10 本人が移籍をしたくないと言えば?
基本的には本人の意思だが子供と親と相談する。
Q11 地域の少年団から引き抜く手順は?
学校、親、地域の監督に話をして、全ての段取りをして理解してもらう方法をとる。
Q12 同じポジションに良い選手がいても新しくリクルートをするのか?
常に良い選手を探し全体のレベルを上げていく。
Q13 人数が多くなった場合は?
他のクラブから欲しいと言われれば渡す。必ずしも金銭移籍ではなく無償移籍もありえる。また、必要ない
場合は元のクラブに戻すこともありえる。しかし、数年後に再度良い選手になれば再度売り込むことも必要である。
Q14 子供の面倒はどこまでみるのか?
基本的には学校の補習で栄養、運動能力を上げるために手助けをする。
Q15 1日の練習時間はどれくらいですか?
1時間半行い、楽しく自主性を重んじ、また勝負を意識させる。