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2023-10-12

【2023年度指導者プロジェクト】
コーチング研修会インタビュー
Vol.1 佐藤智仁氏/ジークスター東京監督

 
 日本トップリーグ連携機構では22年度より指導者プロジェクトの一環として、コーチング研修会を3期にわたり実施してきました。コーチング研修会とはNPO法人コーチ道の松場俊夫氏のご協力のもと、講義から指導現場での実践、事後課題までを研修課題とし、競技力だけでなく人間力も獲得できるような選手を育成するコーチングスキルを身に付ける研修会となっています。
 
 多くの方にこのコーチング研修会を知っていただくために、実際に研修を受講されたOBの方にお話をお聞きしました。
インタビューの一人目はコーチング研修会0期で1期ではTAも務めていただいたハンドボール日本リーグのジークスター東京で監督を務められている佐藤智仁さんにお話を伺いました。
 

Q.現在指導をしている競技、カテゴリー、役割を教えてください。

 
 今は日本ハンドボールリーグの男子リーグに加盟する「ジークスター東京」というチームで監督をとして指揮を執っています。※受講時はアシスタントコーチ
 2018年に引退し協会の手伝いやチームの広報、小学生向けの講習会などを回っていました。その後、コーチ留学をして前所属チームで1年間コーチを経験した後、現在のチームへ移籍してきました。
 

 

Q.引退後に指導者になろうとしたきっかけ、理由を教えてください。

 
 何かのきっかけや出会いがあってということではないかもしれないです。小学生のころから友達と鬼ごっこやドッチボールなどの遊びのとき作戦を立てるのが好きで「○○君、球が速いからここにいて」とか指示を出すようなことをやっていました。そこからハンドボールに出会い中学・高校・大学の監督がハンドボールに対してマニアックで、練習の中でただ「右に行け!」という指示ではなく、その理由もきちんと示してくれていたので、感覚だけでやらないというハンドボールの奥深さみたいなものにどっぷりはまりました。スポーツが好きだったのでハンドボールを始めた時から「選手になるならハンドボール選手、選手が終わったら監督になる」という思いがあり、当時の監督がやっていた練習メニューをノートに書き留めていて、指導者の準備を自然と好きでやっていたという感じでした。
 監督をやってみたいと思うきっかけは、3年前のドイツでの留学の時にコーチングとはという事を色々と考え学んだ結果、「監督」になるという道を明確に意識し始めたと思います。小学校の文集などに2つの夢があるというのを書いていて、1つは選手になること、2つ目は監督になるという事が、今、叶っているので幸せなことだなと感じます。
 
 

Q.指導者の魅力や苦労を教えてください。

 
 魅力に感じるのは選手に思いが伝わり、それを選手が良いと思いコート内外で実践してくれていると、選手にいい影響を与えられたと感じるので、それがやりがいや魅力だなと思います。監督になって逆に難しいことは手ごたえが必ずしも勝利とイコールではなく、怪我や相手のチームのほうがさらに良い準備をしていて、そういった要因で負けることもあって、得体のしれない勝ち負けに向き合わないといけないというところは大変でもありますし、逆にそれがすべて自分の責任というところも魅力ともいえるのかもしれません。
 

 

Q.コーチング研修会を何で知ったのか~コーチング研修を受けたきっかけは?

 
 今までも過去の経験や感覚で指導したり、アドバイスしたりすることがありました。ですがアカデミックにコーチングってなにって問われることや、そのコーチングの裏付けを説明できるかと言われた時に、それを実践して成功した経験があるとか「ふわっとした感覚」だったので、指導をしていくにあたり、その「ふわっとした感覚」に気づかないのは怖いなと思っていて、ちゃんとしたコーチングを学びたいと思い情報を集めていた時に、チームの関係者にこういう案内が来ているよと紹介をされて知りました。
 インターネットで「スポーツ コーチング」や「ボールスポーツ コーチング」などを調べ、自分で1回きりのセミナーを受けたり本を読んだりはしていたのですが、しっかり学んだことは無かったですし、そういうものに飢えていたというか、ライバルチームの先輩コーチにも電話でアドバイスをもらうくらいで(笑)もちろん自分なりのやり方はあったのですが、色々な情報を仕入れて自分のやり方を作っていきたいなと思っていたので、迷いなくすぐにやりたいですと答えた記憶があります。
 
 

Q.参加してみての感想は?

 
 一言で言うと受講して良かったというのが感想です。「もやっと」していたこと、私が以前から考えていたことが明確になったり、自分のやっていたことがスキルとしてちゃんとコーチングの中の単語として存在していたりということで、もやもやが解けたという事もありますし、私が持っていた視点よりもちろん広い視点で教えてもらえたので、もっと勉強したいというモチベーションを与えてもらえたことも良かったです。
 
 

Q.研修会の参加についてはいかがでしたか?

 
 時間は合わない時もあったのですが、チームの為になるというのは選手もフロントも分かってくれていたので、私はやれる限り全力で取り組めたかなと思います。講義の課題も、自分の性格上、普通なら周りを見て空気感を合わせてしまう事があるのですが、せっかく自ら学びに申し込んでいる中で受け身になっていても意味がないと思ったので、積極的に取り組めたと思います。
 
 

Q.印象に残っている講義、学びはありますか?

 
 単語で言うと「傾聴」とか「承認」という部分です。コーチングの根っこに近い何をするにも大切な部分だと思います。私の感覚では今まで人と話す時に、結構実践できていると思っていたのですが、その「傾聴」の中のスキルや、なぜそういう事をするのかというのを深く知れました。また、それをすることで相手がどうなるのだろうということを「パフォーマンスを上げる」という目線では考えたことがなかったので、これを講義の早い段階で学び「このセミナーいい!」と思ったのもあり、思い出深い講義になっています。
 
 

Q.受講してみて実際の指導現場での変化はありましたか?

 
 チームは勝ったり負けたりで雰囲気は左右すると思うのですが、学んだコーチングを信じられているので、例えば選手は今こういう状態だからこういう風に聞いてあげないといけないということや、その為にどうしたらよいかなど、思考が行ったり来たりせずにぶれずにできていると思います。
 あとは話しをしてくれる人が確実に多くなってきました。馴れ合いとかではない感覚で、こちらの痛いところも突いてくるというようなチームが良くなるために考えてくれた結果の意見や質問だろうなという事も、会話の中で伝えてくれるようになったと思います。
 
 

Q.話をしてくるようになったきっかけは何がありましたか?

 
 セミナーの中で教わったGROWモデルを使った1on1を始めたことだと思います。今までも、「飲みいこう」や「コーヒー行こう」などいう感じで関係を構築する事や自分を知ってもらう事、相手が何を考えているのか気にするような事はしていたのですが、具体的にGROWモデルにこういう効果があるというのを学んでやり始めてから選手からも声をかけてくれたり、寄ってきてくれるようになりました。選手もそういうスキルを使ってコーチングしているのだろうなというのは気づいていると思うのですが、私の熱意も伝わっているのかそういった機会が増えたと感じます。
 GROWモデルを実践して話をしてくれたというのも大きいですが、私と選手の中で「こうしていこう」という同じ目標が作れて、日頃の練習の中でそれが「できた」という状況で選手が私の方をチラッと見るタイミングで目が合い、ジェスチャーなどでGOODとすると承認効果もあり、成功をより実感できました。全選手とそのような関係になっているわけではないですが、GROWモデル実践から練習での実感というのは、本当に学んで良かったなと思う瞬間でもあります。
 

 

Q.学んだことがハンドボール以外の生活の中で生きた場面はありましたか?

 
 子供との会話もそう思いましたし、スタッフ間のコミュニケーションでの影響が大きいと感じました。スタッフがそれぞれ多くの仕事を抱えている状況ではコミュニケーションが大切だと思います。
 私が留学したドイツのチームはどのカテゴリーのスタッフも生き生きと仕事していて、チームが良くなるための意見を言い合っていました。日本ではなかなか難しいと思うのですが、コーチングを使いながらコミュニケーションをとることでスタッフ間のコミュニーションがよりよくなっている感じがします。
 

Q.コーチング研修会を受講生して一番自信になったところは?

 
 選手に問えるようになったことです。傾聴や承認、GROWモデル、監督とは指導者とは?など様々なことを教えてもらった中で、学んだことを活用して、選手に考えさせるスキルが標準装備できていると思えているところが自信になっている部分だと思います。もちろん自分のやりたいハンドボールに誘うようにはするのですが、チームが強くなるために選手自身に考えることを止めさせない、考え続けさせるという事ができていると思います。
 選手が課題に直面した時に、まずは自分で考えそれを乗り越えどうしても行き詰った時に指導者がコーチングするようなチームが私の哲学ややりがいにも繋がっています。日本だと全員が「右向け右」のチームが強かったりする場合もありますし、チームを強くすることと直結しない場面もありますが、そういう部分が大事にできていると思います。
 

 

Q.受講を考えている皆さんにメッセージを。

 
 コーチングや指導に関して自分のやり方を持っている方でも、少しもやもやすることやこういう時どうしよう?というものがあると思うのですが、それは間違いなく晴れると思います。スポーツの現場だけでなく人生においても役立つことが満載なので迷っているなら受けてみることを勧めます。やってみて意味が無かったものは無いですし、損をすることも無いです。
 指導者としては学び続けることが必要ですし、自分がやってきたことが合っているという再確認も出来ますしし、新たな発見も出来る場だと思います。違うスポーツの方と話すのも、自分の競技では当たり前なことが他競技では全く違ったりしていて、そういう意味でも狭い世界から飛び出して、様々な知識を得られることもおススメです。身構えず堅苦しくなく楽しく学べます!