2010-8-10

平成22年度日本トップリーグ連携機構 GM研修会開催報告

2010/08/10


 日本トップリーグ連携機構では、7月30日(金)〜8月1日(日)の3日間、味の素ナショナルトレーニングセンター(東京都北区)においてGM研修会を開催しました。

 この研修会は、チームの強化・競技の普及振興を図り、企業スポーツ及びクラブ型スポーツチームの活性化に重要なマネジメント機能強化を図るために重要な役割を果たす、各リーグのGM(ゼネラルマネジャー)、マネジメント担当者、各リーグ運営者などを対象にしたものです。
 全国のチームやクラブから集まった参加者35名は、3日間に渡り、講義やグループワーク、情報交換や交流を通じて、課題を共有し解決策を研究・討議しました。




1日目

 初日の7月30日(金)は、13時30分から開講式を行い、当機構の市原則之専務理事から、本講習会の趣旨について挨拶がありました。
 その後、高橋義雄先生が、チームマネジメント総論について講義をし、マネジメントの重要性について学びました。

講師プロフィール


高橋 義雄(たかはし よしお)
筑波大学大学院人間総合科学研究科
スポーツ健康システム・マネジメント専攻准教授
自己紹介
東京都生まれ。東京大学教育学部卒業。1998年より名古屋大学助手、2008年より現職。エジンバラ大学客員研究員(2003-2004)。観光庁スポーツ・ツーリズム推進連絡会議委員。日本トップリーグ連携機構事業推進委員会アドバイザー。
チームマネジメント総論・グループワーク
 チームマネジメント総論は、クラブ・チームの経営について理解することが目的です。クラブ・チームの経営資源とステークホルダーを理解し、それらを組み合わせて適切な相手に対して、適切な商品をつくり、適切な価格で、適切な流通・方法で、適切にプロモーションすることを考えます。さらにクラブ・チームの経営課題を明らかにし、経営の全体戦略を立案すると同時に、個々の事業戦略について具体的な事例の交換を行います。

 続くマネジメント演習(1)では、弁護士の奥村直樹先生から、法務に関する基礎知識として、肖像権と商標権、選手契約について講義がありました。肖像権に関する講義では、サッカーのJリーグの規約を具体的に紹介しながら、参考になる内容が展開されました。

講師プロフィール


奥村 直樹(おくむら なおき)
弁護士・弁理士
自己紹介
京都府生まれ。2001年東京大学法学部卒業。2004年弁護士登録。同年より中村合同特許法律事務所勤務。2010年弁理士登録。日本スポーツ仲裁機構ドーピング仲裁研究委員会ワーキンググループ委員等。
マネジメント演習(1) 法務(肖像権・契約)
 本マネジメント演習(1)におきましては、チーム運営にあたり皆様に知っておいていただきたい法律知識について概括的な講義を行うとともに、皆様から事前にいただいた質問とそれに対する回答のやりとりをとおして、法律知識の理解を深めて頂くことを目的としております。また、チームコンサルティングの中で浮かび上がってきた問題点についても、差し支えない範囲で紹介したいと考えています。

 初日の最後となる、佐野毅彦先生の講義では、チームマネジメントの事例発表が行われました。岡山湯郷Belle(サッカー)、ジュブリーレ鹿児島(サッカー)、三重バイオレットアイリス(ハンドボール)が、各クラブで展開している具体的な事例を紹介し、参加者で共有する機会となりました。
 初日終了後は、夕食懇親会が催され、競技を越えて活発な意見交換が行われました。

講師プロフィール


佐野 毅彦(さの たけひこ)
慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科准教授
自己紹介
東京都生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業、米国ジョージア州立大学大学院(スポーツ経営学)修了。1995年よりJリーグ事務局勤務、2005年より現職。日本サッカー協会事業委員・bjリーグ経営諮問委員。
チームマネジメント事例発表
 日本トップリーグ連携機構は2008年、2009年度の2ヶ年にわたり、トップマネジメント機能強化を目的として、コンサルティング・研究事業を実施しました。この事業から得られた知見を共有するため、今回の研修では以下の3つの事例について理解を深めていただきます。
 ・支援自動販売機(岡山湯郷Belle)
 ・マーチャンダイジング(ジュブリーレ鹿児島)
 ・FMラジオを活用した集客活動(三重バイオレットアイリス)

2日目

 7月31日(土)は、はじめに高橋先生から昨日のアセスメントがあり、その後、マネジメント演習(2)(3)とグループ研究・討議が行われました。4つのテーマについて4名の講師から講義があり、各テーマから出された課題が出されました。講義終了後、各班で2つの課題を選択し、研究・討議をしました。各班の構成は、1班および2班は企業中心に、3班から6班まではクラブ中心でした。グループ研究・討議は夜まで続き、発表資料を作成するサポートスタッフの学生等は、夜中まで資料作成に励んでいました。

 マネジメント演習(2)では、まず始めに、マーケティング・スポンサーというテーマで、五十嵐幸之輔さんが講義をされ、スポーツという実態のないモノを売る仕組みとして「何」を売るのか?という視点に立ち、他分野の事例を含めお話がありました。五十嵐さんは、商品やサービスの売り方・伝え方は、時代の流れや環境によって変化し、企業やチームに求められるものも変化するので、優先順位を明確にした取り組みが必要と話し、チームやクラブを継続し続けるための方策を考えてほしいと話しました。

演習課題:「あなたのチームのバーター型スポンサードについて」

講師プロフィール


五十嵐 幸之輔(いがらし こうのすけ)
株式会社トップスポーツプロモーション 代表取締役
自己紹介
バスケットボールを中心にリーグマネジメント・マーケティング・プロモーション活動を行う。JBL及びWJBLの創設に参加。JBAの『次世代型トップリーグ検討委員会』に参加。現在は、WJBLを中心にリーグマネジメントを実施中。
マネジメント演習(2) マーケティング・スポンサー
 各チームにおけるマーケティング活動・スポンサード活動の整理、展開
 
◎基本的な考え方
 
◎アプローチの手法
 
◎会場ディスプレイ
 
◎次世代型のマーケティング、スポンサード
 
 ・ベンダー、サンプリング、会場ディスプレイ、特産物売店、他

 引き続き、榊原孝彦さんから、地域連携事業というテーマで、スポーツ振興基本計画に基づいて推進されている総合型地域スポーツクラブ、広域スポーツセンターの取り組みについて紹介され、トップリーグが持つブランド力を総合型クラブで活用してほしいというお話がありました。榊原さんは、今後、トップスポーツと地域スポーツをつなぐ役割を担える人材や組織が重要だと述べ、参加しているGMやマネジメント担当者へメッセージを送りました。

演習課題:「クラブやチームが持つ資源を生かして総合型クラブと「WIN-WIN」モデルを創る」

講師プロフィール


榊原 孝彦(さかきばら たかひこ)
愛知県教育委員会体育スポーツ課
自己紹介
愛知県生まれ。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修了。公立学校教員を経て、基礎自治体及び都道府県のスポーツ行政に従事。2000年には保体審でスポーツ振興基本計画策定に関与。社会活動として1996年からNPO法人ソシオ成岩スポーツクラブをマネジメント。
マネジメント演習(2) 地域連携事業
 地域連携事業のセッションでは、現在スポーツ振興基本計画に基づいて推進されている「総合型地域スポーツクラブ」、「広域スポーツセンター」などの地域スポーツ振興施策について概説します。それを踏まえて、地域のスポーツ振興におけるトップレベルクラブへの期待やその在り方について、事例を通して議論し、トップレベルクラブとグラスルーツのクラブ等との間で「WIN-WIN」となる具体的な連携事業のモデルを立案します。

 マネジメント演習(2)終了後、アスリートビレッジでの昼食を挟み、午後はマネジメント演習(3)が行われました。
 小山内孝之さんからは、チケット販売・後援会について、チケット販売の現状や方法、チケット流通会社への委託方法など、チケット販売に関する仕組みをわかりやすくご説明いただきました。その後、後援会についての現状や後援会組織の見直しの必要性について述べられ、顧客の囲い込み強化やメールでの積極的な情報発信といった具体的な方策が紹介されました。

演習課題:「チケット販売・顧客をセットとした仕組み」

講師プロフィール


小山内 孝之(おさない たかゆき)
オフィスOSANAI 代表
自己紹介
青森県生まれ。早稲田大学卒業。1984年ぴあ㈱入社、九州営業所立上げ、「長野オリンピック」、「FIFA日韓ワールドカップ」等の事業部長。2006年独立、現職。2008-09年日本トップリーグ連携機構「調査研究事業」プロジェクトメンバー。
マネジメント演習(3) チケット販売・後援会
 マネジメント演習(3)「チケット販売・後援会」は、各々のリーグ・チームの現状に関わりなく基本的なチケット販売の知識を共有し、後援会・ファンクラブの活性的な組織化が、共にチームの重要な収入源になることを理解するのが目的です。後援会・ファンクラブ会員の増員方法や会員とのコミュニケーション方法の一例を具体的な事例で提示し、さらにその方法を現実的に行うためにはどうすればよいかを共に考えたいと思います。

 PR・メディアをご担当いただいた、相原正道さんの講義では、メディア戦略の考え方や社内のコンテンツ企画力を育成し、ノウハウを蓄積させること大切だというお話がありました。HPやポスターを活用したインハウスメディア、地域メディアを活用したアライアンスメディア、テレビや新聞、ラジオを活用したマスメディアの順にメディア戦略を考えることが必要であることが紹介されました。

演習課題:「これまでに講義のあった3つの課題のメディアPRをどうしますか?」

講師プロフィール


相原 正道(あいはら まさみち)
多摩大学 経営情報学部経営情報学科 客員准教授
自己紹介
1996年出版社、PR代理店を経て、東京ヤクルトスワローズ「F(古田敦也選手兼任監督)-PROJECT」メンバー、東京オリンピック・パラリンピック招致委員会事業部門マネジャーとして活躍。
マネジメント演習(3) PR・メディア
 スポーツを取り巻くステークホルダーの中で、メディアとの良好な関係を築くことが現代のスポーツ産業では重要です。メディアの露出量は、事業形態とその帰趨を大きく左右します。そこで、今回のPR・メディアのマネジメント演習では、地域連携事業、チケット販売・後援会、マーケティング・スポンサーなどの講習テーマから各グループで1つ選択し、これまでの各チームの広報活動を加味し、各グループにPR戦略を立案・発表してもらいます。


 4つの講義を終え、課題の確認を行った後、各グループで研究・討議が行われました。まずは、各班で、司会1名、発表者2名を選出し、その後、4つの課題から2つを選択し、翌日に、1テーマ10分の発表、質疑応答5分、合計30分のプレゼンテーションに向け、話し合いが行われました。各班には講師や事業推進委員が入り、一緒にディスカッションしたりアドバイスしたりしながらグループワークが行われました。研究・討議の記録や資料作成はサポートスタッフが担当しました。ナショナルトレーニングセンターでの研究・討議は21時まで続き、その後、ホテルへ戻ってから資料作成を行う班もあり、長時間に渡る内容の濃い1日となりました。

3日目

 最終日の8月1日(日)は、佐野先生から昨日のアセスメントの後、1班から6班まで、各班の発表が行われました。選んだ2つの課題について各10分発表し、その後、質疑応答10分、合計30分の形式で行われました。


1班:地域連携,メディアPR
 
地域連携では、地域と企業の双方の歩み寄りが今後の展望として発表されました。質疑応答では、双方の歩み寄りについての具体的な手段や地域密着による企業の本体から受ける弊害はないのかといった現場に即したディスカッションが展開されました。



2班:チケット販売・後援会,PRメディア
 各チームのチケット販売やチケット管理状況の課題、情報発信の現状が具体的に示されました。PR戦略の提案として、Face to Faceを重点に置いた、インハウスメディとアライアンスメディアの具体的な事例が発表されました。


3班:チケット販売・後援会、PRメディア
 
新たなチケット販売戦略の導入モデル=Dettiiや、プロモーション作戦=ピッPR!!といったネーミングを付けた提案が発表されました。チケット担当者の配置やメリハリをつけた年間計画の必要性が、まとめとして述べられました。



4班は:チケット販売・後援会,バーター型スポンサード
 チケット販売の“バラマキ厳禁”を強調し、スポーツをタダで見られる固定観念から脱出すべく招待券から有料券への段階的移行の提案が発表されました。バーター型スポンサードでは、実際の事例紹介があり、質疑応答では、具体的なコスト面の質問がありました。


5班:バーター型スポンサード,メディアPR
 5班は、発表者のハンドボール・琉球コラソンの水野さんの活動拠点である沖縄に焦点を絞った具体的な企画について、研究・討議されました。沖縄での実際の取り組みや、クラブとファン・市民、地元商店街の三位一体となった具体的なスキームが紹介されました。



6班:バーター型スポンサード,地域連携
 スポンサーの現状から今後の対応、新たなマーケティング・スポンサーの獲得について発表されました。地域連携が進むために必要なクラブやチームと総合型クラブの両者にとってWIN-WINモデルを構築するために、GMが両者を結ぶ核となる提案がされました。

 全グループの発表を終えた後、佐野先生から、最終日全体のまとめがあり、イメージだけではなく、事実や実際の数値データに基づいたマーケティング戦略を立て、マネジメントしてくことが重要であることが参加者に伝えられました。



 最後の総括として、日本トップリーグ連携機構の本山茂樹アドバイザーが挨拶しました。本山アドバイザーは、今回の講義や研究・討議など研修会全体を通して、「地域との連携が分からない」、「社内の興味が低い」といった各チームやクラブの現状や課題が明らかになり、具体的なビジネスアイデアや解決方法まで共有できる機会となったこと評価し、研修会だけで終わることなく、今回のネットワークをつなげて、各チームや地元に持ち帰り、チームや地域、トップリーグ全体が活性化することを願って全体の総括とし、解散となりました。

 本講習会にご参加いただきました、参加者の皆様、講師、サポートスタッフ及び後援いただいた、大崎企業スポーツ研究助成財団に心より感謝申し上げます。

Training Agenda(日程)

7月30日(金)
時間
内容
13:30-14:00
開講式・オリエンテーション
主催者挨拶
/市原則之(日本トップリーグ連携機構 専務理事)
14:00-15:30
チームマネジメント総論・グループワーク/
高橋義雄(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
15:30-17:00
マネジメント演習(1)
① 法務(肖像権・契約)/奥村直樹(中村合同特許法律事務所)
17:00-18:30
チームマネジメント事例発表/
佐野毅彦(慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科)
19:00-20:30
夕食懇親会
20:30- 
解散
7月31日(土)
時間
内容
9:00-9:30
アセスメント/高橋義雄(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
9:30-11:50
マネジメント演習(2)
① マーケティング・スポンサー/
五十嵐幸之輔(㈱トップスポーツプロモーション 代表取締役)
② 地域連携事業/榊原孝彦(愛知県教育委員会)
12:00-12:50
昼食
13:00-15:00
マネジメント演習(3)
③ チケット販売・後援会/小山内孝之(Office Osanai)
④ PR・メディア/相原正道(多摩大学経営情報学部)
15:30-18:00
グループ研究・討議
18:00-18:50
夕食
19:00-21:00
グループ研究・討議
8月1日(日)
時間
内容
9:00-9:10
アセスメント/佐野毅彦(慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科)
9:10-12:00
グループ発表 評価会 統括
12:10-12:30
閉講式
12:30-13:00
昼食
13:00-
解散


開催要項

趣旨  当機構には団体ボール競技の日本のトップリーグ8競技10リーグ178チームが加盟している。チームの強化・競技の普及振興をはかり、企業スポーツ及びクラブ型スポーツチームを活性化するためには、チームのマネジメント機能強化が不可欠である。特に企業がチームを保有する目的を社会貢献・地域活動と捉え市民・自治体との連携を求めている。当機構は平成20年・21年度2カ年にわたり、マネジメント強化のためのコンサルティング・研究事業を実施してきている。また、この事業実施に当たっては国内の専門家集団を組織した。ここでの研究事業を具体的方策として各チームにフィードバックする為に、当機構加盟の178チームのGM(ゼネラルマネジャー)等を対象に、2泊3日の研修会を開催することによりチームマネジメントを強化して時代に即したチーム運営、リーグ運営の強化に努める。
 これまでの2カ年にわたるコンサルティング事業、研究調査事業により各チームのマネジメント機能強化に関する具体的Solutionに関する知見を集約することができた。この研修会の具体的方策を習得し、GM同士のネットワークを構築する事によりチーム及びリーグ運営を効果的に進めることが出来る。
主催 日本トップリーグ連携機構
後援 大崎企業スポーツ研究助成財団
日時 2010年7月30日(金)〜8月1日(日)
会場 味の素ナショナルトレーニングセンター 研修室
参加者  当機構加盟8競技10リーグ178チームのGM(ゼネラルマネジャー)、マネジメント担当者および各リーグ運営者、その他各リーグの推薦するもの約60名。1リーグあたりの参加者は原則として6名以内とするが、参加者の増減については事前に事務局に応相談。