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2015-4-22

スポーツ選手にとっての理想の食生活について(前半)

『はじめに』

 先日スペインのスポーツ雑誌を閲覧していると、スポーツ選手の食生活に関係する『最高の食生活について』という記事を目にした。食生活がスポーツパフォーマンスに多大な影響を与えることは、明白な事実だ。コラム82号、83号などでも掲載した、“インビジブルトレーニング”の代表として食事、休息、睡眠などを紹介した。現代生活の中で、多くの選手達はこの『食事』の重要性を軽視する傾向にある。特に若い選手の食生活だが、糖分、塩分のバランスに欠如した生活を送っている。コラム(前半)では、栄養学の観点から『スポーツ選手に有益な食物や飲料』について考察してみたい。

『一生にどれくらいの食物を消費するのか』

 まずは問題提起を行なう。一人の人間は生涯をかけて、どれくらいの食物を消費するのだろう?おおよその計算ではあるが、一人あたり6万キログラムの食材、そして10万リットルの飲料を一生の中で消費する。実に膨大な量の食品・飲料を消費するのだ。長い年月をかけて10万リットル、6万キログラムの食べ物が体内に吸収される・・・『食生活は積み重ね』何を食べて、何を飲むか、その積み重ねは体調・体重に如実に反映される。スポーツ選手を例にとっても、バランスの取れた食生活は毎日の課題となる。

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『まずは野菜と果物をたっぷり摂取すること』

 健康維持のためには何よりも、野菜とフルーツ類をたくさん食事に入れることから実行したい。例えば毎日フルーツを3品食べるとすれば、約90年間で9万個のフルーツを消費する計算になる。また野菜にしても、毎日2品を摂取すれば、生涯で6万品の野菜料理を食べ続けたことになる。野菜・果物はできるだけ豊富な種類を食べるように意識したい。野菜・果物によって栄養価値なども異なるため、毎月の食事の中で『100種類』ほどの野菜やフルーツを、バランスよく食事に組み込みたい。

『食生活の4大ポイントとは』

 ここでは、スペインバスケットボール協会、サッカー協会の栄養コンサルタント兼スペインオリンピックの健康管理部も務める、アントニオ・エスクリバノ氏の理論を参考にしたい。アントニオ氏によれば、健康的なスポーツ選手に欠かせない、食生活の4大ポイントは以下のようだ。

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①どのような種類の食品を摂取するか
②どれくらいの消費量で管理するか
③食事の時間帯、料理方法、摂取方法など
④日常における運動消費はどう維持するか

『体重管理に“運”は必要ない』

 スポーツ選手の成功には、運気が必要となるとも言われる。しかし先述にあるアントニオ氏が指摘した4大ポイントを工夫できれば、体重管理には運気は必要ないだろう。何よりも体重管理には、『計画性』と『継続性』が求められる。急激に体重が変化することは、正常な生活の中では考え難い。ポイントはバリエーションに富んだ健康的な食品を、適切な量だけ、正しい時間帯に摂取することだ。加えて、目標のために必要となる運動量の設定を、トレーナーやコーチと相談しながら計画する。

 また何を食べるかに拘わらず、しっかりと噛みながら食事することも重要だ。食物を噛むたび、一度に25~40回はしっかりと噛むことが理想的とされる。脂肪分の分解、消化の助長、食欲の抑制など、スポーツ選手の健康維持のために、食物をしっかりと噛むメリットは多大である。

『最強の果物・リンゴ』

 アントニオ氏の著書『最適な食生活について』を参考にすると、スポーツ選手に最も有益とされる食物はフルーツ(果物類)と定義されている。それではどの果物が、スポーツ選手にとって最も有益なのか?アントニオ氏によれば、特に重要な果物の一つが『リンゴ』ということだ。リンゴは選手の体重管理だけではなく、健康維持のためにもプラスという研究結果が各国でも知られている。

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『リンゴとペクチンについて』

 『リンゴを1日1個食べると医者を遠ざける』西欧にはこのような言い回しがある。事実としてリンゴが健康に有益ということは、欧州では広く理解されている。欧州において、リンゴは1000年以上も前から人々の生活に根付いているが、やはり十分にその価値が理解されていない。リンゴは栄養価値から考えても、糖分、ミネラル、ビタミン、そして植物性の水溶性食物繊維である『ペクチン』などをバランスよく含んだ貴重な果物なのだ。

 ここでペクチンという成分について少し触れてみたい。ペクチンとは細胞壁や中葉に含まれる複合多糖類で、消化酵素では分解されないため食物繊維として機能する。そのため便秘解消、血糖値の上昇を抑制する効果のほかにも、成長整腸作用、インスリンの抑制、コレステロール低下作用もある。リンゴをはじめとするフルーツや野菜には、このようなペクチンや食物繊維が多く含まれている。このような成分は胃腸機能を助長するなど、健康維持のためのメリットが多く考えられる。

『スポーツ選手の天敵・脂肪分』

 スポーツ選手にとっての天敵の一つに『脂肪分』がある。この脂肪分についてだが、大きく分けて①飽和脂肪酸、②不飽和脂肪酸がある。このような基礎知識は、スポーツに拘わらずに理解しておきたい。まずは飽和脂肪酸だが、スポーツ選手に限らず人体へのデメリットがとても大きい。この飽和脂肪酸は体内で消化することが困難なため、脂肪として体内に残りやすい傾向にある。菓子、肉、揚物、マヨネーズ、ソース類など、日常の食卓にも頻繁に見かける食べ物が多い。『おいしい、食べたい』という安易な考えから、何気なく消費してしまう。このような手頃な食品から、飽和脂肪酸の蓄積は引き起こされる。

 一方で健康に有益とされる不飽和脂肪酸だが、魚、オリーブオイル、ゴマ油などに多く含まれている。その人体への有効性については、様々な効用が証明されている。オリーブオイルだが、心臓病の予防効果など以外にも、主成分であるオレイン酸が、腸を刺激して排便を促す効果があると考えられる。その他にも不飽和脂肪酸には、動脈硬化の予防、高血圧の予防、アレルギーの改善、心筋梗塞の予防、視力改善、記憶力向上など、適量ならば人体に好ましい効能が幅広くある。そして不飽和脂肪酸は体内に蓄積されにくいことから、体重管理という観点からもスポーツ選手に適している。

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『水分の過剰摂取と“水太り”』

 選手の体重管理についてだが、水分を過剰にとることについて考察したい。多くのスポーツ選手は、水分と水を区別できないかも知れない。そもそも『水』には熱量がない。そのため科学的にも水分(水)が脂肪分に変化することは不可能である。また水分は体内外での循環が激しいため、常に体外に排泄されていく。そのためスポーツ選手にとって、水による水太りという現象は考えにくい。スポーツドリンクなどを飲みすぎることは、水分に加えて糖分などを大量に摂取する結果を招いてしまう。

 体に必要な水分補給を怠れば、便秘の原因、熱中症、脱水症状、血管の病気を引き起こす可能性もでる。水による水分補給によって体重が一時的に増加しても、代謝機能が正常であれば、摂取した水分は体外に排出される。運動をしなくても、一日に2リットルの水を補給することが望ましい。また一日に8~10杯ほどのコップに分けて、食事前などに常温で水を飲むことも、代謝の促進や老廃物の除去などに効果的だ。正しい水分補給は、体調、体重の管理にも重要な役割を果たす。また水質についてだが、市販のミネラル水でも、水道水でも大きく変化することはない。

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『お茶という有益な飲み物』

 水を飲む習慣のない選手にとって、毎日の水分補給は管理の難しいポイントとなる。ジュース、炭酸飲料、エナジードリンク、または糖分を含むソフトドリンクなどを飲む場合、カロリーや添加物などの含有成分には十分注意したい。例えば1リットルのソフトドリンクには、平均して大さじ約20杯分の砂糖が含まれる計算だ。多量の糖分摂取は、人体機能にも有害となるため、『食卓のタバコ』とも表現される。普段の食生活から何を飲むかという問題は、体重管理、健康管理においても重要だ。

 スポーツ選手にとって最も有益なドリンクとは何かを考えよう。『お茶』という素晴らしい飲み物を、日本文化は誇っている。体重管理の観点からも、無糖のお茶ほど体重管理に有効な飲料はない。種類にもよるが、お茶には消化を助長する働き、神経をリラックスさせる効果、排尿を促す効果、またその他の薬用効果も期待できる。また大切なのは、お茶は無糖であれば熱量(カロリー)がゼロであることだ。上手にお茶や水を飲み分けることは、スポーツ選手の体調管理を簡単にする。また特定のお茶(ウーロン茶など)を飲むことで、糖分、塩分の過剰摂取も間接的にだが緩和できる。

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『アルコールや赤ワインについて』

 スポーツ選手にとってアルコールとは禁じられるべきか?ここでは、アルコールが身体に加える危害について見直そう。一般的にアルコール飲料は、『百害あって一利なし』という表現がふさわしい。生活習慣という観点からも、アルコールは控える生活を送りたい。読者の皆様も、ジン・トニックというアルコール飲料をご存知だろうか?ジン・トニックには、一杯450キロカロリーの熱量が含まれている。これは一杯でマクドナルドのハンバーガー1個に相当する熱量だ。まずは高カロリーの飲料として、アルコール消費には十分気を付けたい。

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 また事実として、ポリフェノールを含む赤ワインのように、健康に有益となるアルコール類もある。赤ワインは抗酸化作用もあり、心臓を守る、学習能力の向上、脂肪燃焼の助長などにも効果があると、欧米の多くの研究が論じている。適量ならば、赤ワインなど有益なアルコールも存在することは覚えておこう。