「女子サッカー」「男女バスケット」 「男女ハンドボール」「男子水球」「カタールのスポーツ大臣」
●女子サッカー:U-19欧州選手権予選、誤審により65秒だけ再試合
4日に行われた女子サッカーU-19欧州選手権予選、イングランド対ノルウェーの一戦で誤審があったとして、その5日後にわずか65秒だけ試合がやり直しになる珍事件が起きた。
事の発端は、同試合でイングランドに与えられたPKにある。1-2でノルウェーにリードを許していたイングランドは96分のロスタイムにPKを獲得。一度は主将のレア・ウィリアムソンがシュートを決めたものの、味方選手が笛の鳴る前にペナルティーエリア内に侵入したと判断したマリヤ・クルテス主審はこのゴールを無効とし、本来ならPKのやり直しを行うところを、逆にノルウェーにFKを与えるジャッジを下した。試合はそのまま2-1でノルウェーの勝利に終わったものの、イングランド・サッカー協会(FA)はこの判定を不服とし欧州サッカー連盟に正式な抗議文を提出。これを受けてUEFAは協議の末、前代未聞となるPKのやり直しを含むロスタイムだけの再試合を行うことを正式に発表した。
新たにカテリーナ・ゾラ主審のもと9日に行われた65秒の再試合では、レア・ウィリアムソンが仕切り直しのPKを成功させ2-2の引き分けで5日間におよんだ一戦はようやく幕を閉じた。とは言え、この時点ではすでにグループリーグの全試合が終了しており、再試合の結果にかかわらずイングランドとノルウェーの欧州選手権本戦への出場は決まっていた。
これとよく似た事件は、ワールドカップ・ドイツ大会に向けたアジア最終予選でも起こっている。最終予選の各グループで3位になったウズベキスタンとバーレーンが大陸間プレーオフの出場権をかけて対戦した。9月3日に行われたファーストレグにて、1-0でリードしていたホームのウズベキスタンが39分にPKを獲得。一度はこれを成功させるものの、この試合を担当した吉田寿光主審は笛の前にウズベキスタンの選手がペナルティーエリアに入ったとしてこのPKを無効にし、代わってバーレーンにFKが与えた。試合はこのまま1-0でウズベキスタンが勝利したものの、同国サッカー協会は試合後に、「3-0の認定勝ちとすべき」とFIFA(国際サッカー連盟)に抗議文を提出。これに対しFIFAは、ウズベキスタンの要求は退けたものの10月8日に再試合とすることを決定した。この再試合を1-1で引き分けてしまったウズベキスタンは、さらにアウェーでのセカンドレグを0-0で引き分けたために、バーレーンに5位の座を明け渡す皮肉な結果となってしまった。
●男子バスケット:ユーロリーグトップ、準々決勝進出の8チームが決定
男子バスケットのユーロリーグはトップ16ラウンドの最終節が行われ、グループEではレアル・マドリード(スペイン)、バルセロナ(スペイン)、マッカビ・エレクトラ(イスラエル)、パナシナイコス(ギリシャ)が、グループFではCSKAモスクワ(ロシア)、フェネルバフチェ(トルコ)、オリンピアコス(ギリシャ)、エフェス・ピルゼン(トルコ)がベスト8進出を決めた。上位チームがすでに勝ち抜けを決めている中で迎えた最終節では、準々決勝への最終枠となる各グループ4位決定戦に注目が集まった。
グループEでは、マッカビ・エレクトラがアルバ・ベルリン(ドイツ)にアウェーで73-64で勝利し、レアル・マドリードとバルセロナに次ぐ3位を確保したことで、5位のアルバ・ベルリンは4位のパナシナイコスの結果に関係なくベスト16敗退が決定した。なおそのパナシナイコスは、アウェーでレッドスター(セルビア)に68-69の一点差で敗れはしたものの、結局順位に変動はなく4位でベスト8進出を獲得した。
また6勝7敗で並ぶエフェス・ピルゼンとサスキ・バスコニア(スペイン)がベスト8進出の可能性を残して最終節を迎えたグループFでは、エフェス・ピルゼン対フェネルバフチェ(トルコ)の試合が時差の関係で一足先にスタートする。直接対決での得失点差で上回るエフェス・ピルゼンは、勝てば後に控えているサスキ・バスコニアの結果に関係なくベスト8進出が決まる有利な状況だったものの、72-83でフェネルバフチェに敗れ、ライバルにチャンスを与えてしまう。これに勢い付いたサスキ・バスコニアは、国内リーグで首位に立つCBマラガ(スペイン)に対し中盤まで互角の展開を続けるものの、徐々にリードを許し最後は84-93で力尽き、ベスト8最後の一枠をエフェス・ピルゼンへ手渡す結果となった。
ベスト8の組み合わせは右記のとおり。
<ジャルギリスの2選手がマイクロカメラ内臓のシャツを着てプレー>
10日のレアル・マドリード(スペイン)対ジャルギリス(リトアニア)戦において、ジャルギリスの2選手(ロベスタス・ヤヴトカスとエドガラス・ウラノバス)が胸にマイクロチップの付いたシャツを着てプレーする初の試みが行われた。審判への試用はすでに前例があるものの、ユーロリーグで選手に使用されたのは今回が初めてで、これによりコートに立つ選手の視点から試合を見ることが可能となった。
ファースト・ビジョンと呼ばれるこの小型カメラは、映像を瞬時に接続のコンピューターに伝送し面白いシーンをライブ感覚で再生できるだけでなく、背中に取り付けられたセンサーによって選手の心拍数も同時にチェックできるという機能も兼ね備えている。
サッカーにおいても、昨年10月にスペイン一部に所属するコルドバの選手によって練習試合で初めて試用されている。また映像だけでなく声の録音も可能となっている。
●男子ハンドボール:欧州CLベスト8、ハンガリー勢の健闘が光る
男子ハンドボールの欧州チャンピオンズリーグはベスト8のファーストレグが行われ、バルセロナ(スペイン)がザグレブ(クロアチア)に25-23で勝利を収める一方、昨年準優勝のTHWキールはゼゲド(ハンガリー)に31-29で競り負けた。
1996年から99年にかけて3年連続で決勝に進むなど、90年代を代表する2チームとして欧州CLの歴史に名を残したバルセロナとザグレブの対決が久々に実現した。グループリーグでは堅守を軸に強豪キールやPSGから白星をあげるなど、ここまでホームで無敗をキープしていたザグレブだが、欧州屈指の攻撃力を誇るバルセロナを前に序盤から厳しい戦いをしいられる。カラバティッチやシグルソンを中心にゴールを重ね14-10で前半を折り返したバルセロナは、会場を埋め尽くした15000人の観衆に後押しされたザグレブの反撃に残り1分で1点差まで詰め寄られるものの、何とか25-23で逃げ切り、アウェーの地で値千金の勝利を手にした。
一方、優勝した昨シーズンのEHFカップ準決勝でフクセ・ベルリン、今シーズンのCLベスト16でもライン=ネッカーを退けるなど、ドイツ勢に滅法強いゼゲドは、現在ブンデスリーガで首位に立つキールに対しても相性の良さを見せつける。守備ではGKシエラのファインセーブ、攻撃ではボンバッチの活躍などでキールに31-29で勝利し、ベスト16の4試合のうちホームで勝利をおさめた唯一のチームとなった。その他、PSG(フランス)対ウェスプレム(ハンガリー)は24-24の同点、バルダール(マケドニア)はホームでキェルツェ(ポーランド)に20-22で敗れている。
<トルコのスポーツ界で暴力事件が続発 今度はハンドボールのクラブが被害>
トルコのスポーツ界で暴力事件が続発している。まずサッカーでは4日、リゼスポルとの試合後、飛行機に乗るためトラブゾンへ移動していたフェネルバフチェのバスが何者かによって狙撃され、運転手が負傷するショッキングな事件が起きた。この事態を重く見たトルコサッカー協会は、次節の全試合を中止にすることを決定。そしてそれからわずか5日後、今度は男子ハンドボールでもアウェー戦のため同国南部メルシンを訪れていたベシクタシュのバスに無数の銃弾が打ち込まれた。けが人は出なかったものの、同クラブのムフィト・アリン監督は「バスのガラスに多くの銃痕が残っていた」と、不安をあらわにしていた。
イスタンブールには、サッカー、ハンドボール、バスケットなど様々なスポーツにおいて強豪クラブがひしめき合っており、特にガラタサライ、フェネルバフチェ、ベシクタシュのライバル関係の過激さはこれまでにもしばしは問題視されてきた。とは言え、この2件の襲撃事件とクラブのライバル関係を結びつける証拠はでておらず、真相は未だ明らかになっていない。
●女子ハンドボール:CLベスト8、3連覇を目指すジェールが敗退
女子ハンドボールの欧州チャンピオンズリーグはベスト8のセカンドレグが行われ、昨シーズン準優勝のブドゥチノスト(モンテネグロ)、ラルヴィク(ノルウェー)、ディナモ・シナラ(ロシア)、昨シーズンの王者ジェール(ハンガリー)を下したバルダール(マケドニア)の4チームが5月9・10日にハンガリーのブダペストで行われるファイナル4へ駒を進めた。
バルダールとのファーストレグを落としているジェールは、ホームでの戦いとなったセカンドレグでの逆転を狙うものの27-27の同点に持ち込むのが精一杯で、2試合の合計スコアを45-51とし、自国開催されるファイナル4で3連覇を達成する夢は惜しくも砕け散った。またラルヴィク(ノルウェー)はチューリンゲン(ドイツ)とのセカンドレグも36-18で快勝し、ファイナル4へ進出すると共にCLでの連勝記録を18まで伸ばした。
●女子バスケット:ユーロリーグ、エカテリンブルグを下したUSKプラハが初優勝
女子バスケットのユーロリーグは、ファイナル4がチェコのプラハで行われ、地元のUSKプラハが一昨年の覇者エカテリンブルグ(ロシア)を72-68で下し、悲願の初優勝を飾った。
10日に行われた準決勝の1試合目では、ディナモ・クルクスとエカテリンブルグのロシア勢が対決。実力で上回るエカテリンブルグは第1クォーターで早くも26-13と13点差をつけると、続く第2Qでも46-22とさらにリードを広げる。終盤にディナモ・クルクスの反撃で点差は多少縮まったものの、81-70でエカテリンブルグが危なげなく決勝に駒を進めた。そして2試合目では、地元のUSKプラハが昨シーズン準優勝のフェネルバフチェと対戦。準々決勝で昨シーズンの覇者ガラタサライを倒し波に乗るフェネルバフチェを前に、初のファイナル4入りを果たしたUSKプラハが意地をみせる。27-28の1点ビハインドで迎えた第3Q、ガードのライア・パラウの活躍などで45-42と逆転に成功したUSKプラハは、疲れの見えるフェネルバフチェを横目に着実に追加点を重ね、終わってみれば62-49の大差でフェネルバフチェを退け初優勝に大手をかけた。
決勝では、優勝を経験している強豪ゆえの重圧からかエカテリンブルグの動きが普段以上に硬く、地元の声援を受けのびのびとプレーするUSKプラハに序盤から押し込まれる。第1Qで5点のリード(17-12)を奪ったUSKプラハは、第2Qでもエカテリンブルグに付け入る隙を与えない。ダニエレ・ロビンソンなどの活躍から一時は12点差まで引き離した第3Qを経て、50-40で第4Qを迎える。終盤にきてようやくエンジンのかかりだしたエカテリンブルグは、連続6ポイントを奪うなど反撃に転じるものの残された時間はあまりにも少なく、最後はUSKプラハが72-68で押し切った。
●男子水球:欧州CL、昨シーズン決勝の再現はバルセロネータに軍配
男子水球の欧州チャンピオンズリーグはグループラウンドの第8節が行われ、グループAでは昨シーズンに決勝まで進んだアスレチック・バルセロネータ(スペイン)とラドニチュキ(セルビア)が対戦した。
ファイナル6(決勝トーナメント)に進める上位3チームの最後の枠をかけて現在熾烈な戦いを繰り広げる両チームの直接対決とあって序盤から白熱した展開となる。一時は5-2とラドニッチが3点のリードを奪うものの、バルセロネータもホームの意地を見せ7-7の同点で最終ピリオドを迎えると、残り1分で2ゴールを奪い9-7でラドニッチを下した。これにより、バルセロネータは勝ち点を11に伸ばし、勝ち点9のラドニッチを抜いて3位に浮上し、ファイナル6進出に向け大きく前進した。また、プロ・レッコ(イタリア)が8戦全勝の勝ち点24で首位に付け、それを11ポイント差でZFエゲル(ハンガリー)が追う展開となっている。2位エゲルと3位バルセロネータの差は2ポイントに縮まっており、残り2節の結果次第では上位の順位が変わる可能性を残している一方で、4位に転落したラドニッチは最終節に首位のプロ・レッコとの対戦を残しているなどファイナル6に向けて厳しい状況に追い込まれた。
グループBでは、3位のユグ・ドブロブニク(クロアチア)と4位のパルチザン(セルビア)の勝ち点がすでに10ポイント離れており、すでに上位3チームのファイナル6進出は決定している。なお、ソルノク(ハンガリー)が勝ち点21で首位に立ち、プリモリェ・リエカ(クロアチア)が勝ち点18で2位、ユグ・ドブロブニク(クロアチア)が勝ち点16で3位に付けている。
●カタールのスポーツ大臣がスペインの協会をスポーツ視察
男子ハンドボールにおいて昨年のアジア大会で初優勝、そして開催国として参加した今年の世界選手権でも準優勝を果たすなど着実に力をつけてきているカタールは、ロードレース世界選手権やゴルフのカタールマスターズの開催をはじめ、男子サッカーでも2014年のU-19アジア選手権で初優勝、2022年のワールドカップでも開催地に選ばれるなど、ここ近年様々なスポーツで国際的な注目を集めている。
そのカタールにおいてスポーツ大臣を務めるアル・アリ氏が8日、スペインのスポーツ事情を調査すべくマドリードに降り立った。文化大臣、およびスポーツ庁の責任者に迎えられたアル・アリ氏は、まずスペイン政府によって運営されているトップアスリート養成施設、そして同敷地内にある専用の宿舎を視察すると同時に、実際に重量挙げ、テコンドー、体操チームなどの練習も見学。そして、サッカー、バスケット、ハンドボール以外にも、スペインが国際大会で好成績をおさめているバドミントンやトライアスロンなどの各協会の活動についても非常に興味を示していた。今回の訪問にあたり、「これまで色々な国でスポーツに関する国際会議に出席してきた。ここでたくさんのことを学び、豊富なアイデアを持ってカタールに戻りたい」と述べたアル・アリ氏は今後、バルセロナにあるトップアスリート養成施設にも足を運ぶ予定となっている。
海外の協会やスポーツ組織を積極的に訪問し、そこでの経験や知識を自国のスポーツ強化にいかそうと努力を続けるカタールが、ハンドボール以外のスポーツでもアジアの枠を超え、世界のトップレベルと肩を並べる日もそれほど遠くないかもしれない。
●男子バスケット:全米を熱狂させるNCAAが終了
第77回目となる全米大学体育協会男子バスケットボールトーナメント(NCAA)のファイナルがルーカス・オイル・スタジアム(インディアナポリス)で6日に行われ、ウィスコンシン大学を68-63で下したデューク大学が2010年に続き5度目の優勝を果たした。
毎年3月中旬から4月上旬にかけて行われるNCAAは、別名『マーチ・マッドネス(3月の熱狂)』と呼ばれ、全米を虜にする大会として注目を集めている。その熱狂振りたるや驚くべきもので、米国のビジネス雑誌『フォーチュン』によれば、NCAA開催期間中は勤務時間内にもかかわらずインターネットでこっそりと試合を見る人、または有給休暇を使う人、さらには仮病で欠勤する人の割合が急増し、その数はおよそ全米で6000万人にも達すると言われている。そして、これが原因で国内企業の生産性は著しく低下し、わずか4週間で19億ドル(約2280億円)の損害をこうむる計算になるという。
しかしその一方で、全米を巻き込む盛り上がりを見せ、常に高い視聴率を誇るNCAAは多くの企業にとって魅力的なプロモーションの場となっていることも紛れもない事実だ。30秒のコマーシャルに約150万ドル(約1億8000万円)の費用がかかるなど、『マーチ・マッドネス』には11億ドル(約1300億円)以上の広告費が動き、これはNFLのプレーオフに次ぐ数字(約12億ドル≒約1440億円)となっている。そしてその効果の高さも証明済みで、リサーチ会社『カンタル・メディア』は、大会期間中のコマーシャルで宣伝された商品を視聴者が購入する確率は8%アップする調査結果を発表している。
また、ブックメーカーにとっても『マーチ・マッドネス』はおいしい賭けの対象となっており、プレーオフでの利用者数はスーパーボウル(NFL)の2倍以上で、約82億ドル(約1兆円)もの金額が取引されると言われている。