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2014-7-3

『タレント“才能”というコンセプトの考察』

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 タレント“才能”・・・ボールスポーツに限らずどの世界でも、選手のタレントを評価したりする。しかしこの“タレント”という言葉は一体何を意味しているのか?ボールスポーツに関係する指導者は、選手の特徴や長所を分析できないまま、安易にこの言葉を用いて選手の優劣を判断していないだろうか?今回のコラムでは、日本でもよく耳にする、この“タレント”の定義について考えてみよう。

『タレント』 それは 『イメージングスピード』

 誰もが世界最高のサッカー選手と評価する、アルゼンチン代表FWリオネル・メッシー氏の存在をご存知だろう。彼がサッカー選手として持つタレントは、その他の無数といるスター選手と比べて何が異なるのか?

 事実メッシ選手の技術、体力、持久力を兼ね備えた選手は世界中には無数と存在すると考えられている。しかしメッシ選手は絶対的なタレント、何かの才能を備えている。彼を絶対的な“世界一の存在”と神格化するタレントとは何だろうか?

 メッシ選手を知る指導者や関係者の口からよく、『イメージングスピード』という言葉が聞かれる。才能を開花させる大切なポイントの中に、このイメージングスピードという概念がある。メッシ選手は他の選手では絶対に追いつけないイメージングスピード(思考回路)を持っている。つまりメッシ選手は、相手守備よりもずっと速いイメージスピードで次のアクションを神経に伝達している。守備DFが想像・予測するよりも、ずっと速くメッシの攻撃アクションのイメージは完成している。メッシの究極のタレントとは、その素早いイメージング能力にあるかも知れない。

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 多くの場合、イメージング能力とは決断能力の一種と考慮される。敵対条件の中で、知覚情報に基づいて、どの決断を行なうかというイメージを意味している。しかしメッシ選手の場合は、知覚能力という切り口ではなく、より直感的なイマジネーションから映像的に伝達される『決断』を指していると考えられる。

<イメージングトレーニングについての注釈>

 筆者が所属するサンティアゴフットサルでも、心理ドクターによるイメージングトレーニングを導入している。トップレベルの選手が、激しいゲームプレッシャーの中にある短い時間内で結果を残すためのトレーニングの一種だ。

『タレント』それは『キャラクター』

 次はバスケット界で大きな旋風を巻き起こした元レイカーズ監督のフィル・ジャクソン氏を参考にしてみよう。同監督が指摘するには、タレントの優劣を決定付ける要素は“キャラクター”とある。この場合のキャラクターとは、個性や適正を意味している。つまり技術的な才能だけではなく、環境や適正を作り上げるための“人格”という意味がタレントには含まれている。確かにどの世界でも、才能がなければ競争環境で戦うことは不可能だ。しかし才能だけでは最後のトップレベルには辿り着けない。

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 強い『志』を備えたキャラクターがなければ、競争環境に向き合う生活環境を作り出せない。つまり競技に対しての適正が整わない。表現を変えれば、キャラクターがないと才能を活かせない。そのためフィル・ジャクソン氏は、このキャラクターを才能よりも大切な要素として定義している。スポーツ界には技術的な才能を天から授かった人材が無数と存在する。しかしこの“キャラクター”の欠如のために、挫折して成功しないままに終わる選手の方が圧倒的に多いのだ。才能を十分に発揮して助長するには、それ相応のキャラクターが必要不可欠だ。そのような理由からも、スポーツ環境においても、家族環境、精神的ケアといった項目を軽視することはできない。

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<キャラクター欠如の代表例>

◆適切な環境が整わない

◆謙虚さに欠けている

◆自己反省ができない

◆自立心が足りない

◆努力を怠る性格

◆自己犠牲の心がない

『タレント』 それは 『指導者が引き出す個性』

“優秀な指導者は、選手のキャラクターを把握して才能を引き出す”

 指導者には、選手それぞれのキャラクターを理解しながら、その才能を発揮させる努力を行なう義務がある。指導者が選手の才能を可能な限り引き出したい場合、やはり選手個別に異なる対応を行なうことが理想となる。選手による区別化を実践すれば、様々な問題に直面することが予想される。優秀な指導者には、この『選手に対する区別化の有効性』をグループに対して説得する才能が求められる。なぜ特定の選手に対してある待遇を行ない、なぜその行為がグループ全体にも有益な結果をもたらすのか・・・また選手が求めているものを与えるのではなく、選手が必要としているものを見極めてサポートすることが正しい区別化でもある。また試合前の緊張感などを適切にコントロールするためにも、選手個別のキャラクターを十分理解することが望ましい。その代表例として高い評価を受けているのが、ペップ・グアルディオラ元バルセロナ監督だ。

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『タレント』 それは 『アイデンティティー』

 私達のボールスポーツは集団競技だ。それぞれのスポーツグループには、異なるアイデンティティーが存在する。選手とクラブの哲学やアイデンティティーが異なっては、選手は十分に個性や実力を発揮できない。選手や監督は、チームの哲学に従って行動することが求められる。指導者の一貫した姿勢の大切なポイントでもある。また“指導者の色に選手達が染まる”という、スポーツの集団心理についても注意しておきたい。

 クラブのアイデンティティー、指導者の哲学、選手の価値観・・・その全ての間にコミュニケーションは欠かせない。アイデンティティーを統一することで、チーム内での自分の役割を選手はより明確に理解することができる。そのため指導者は日頃から、クラブの哲学を選手に伝えることを忘れてはならない。幼少年代、育成年代からクラブのエンブレム(紋章)の意味を伝える義務がある。クラブと選手の間のアイデンティティーに亀裂が起こると、タレントを発揮することは至って困難となる。サッカーではFCバルセロナで大活躍をみせるリオネル・メッシ選手が、母国アルゼンチンの代表では思うように活躍できない事実がその典型的な例に挙げられる。

『タレント』 それは 『逆境やプレッシャーを乗り越える力』

 スポーツ選手は遅かれ早かれ、多くの逆境やプレッシャーに直面することになる。学問、家庭、金銭、社会、人間関係、メンタル・・・そこには様々な問題が考えられる。人生には苦難がつきものだ。今回のコラムでは、選手が“逆境”と向かい合う3レベルの対処方法を簡単に紹介する。いずれにしろ、プレッシャーを乗り越えなければ才能を発揮することは不可能だ。そして逆境に打ち勝てないタレントを“真のタレント”と表現することはできない。

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◆“逆境”と向かい合う3種類の対処方法

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 一般的に私達がある問題に直面した場合、以下の3種類のリアクションを取ることが想定される。①問題逃避、②問題解決、③問題承諾、である。

①問題逃避・・・

 目の前の問題と向かい合わずに、見過ごしたり、先送りにすること。解決に向けてのアプローチが存在しない。そのため問題は日増しに大きくなってしまう傾向にある。このようなネガティブな姿勢では、遅かれ早かれ厳しい困難に直面する。逃げ出す姿勢は、その場しのぎであり、必ず大きな代償を支払うことになる。

②問題解決・・・

 ここには問題をコントロールしようとする意図がある。トラブルから精神的影響を受けないように、解決を試みながらもコントロールすることを模索する。トラブルに対して論理的にアプローチを行なえば、問題の根本的な解決も望めるだろう。一般的にはこの『問題解決』を試みるリアクションがポジティブな方法論と考えられる。

③問題承諾・・・

 このリアクションは、つまり完全に問題を受け入れる姿勢を指している。あらゆる問題を自分が置かれた競争環境や現実の“一部分”として、完全に受け入れる姿勢であり、精神的に成熟していることが必要不可欠だ。選手がもしも問題承諾をマスターすれば、トラブルから精神的に左右されたり影響を受けたりしなくなる。あたかも問題が存在しないかのような、強い安定性にたどり着くことも可能とされる。

『タレント』 それは 『覚悟と一貫性』

 誰にでも隠れた才能があったり、また才能を失ってしまうこともある。まずは何事に取り組むにも、我慢強くある必要がある。そして何よりも、①自分の真のモチベーション、②現実的な真の目標設定、③自分が犠牲とする代償・・・について覚悟と一貫性を持つことだ。

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 選手はタレントの有無などを考える以前に、まずは自分に対して一貫性を持って生活しているかを考えるべきだ。もしも一般の競争レベルにたどり着きたいならば、ストイックな姿勢とある程度の努力でも到達可能だろう。しかしエリートを目指すならば、大きな覚悟とそれなりの自己投資が求められる。そして仮に頂点まで登り詰める覚悟があるならば、日常生活の生き方から全てを根本的に変化させることが必須条件となる。タレントの有無や他人に責任を問うより前に、生き方を変えなければ、あらゆる可能性を広げることは難しいだろう。