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2015-3-9

スポーツ組織運営のための10カ条

 ボールスポーツに限らず、スポーツ組織の経営や設立を目指す、または同様の経験を持つ方も少なくはないだろう。スポーツクラブ、協会などの組織を築くには、どのようなノウハウが必要となるか?今回のコラムでは、スペイン・リオハ州による調査研究を参考に考えてみたい。健全な組織の経営に必要不可欠となる約束事を、10カ条に分けて整理してみたい。

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『スポーツ組織運営のための10カ条』
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1)組織理念をしっかりと提示する。スポーツ組織は会社組織や学校法人と同様に、組織運営化されることが前提となる。第一に自分達の存在の目的や意味を理解することが大切だ。例えばクラブのようなスポーツ組織とは、一つの共有物と考えたい。共有物であり組織であるため、非営利目的のコンセプトを基盤としてその理念が成立する。まずはスポーツ組織の立ち上げにあたり、哲学、方針、理念をしっかりと提示する。

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2)組織の安定性を保証する。クラブの理念や方針が決定すれば、次は組織の安定性を確保する。スポーツ活動に従事する場合、各方面での安定性を保証するとはどのような意味か?この場合の安定性とは、選手の医療保険、基本費用の支払い、指導者、練習環境、人材の確保などを指している。また個人データやその他の情報保護プロセスも含め、スポーツ組織の安定化が図られる。

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3)クラブ登記、選手登録などの義務を果たす。スポーツクラブや協会として機能するためには、各登記、選手登録、報告などの義務を怠ってはならない。各種の手続きに必要となる登録、会計記録、収入報告、出費管理、その他の記録などにも万全の管理を行なう。登録などの義務は、組織の安定性と密接して欠かせない義務だ。

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4)スポーツ組織運営のために、経済計画の決定が必要となる。あらゆる団体活動と同様に、スポーツ組織にも経済的な計画性が求められる。具体的には、指導者やマネージャーに必要となるコストを計画するなどである。あた試合、練習、選手管理の運営に必要となる予算の透明化も重要な課題となる。長いスパンで考えれば、クラブの年間予算、支出計画などのプランを作成することも求められる。そのためには経済状況を定期的に計画管理するための、人材またはシステムが必要となる。

<組織の安定性の中には、活動計画、予算プランなども含まれる>
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5)経済的自立と安定性。スポーツ組織ならば、行政やスポンサーの助けに依存しない自立性も必要不可欠だ。外的資金に頼らずとも、クラブや協会として独立運営できるようなセルフマネージメント体制を築きたい。世界中にある多くのボールスポーツクラブの衰退を見れば一目瞭然だが、補助金やスポンサーに頼ってはクラブの健全かつ長期的な運営は難しい。可能な限り、スポーツクラブや協会は自給自足が実現できるシステムを追求したい。

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6)公的資金などの最善の運用方法を研究する。公的資金、外的サポート、スポンサーなどからの助成サポートを受ける場合、その背景にあるクラブとしての義務なども熟知しておきたい。また補助金などの運用方法を研究し、補助資金の透明性や正当性を大切にする。金銭的なサポートを受ける権利には、同時に一連の義務が存在する。あらゆる義務を怠れば、クラブは多大な損をすることになる。

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7)適材適所のポジションと人材の割り当て。スポーツ組織を立ち上げた直後などは、一般的には少人数のリーダー達によって大部分の情報が管理される。初期段階からリーダーを適材適所に割り当てることは、ポジティブなスタートの要因となる。またこのようなキーパーソン達に対しては、適切なサポートを組織的に提供したい。そして必要不可欠となるリーダー達とは、可能な限り契約を結び、団体の財産として大切に共存するように務めたい。スポーツ組織を長期的なビジョンから考えれば、有能なリーダーに投資することは最善の投資とも言えるだろう。

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8)スポーツ組織内部における、情報処理の効率化も重要だ。会計、人材、情報などの内部情報を効率よく管理する。情報管理に強いクラブや組織ならば、情報発信などにも強い。また情報管理に長けていれば、デジタルオフィスの設立や管理などへの発展も期待しやすい。反対に、情報管理のできない組織には大きな発展は求められない。またスポーツ団体が地方行政などと連携を試みる場合も、そのような情報管理能力がキーポイントとなる。

<スポーツ組織の運営にはさまざまな人材との連携が必要となる>
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9)資格や経験を擁する人材を、メンバーとして確保する。また経験豊富なスタッフを各ポジションに配置することで、各団体としての権威を高めることもできる。各競技方面などにおいて資格のある人材を確保すれば、社会的なアピール力や説得力も高まる。名の知れた名誉会長、顧問、アドバイザーなどというポジションにも、そのようなエキストラ効果が期待できる。

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10)組織メンバー全体による連携を強調する。例えばスポーツクラブの場合、大きく考えたメンバーとは実に多くの範囲まで拡大できる。スポーツクラブならば会長、役員、コーチングスタッフ、選手、サポーター、家族、スポンサー、広報などの互いの連携によって成長する。スポーツ組織が一つの大きなファミリーとして機能できるように、クラブ側から積極的にメンバーにもアプローチしたい。