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2012-12-28

ペタンクというボールゲーム

2012/12/28

ヨーロッパの古代文明の名残を引き継ぐ「ペタンク」

 先日インターネットを通して、2014年10月12日から開催される「長崎がんばらんば国体2014」の実施競技などの概要に目を通す機会があった。正式競技の他にも(1)公開競技(2)デモンストレーションスポーツ、が豊富に用意されている。このデモンストレーションスポーツだが、国体開催期間中に子供からお年寄りまでが楽しめる約20種目を競う行事である。この中に“ペタンク”という競技が含まれている。最近注目されているカーリングが“氷上”であれば、このペタンクは“地上”のカーリングと言えば分かりやすいだろう。

 フランスやスペインを訪れた方は、すでにこの“ペタンク”というボールゲームをご覧になったことがあるかも知れない。“ペタンク”とは、フランス語で「両足をそろえて」という意味である。お年寄りの方々が公園の脇に用意された四角形の小さなグラウンドに集まり、談笑しながら、鉄のボールを輪投げのように何かに向かって投げている。ご老人を中心に大人気のペタンクは、発祥の地フランスだけでも競技人口が1500万人以上とも言われており、夏休みや週末になると公園や広場などで多く見られる。

 一見して現代のスポーツとは全く関係がなさそうであるが、ペタンクはボールスポーツの深いルーツを引き継いでいる。そもそも欧州におけるボールスポーツの起源はどこにあるのだろうか。古代のギリシア文明にはコインや石などを投げる“スフェリスティクス”遊びが記録に残されている。この「球形」を意味する石の塊をより遠くまで投げる遊びは、“獲物を捕らえるために物体を投げる”という古くからの狩猟文化を象徴するようなゲームでもあった。そして古代ローマ人はこの“石投げ遊び”に改良を加えて、丸く削られた石などを、できるだけターゲットの近くに投げるゲームを生み出した。これをローマ文明の人々が欧州の各地に広めたとされている。やがて石の球が木になり、「ボウル」という名称のもと大衆の間で広がりをみせるようになった。

 “ペタンク”はまさにこの“ボウル”の概念を現在までそのまま引き継いでいる。この他にも「プロヴァンサル」、「ラッファ」、「ローンボール」なども同じ流れを引き継いだ競技として考えられており、ヨーロッパの各地で今でも楽しまれている。大きく定義すれば、日本にも大衆ゲームとして導入されたボーリングもそのファミリーと呼べるだろう。このようなボールゲームは、日本ではチェスや射撃のように“マインドスポーツ”と分類される傾向にあるようだ。今回は今でも南欧のご老人に大人気の“ペタンク”というゲームを簡単にではあるが紹介してみる。


「ペタンクの概要」

 ペタンクはまず“テラン”と呼ばれるコート上に描いたサークルの上に投球者は立ち、木製のビュット(ターゲットボール)に金属製のブール(ボール)を投げ合いゲームは進行する。このブールは直径7〜8センチ、重さ600〜800グラムである。目的は味方が投げるブールをよりビュットに近づけることで得点を競うスポーツである。ブールをぶつけて相手のブールを動かすことができる点など、15世紀にスコットランドで生まれたとされるカーリング競技にルールや概念が似ている。また有効範囲内に限り、ブールをビュットにぶつけて位置をずらすこともできるため、戦術やチームプレーも楽しめるのも醍醐味の1つだ。


<赤色の小さい球が“ビュット”と呼ばれるターゲット。大きな投球用の球が“ブール”と呼ばれる球>


「参加人数などについて」

ペタンクのゲームにはトリプルス、ダブルス、シングルスの3形式がある。

*テ・タ・テット/シングルスは1対1で行ない、各選手3球のボールを投げる。

*ドウブレッテ/ダブルスは2対2で行ない、各選手3球のボールを投げる。

* トリプレッテ/トリプルスは3対3で行ない、各選手2球のボールを投げる。


「ゲームの進行について」

 第1投目。コイントスやじゃんけんなどによって先攻チームを決める。先攻は投球ポイントのテラン(35cmから50cm)を描き、ビュット(ターゲットボール)を投げる。目標となる“ビュット”が有効範囲内(立ち位置のテランから6m以上10m以下)に落ちれば、先攻は第1投目のブールを投げてゲームを開始する。

 第2投目以降。後攻は先攻が投げたブール(第1投)よりも目標のビュットに近くなるまでボールを投げる。 後攻のブールが先攻のブールよりもビュットに近くなれば、投げ手は先攻に変わる。自分たちの投球ブールが相手のブールよりもビュットに近くならない場合には、持ちブールがなくなるまで投球を続ける。片方の持ちブールが全てなくなった場合、もう片方に持ちブールが残っていればブールを全て投げ終える。先述の通り、ブールをぶつけて相手のブールを動かすこともできれば、ブールをビュットにぶつけて位置をずらすこともゲームの一環である。


<選手はテランと呼ばれる赤い輪からビュットへ向けて投球する>


「得点の集計について」

 双方が持ちブールを全て投げ終えたら、ターン(メーヌと呼ばれる)が終了となりそこで得点を集計する。得点はビュットに一番近いブールを投げたチームが得る。負けた側の、ビュットから一番近いブールより内側にあるブールの個数が勝利チームの点数になる。次のメーヌでは、前ターンで得点を得たチームが先攻となる。前回のビュットの位置を中心に新たなサークルを描き、再びビュットを投げて次のメーヌを開始する。この要領を繰り返し、どちらかのチームが合計で13点を累計した時点でゲーム終了となる。


<一見して簡単に見えるが、かなりの正確な技術、集中力、また戦術が要求される>

 このペタンクであるが、日本でも“ボンボール”という名前で知られた時期もあったようだ。やはり投球ポイントからビュットまでの距離が近く、助走が必要でないために、ペタンクは足腰に問題のある方や高齢者の方にも楽しみやすいスポーツと言えよう。技術を競い勝利をめざす競技スポーツとして、あるいは出会いや交流の場として、体力や年齢によってペタンクの楽しみ方もそれぞれだ。少しのスペースがあれば楽しめる手軽さも、親しみやすい理由の1つで、たったの1投球で形勢を逆転したりする面白さは世界中の人々を楽しませるだろう。


馬場 源徳(ばば もとのり)

 1981年長崎市生まれ。上智大学比較文化学部卒業。アルゼンチン・ベルグラーノ大学南米文学科修了。東京、ブエノスアイレス、バルセロナから台北を経て、現在スペインに拠点を置く。スペイン語・英語・中国語を中心に、翻訳家、通訳としても活動するフリーランスコーディネーター。ボールスポーツを通しての国際交流、青少年教育を中心に研究。異なる文化環境で培った社会経験を活かして、日本と世界の国際交流に貢献することを目標とする。好みの分野はボールスポーツに限らず、紀行文学、国際社会、ITテクノロジーなど。