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2014-4-28

『ネガティブシンキング(否定的な思考)について』

2014/04/28

 


 スポーツに限らず、人生を過ごす上で必ず耳にする”自信”という言葉。アスリートが最高のパフォーマンスを発揮して、最高の結果を導き出すためにも、この”自信”は必要不可欠なエレメントだ。スポーツ選手にとって、この心の底からでてくる”自信”があれば全てが可能になる。つまり選手の”自信”と”パフォーマンス”とは、決して切り離しで考えることはできないものだ。ポジティブなモチベーションと”自信”は密接に関係している。その対照となるのが、”ネガティブシンキング”(否定的な考え方)である。今回のコラムではこのネガティブシンキングとどのように向かい合うかを、心理学的ポイントから考察してみたい。


 

◆”ネガティブシンキング”とは?

 それではこの”ネガティブシンキング”とは、例えばどのような状態だろうか?またこの言葉は、選手のどのような心理を表わしているのだろうか?

◆ネガティブシンキングの代表的例

① 大切な試合を前に、対戦相手について恐怖心を抱く。
② 対戦相手と比較して、自身を過小評価する。
③ 敗戦後のことを考えたり、対戦相手を過剰評価する。

 例えば①恐怖心、②自己謙遜、③過剰評価・・・このような考え方がネガティブシンキングの代表例に挙げることができる。しかしこのようなネガティブ思考は、スポーツ環境で競争したことのある人間ならば、誰もが経験した心理状態のはずだ。つまり”ネガティブシンキング”とは、スポーツ選手にとっては至って正常な心理状態であることにも留意しておきたい。

◆ネガティブシンキングがもたらす悪効果

 それではネガティブシンキング(否定的な思考)がパフォーマンスに及ぼす悪影響を、以下に整理してみたい。モチベーションの低下と密接に関係しているネガティブシンキングだが、精神面でも肉体面でもスポーツパフォーマンスに多大な悪影響を与えることは容易に想像できる。ネガティブシンキングによる、最も危険な影響は、やはり選手の”自信の喪失”である。自信を失うと、人間のモチベーションは著しく低下する。そしてモチベーションがなければ、全ての向上と改善が不可能となってしまう。

 

① 自信(モチベーション)の低下
② 全面的な集中力の著しい低下
③ 他の選手に合わせてプレーしてしまう
④ 自分の特長を出せなくなってしまう
⑤ 課題に対してポジティブに取り組めなくなる
⑥ 緊張して肉体的に固くなってしまう
⑦ プレー中からストレスと悩みに侵される

 

◆ネガティブシンキングとは否定的な存在なのか?

 それでは”ネガティブシンキング”とは、つまり”パフォーマンスの低下”に直結するのだろうか?そもそもネガティブシンキングを経験しない選手が果たして存在するのか?ネガティブシンキングとは完全に否定的な存在なのだろうか?繰り返しになるが、ネガティブシンキングとはスポーツ選手にとっては、実に正常な心理状態であるはずだ。

 選手はたとえネガティブ思考や自分に対する疑問があっても、最大限のパフォーマンスを引き出す術を習得する。経験、習得を通してこのネガティブシンキングをコントロールする方法を覚える。自問自答しながらネガティブシンキングと向かい合うのだ。ここで大切なポイントは、選手は “ネガティブシンキングをどうやって処理するか”である。完全にポジティブな選手など、そう多くは存在しない。マイナスの考え方を上手く処理しながら、選手は平常心を保ちベストパフォーマンスに近づく努力をするのだ。


<常に平常心を保ち、ベストパフォーマンスを向上させる。ジュニア年代からそのメンタル気質は表れる傾向にある>


 



◆ポジティブシンキングを助長する方法について

 まずは以下にネガティブシンキングを効率よく処理するための、ポジティブシンキングの助長方法を考察してみる。

(A)リフレーズする(文章を書き換える)

 否定的な提案や問題を、まずは考え方から再構築する習慣をつける。そのためには、まずは自分が対処できる範囲での目標設定にフォーカスする。スポーツ心理学ではこれを”リフレーズ(文章の書き換え)”と呼んでいる。同じ問題に、異なる視点からアプローチして、よりポジティブに問題を解決しようというコンセプトだ。あらゆる問題に対する視点の変換として、この”リフレーズ(文章を書き換える)”という概念を覚えておきたい。

◆リフレーズ(文章の書き換え)の代表例

“ライバルチームの方が自分達よりもずっと強い”(X)
“最大限のパフォーマンスを引き出し、自信を持って勝負する”(O)
“このライバルを倒すための解決方法とはAまたはBのはずだ”(O)

(B) 可能性を信じる(可能性、問題提起、目標設定)

 常に厳しいトレーニング、またはより難しい試合などを”脅威”として受け取らずに、”チャレンジの一環”として受け止めるスピリットが大切。まずはいかなる問題に対しても、極力ポジティブな姿勢で向き合う。そして現状からの①可能性、②問題提起、③目標設定というプロセスを可能な限り実行に移す。つまり可能性があれば、問題提起ができる。そして具体的な問題が理解できれば、それに沿った目標を設定することができる。そこでアスリートは以下の3つのポイントを自問自答することが必要となる。

『何が可能か?どうすれば実現できる?何処から始める?』

<いかなる挑戦にも、勝利の可能性を信じることが大前提だ>



 

 選手はこの問題処理のプロセスと前向きに取り組むことで、具体的な目標を見つけだすことが可能となる。また具体的な目標を見つけ出すことで、段階的なプラン、そしてモチベーションを抱くことができる。選手が自己超越のサイクルに入るために、このような前向きな姿勢、そしてその根底にある”可能性を信じる”ことが前提となる。

(C) 挫折に対してポジティブに向き合うこと

 人間ならば誰でもスランプ(不調)や挫折を体験するものだ。しかし長い挫折のサイクルであれ、短い挫折のサイクルであれ、必ず”一つのサイクルには終わりが来る”ということを覚えておきたい。これはスポーツ界に限ったことではない。まずは挫折というコンセプトが一時的なものであるということを念頭に置きながら、ポジティブに考えることが大前提だ。

 そしてこの”一時的な挫折”が、必ず将来の成長に自分を導くという確信を持って、日々のトレーニングや取り組みを諦めないことだ。何事でも諦めてしまうと、その瞬間に”真の挫折”となってしまう。スポーツ選手に限らず、私達が人生と日々向き合う中でも、このようなネガティブシンキングの対処方法は有効だろう。よく様々なスポーツの場面で、”メンタルが弱い”、”精神力がない”、”気持ちが弱い”などと選手の欠点を表現されることがある。しかし指導者はそこに科学の目を向けて、選手を手助けするために最も有効なアプローチを模索しなければならない。そのような選手のメンタルにおける問題に対して、今回のコラムから何かのヒントを得ていただければ幸いだ。

 



馬場 源徳(ばば もとのり)

 1981年長崎市生まれ。上智大学比較文化学部卒業。アルゼンチン・ベルグラーノ大学南米文学科修了。東京、ブエノスアイレス、バルセロナから台北を経て、現在スペインに拠点を置く。スペイン1部の名門サンティアゴ・フットサルで活動中。ボールスポーツを通しての国際交流、青少年教育を中心に研究。異なる文化環境で培った社会経験を活かして、日本と世界の国際交流に貢献することを目標とする。