ヨーロッパニュース一覧

2008-7-29

ヨーロッパ・ニュース Vol.47

2008/07/29

男子バレーボール: ワールドリーグファイナルラウンド、アメリカが優勝

ギリシャ、アテネ
セルビアの首都、ベオグラード

 ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで行われていた男子バレーボールのワールドリーグファイナルラウンドは、27日に決勝が行われ、アメリカがセルビアを26-24、23-25、25-23、25-22、セットカウント3-1で破り、同大会初優勝を果たした。これによってアメリカは、過去19年のワールドリーグの歴史で6カ国目の優勝国となった。
 また、3位決定戦ではロシアが3-1で地元ブラジルに勝ち、ブラジルは10年ぶりにメダル獲得を逃した。過去の大会で金7、銀2、銅4を獲得しているブラジルが、地元開催の大会で表彰台を逃したのは大きなサプライズとなった。一方、セルビア、ロシアの欧州勢は銀メダル、銅メダルを獲得し、2週間後に迫った北京オリンピックに向けてはずみをつけた。



 1984年と1988年のオリンピックチャンピオンでもあるアメリカは、決勝のセルビア戦では苦しい戦いを強いられた。セルビアは、両チーム最高の28ポイントを挙げたスーパーエースのイバン・ミルコビッチが次々とスパイクを決めるなど、すべてのセットでアメリカを苦しめたが、アメリカは、ウイリアム・プリディ、クレイトン・スタンレーを中心とした攻撃に加え、効果的なブロックと、彼らが80年代に創り出した組織的なディフェンスシステムでセルビアのパワープレーを上回った。一方、セルビアは決勝では敗れたものの、ファイナルラウンド予選では、決勝で敗れたアメリカをはじめ、ポーランド、ロシアに勝つなど、今最も勢いが感じられるチームだ。ミルコビッチ、ガビッチら若い世代の台頭で、オリンピックでも好成績が期待される。

<ワールドリーグ最終成績>

1.アメリカ 2.セルビア 3.ロシア 4.ブラジル 5.ポーランド 6.日本 7.ブルガリア、中国、イタリア 10.キューバ、フィンランド、フランス 13.エジプト、韓国、スペイン、ベネズエラ

<ファイナルラウンド個人賞>

MVP: リロイ・ボール(アメリカ)

ベストスコアラー: イバン・ミルコビッチ(セルビア)

ベストスパイカー: ダンテ(ブラジル)

ベストブロッカー: マルコ・ポドラスカイン(セルビア)

ベストサーバー : ジバ(ブラジル)

ベストセッター  : リロイ・ボール

ベストリベロ   : リチャード・ランボーン



北京オリンピックプレビュー: ハンドボール

 北京オリンピックがいよいよ来月始まるが、ハンドボールでは、男女ともにヨーロッパ勢がメダルを獲得する可能性が高いといわれる。まず男子がだが、優勝候補の筆頭はやはりワールドチャンピオンのドイツだろう。ハンドボールがオリンピック公式種目になった1936年のベルリン五輪で初代オリンピックチャンピオンとなったドイツは(当時は西ドイツ)、1984年、2004年の大会でも銀メダルを獲得している。
 前回アテネ五輪で金メダルを獲得したクロアチア、フランスもメダルの有力候補だ。また、ブンデスリーガのキールに所属し、2年連続でリーグ年間MVPに選ばれた二コラ・カラバティッチを擁するフランスにもメダルのチャンスはある。今年のヨーロッパ選手権ではフランスが銅メダルを獲得したが、大会トップスコアラーとMVPを受賞したカラバティッチの活躍が大きく貢献しており、オリンピックでも最も注目の選手といえる。
 メダル争いのダークホースは、ヨーロッパ選手権でドイツ、クロアチアを破り、優勝したデンマークだ。この大会、デンマークは準決勝でドイツを26-25で下したが、勝利の立役者となったゴールキーパーのカスパル・イビットに期待がかかる。

 女子は、昨年12月のヨーロッパ選手権決勝で対戦したロシアとノルウエーがメダル争いの有力候補だ。ロシアはこの試合を29-24で制したが、2006年のヨーロッパ選手権決勝では、逆にノルウエーが勝利している。オリンピックではどちらに勝利の女神が微笑むだろうか。



男子ハンドボール: クロアチア代表イバン・クピッチが事故で指を切断、五輪出場は断念

 7月24日、北京五輪に向けて調整中のクロアチア代表の合宿に参加していたイバン・クピッチ(22歳)は、不慮の事故により指を切断する大怪我を負い、オリンピック出場を断念することになった。クピッチは、合宿地のレジェカで柵を乗り越えようとした際、指輪が柵の一部にひっかかり、そのまま指が切断されてしまったという。すぐに救急車で病院に運ばれ接合手術が行われたが、代表チームのドクターは、「この状態で北京五輪出場は不可能」とコメントしている。





ラグビー: ドイツが2010年女子ラグビーワールドカップ開催国に立候補

 ドイツラグビー協会(DRV)は、2010年の女子ラグビーワールドカップ候補地として正式に立候補することを発表した。ドイツの男子ラグビーチームは今季、6カ国対抗勢を除くヨーロッパリーグのトップディビジョンに昇格を決めたばかりとあって、同協会はこれを機に、今後同国でラグビーのプロモーションにより一層力を入れていきたい意向をもっているようだ。ドイツ協会はトーナメントの開催地としては、ハンブルグ、ハノーバー、ハイデルベルグの3都市を考えているようだ。
 国際ラグビー協会(IRB)は、2010年の女子のワールドカップ開催地として、すでに、イングランド、南アフリカ、カザフスタンから立候補申請を受けており、ドイツは8月に正式申請に必要な書類をIRBに提出し、9月の最終決定を待つ。
 DRVのクラウス・ピーター・バッハ会長は、「ドイツではラグビー人気が着実に高まっている。男子のトップディビジョン昇格により、今後ますます発展が見込まれるスポーツとなる。世界的なイベントを開催することで、この国にラグビーを定着させるきっかけにしたい」と語っている。





男子サッカー: オリンピックへの選手派遣で深まる代表とクラブの対立

 オリンピックを2週間前に控えたこの時期、サッカー界では、オリンピックへの選手派遣をめぐって、各国五輪代表チームと、選手たちが所属する欧州ビッグクラブとの間で深刻な対立が起きている。
 北京五輪がはじまる8月中旬、ヨーロッパの各クラブは、リーグ戦、欧州カップ戦など、大事な試合を控えている。世界的なスターを有し、五輪優勝を狙うブラジルやアルゼンチンなどの代表チームは、選手招集にあたり各所属クラブと選手派遣の折衝を行っているが、所属クラブが選手の派遣を拒否するケースが続出。IOC(国際オリンピック委員会)、FIFA(国際サッカー協会)のみならず、各国のサッカー協会をも巻き込む大問題となっている。
 所属クラブにとっては、チームの公式戦に欠くことのできない主力選手を五輪に派遣することは死活問題である。今回ブラジル代表に選出されたジエゴ、ラフィーニャの2選手はドイツのクラブでプレーしているが、それぞれの所属クラブが五輪への派遣を正式に拒否していた。しかし、この決定を不服とした選手本人が五輪出場を決意。クラブの許可を得ないまま、代表合宿に合流してしまった、この行為に対して、所属クラブのブレーメンとシャルケ04は、CAS(スポーツ仲裁裁判所)への提訴を検討している。また、アルゼンチン代表も、主力選手であるメッシの五輪出場を所属クラブのバルセロナが認めず、最終結論はlFIFAの判断にゆだねられることになりそうだ。バルセロナは、オリンピックが行われる期間、欧州チャンピオンズリーグ予備選という大事な試合を戦う予定で、同選手の五輪派遣は絶対に認めたくない事情がある。同クラブは、「オリンピックはFIFAの公式戦ではなく、選手派遣の義務はない」という理由を盾に抵抗している。
 この問題については、各団体で意見が分かれている。サッカー界の最高組織であるFIFAは、会長のブラッター氏のコメントを通じて、「23歳以下の選手については、所属クラブは五輪出場の自由を認める義務がある」という見解を示し、各クラブに通達を送っているが、逆にIOCのジャッケ・ロゲ会長が、「チャンピオンズリーグに出場するチームについては、選手派遣について配慮してもいい」と答えるなど、同問題に関するIOCのスタンスは必ずしも一枚岩ではないようだ。
 また、ドイツサッカー協会、プロリーグ機構、欧州クラブ協会、スペインプロリーグ機構は、クラブの「選手派遣拒否」を全面的に支持しており、クラブに対しCASへの調停申し立てをすすめている。
スター選手を出場させメダル獲得を狙う代表サイドと、これまでFIFA主催の国際大会にしぶしぶ選手の派遣を認めてきたクラブサイドの言い分には大きな隔たりがある。
選手の高い給与を支払っている立場としては、クラブにとって重要な試合を欠場させ、けがのリスクを負ってまで、FIFAの非公式イベントである五輪に選手を派遣することは認めたくない。
一方、招集する国の協会サイドは、オリンピックは国の名誉がかかる世界最大のスポーツイベントであり、ベストプレーヤーを出場させたい。両者の主張は真っ向からぶつかっており、双方の話し合いから解決の糸口は見つかりそうもない。
解決には、FIFAが強制力を行使しクラブを説得するか、CASによる調停を待つしかない。
 国際サッカー連盟(FIFA)のブラッター会長は、「23歳以下の選手については、所属クラブは選手の出場の自由を認める義務がある
 大きな問題となっている。