ヨーロッパ・ニュース Vol.159
2011/11/15
● UEFAフットサル・クラブ杯、最終予選16日開幕へ
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UEFAフットサル・クラブ杯(サッカーのチャンピオンズリーグに相当)の決勝トーナメント出場をかけたエリートラウンド(第3次最終予選)が11月16に開幕する。例年にも増しての混戦が予想されるが、優勝最有力候補には初優勝を狙い、スペインリーグの首位にも立つFCバルセロナなどが挙げられている。
来年4月に行われる本大会、過去の10年間を振り返るとスペイン、ポルトガル、ロシアリーグのチームが優勝する傾向にあった。しかし、ここ数年ではイタリア、東欧、中央アジア勢の台頭も著しい。2010/2011の決勝トーナメントでは、スペイン、ロシア勢が1チ-ムも出場できないという“異例”の事態も起こっており、イタリアのASDモンテシルバーノが優勝を果たしている。
今回の最終予選には、スペインのバルセロナ、ポルトガルの常連のスポルティング・リスボン、昨年の覇者モンテシルバーノ、ロシアの強豪、ディナモ・モスクワなどの16クラブが出揃っている。注目はやはり、2次予選で3戦全勝、得失点差27という圧倒的な実力差を見せつけた、“世界最強”とも称されるFCバルセロナだろう。そして、このスター軍団の野望と勢いを誰が止めるのかにも注目したい。
*エリートラウンド(第3次最終予選)の組み合わせ
グループA
Kairat Almaty (カザフスタン)
KMF Ekonomac Kragujevac (セルビア)
Ch_telineau Futsal (ベルギー)
MFK Dinamo Moskva (ロシア)
グループB
Araz Nax_ivan (アゼルバイジャン)
FC Barcelona (スペイン)
Club Futsal Eindhoven (オランダ)
FK EP Chrudim (チェコ)
グループC
Sporting Clube de Portugal (ポルトガル)
Iberia Star Tbilisi (グルジア)
City’US T_rgu Mure_ (ルーマニア)
Gy_ri ETO FC (ハンガリー)
グループD
ASD Citt_ di Montesilvano C/5 (イタリア/前回優勝)
Marca Futsal (イタリア)
Slov-Matic Bratislava (スロバキア)
Uragan Ivano-Frankovsk (ウクライナ)
<女子バレー、15歳最年少のマルティネス選手>
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4日に日本で開幕した2011年女子バレーワールドカップの大舞台に、若干15歳のダイヤモンドの原石がいる。この将来を期待される選手こそが、ドミニカ共和国代表のブライエリン・エリザベス・マルティネス選手(以下マルティネス)である。
195CMの長身、その長いリーチからも得点力を期待されるマルティネス選手は、今年9月に15歳を迎えたばかりである。同国の代表監督を務めるマルコス監督(ブラジル)、そして代表で主将を務めるカブラル選手も、揃って同選手の将来に太鼓判を押している。
「近い将来、マルティネスは代表の中心選手としても活躍するだろう。今回彼女をワールドカップに連れてきた理由は、ワールドカップという大舞台にいち早く慣れて欲しかったからだ」(マルコス監督)
「彼女は輝くダイヤモンドの原石のよう。努力、才能、向上心、謙虚さも持っているから必ず成功する。近い将来バレーボールの記者達は、そろってマルティネスを賞賛することになる」(カブラル主将)
なお、マルティネスは今年の7月にペルーで行われた第16回女子バレー世界ジュニア選手権でも、得点ランキング4位につける活躍を見せている。今後もこの若い新星の活躍に注目したい。
● 女子サッカーチャンピオンズリーグ、準々決勝進出の8チームが決定。
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女子サッカーの欧州チャンピイオンズリーグは、決勝トーナメント2回戦のセカンドレグが行なわれ、来年の3月に行われる準々決勝進出の顔ぶれが出揃った。
なでしこJAPANの永里優季が所属するドイツのポツダムはスコットランドのグラスゴーシティを敵地で7-0と大差で下し、2試合合計17―0で準々決勝に進んだ。永里はベンチ入りしたが、出番はなかった。また、同じくなでしこの熊谷紗希が所属するフランクフルト(ドイツ)は、アウエーでパリ・サンジェルマンに1―2で破れはしたものの、2戦合計4-2で準々決勝進出を決めた。センターバックの熊谷はフル出場を果たしている。
一方、後藤史が所属するスペインのラジョ・バジェカーノは、強豪アーセナル相手に1戦目を1-1で引き分ける健闘を見せたが、アウエーでの2戦目を1ー5で落とし敗退する結果となった。この試合、後藤は先発して後半15分に交代するまでプレーしている。なお、準々決勝の組み合わせは17日、ニヨン(スイス)で行われる抽選で決定する。
<ベスト8進出が決定したチーム>
マルメ(スウェーデン)
ヨーテボリ(スウェーデン)
ポツダム(ドイツ)
オリンピック・リヨン(フランス)
フランクフルト(ドイツ)
アーセナル(イングランド)
ブレンビー(デンマーク)
ロシヤンカ(ロシア)
● 女子ハンドボ-ル・チャンピオンズリーグ、本大会進出の8チーム出揃う
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女子ハンドボールの欧州チャンピオンズリーグは第6節を終了し、本大会進出の8チームが決定した。
結果は予想通り、8チームのほとんどが東欧、北欧勢となった。しかし、メス(フランス)が得失点差により、そして前回ファイナリストのイチャコ・ナバーラ(スペイン)も決勝トーナメント進出を決めている。なお、準々決勝の組み合わせは15日、ウイーン(オーストリア)での抽選により決定する。
<ベスト8進出が決定したチーム>
グループA
ブドゥクノースト(モンテネグロ)
ミッドユラン(デンマーク)
グループB
ラルビック(ノルウェー)
クリム(スロベニア)
グループC
ジェール(ハンガリー)
メス(フランス)
グループD
オルチム・バルセア(ルーマニア))
イチャコ・ナバーラ(スペイン)
● 男子バスケ、ユーロリーグ第4節
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男子バスケットボールのユーロリーグはレギュラーシーズン第4節が行なわれ、CSKAモスクワ(ロシア)対パナシナイコス(ギリシャ)、そしてバルセロナ(スペイン)対モンテパッシ・シエナ(イタリア)といった有力チームの対決が注目を集めた。なお、CSKAモスクワは78_76という僅差で、バルセロナは92_75でそれぞれ勝利している。
一方、優勝候補の一角であるレアル・マドリー(スペイン)はパルチザン(セルビア)の本拠地で行われた一戦に79_80と僅か1点差で敗れ、まさかの2敗目を喫した。
<ショートコラム・スペインからの声>
今週から数回にわたり、ヨーロッパ・スペイン発のボール競技に関する考察を短いコラム形式で届けさせていただきます。スペイン在住の筆者以外にも、元フットサル日本代表、名古屋オーシャンズで活躍し、スペインで挑戦を続ける鈴木隆二選手(現・スペイン2部マルトレイ所属)の考察などを取り入れていきます。またヨーロッパのバスケットのプロリーグで活躍する現役選手の価値観などを紹介して、読者の皆様に少しでも「日本とヨーロッパの間にある、ボール競技の価値観の差」を感じ取っていただければと願っております。
スペインからの声・第一回「スペインにおける上下関係」
筆者自身は数年前、運よくバルセロナ郊外にあるフットサルのエリートチ-ムで半年ほど実戦に参加させてもらった経験がある。州選抜を率いる優秀な監督が率いるこのチームはアマチュアでは最高峰に近い競技レベルで、今でも地元のメディアからも大きな関心を受けている。メンバーも髪型は全員スポーツカットで、日本の伝統的な野球部の様相を思い出したことを今でも記憶している。
私はそのクラブでの毎日の練習で、とても大切なことに気がついた。日本の野球部のようなストイックな環境、しかし何かが違う。それはスペインという国における「上下関係」であった。私はその先、他のチームに移籍してからも、日本とスペインの「上下関係」の違いを感じる場面が多々あった。
「スペインの監督、選手間の関係は実力主義の“上下関係”。しかし人間関係は優劣のない“左右関係”と表現できる」
まず団体競技であれば、日本では「上下関係」がピッチの外にまで明らかに影響する。よく知られた事実であるが、非常に根強く残る文化である。その先輩、後輩など特別な関係は東アジアでは当たり前ではあるが、西ヨーロッパでは全く異なるフィロソフィーの下でアマチュア選手達は行動している。
スペインでの「上下関係」は年齢やバックグラウンドには関係せず、また練習の度に流動的に変化し、そしてピッチとロッカールームの外にはその関係を持ち込まない、という見えないルールが存在する。
例えば、誰も敬語で話さないし、挨拶ですらあっさりしている。あなたが何歳か、どのチームで以前練習したか、どんな経歴があるかなど誰も聞かない。選手によっては一見して無関心だが、それでも練習が始まると本当に熱心に他人と接する。また、選手によっては練習の前後では優しくても、練習中はとても厳しく他人と接する。完全にピッチの中での上下関係と、ピッチの外での人間関係を割り切っている。
また上下関係に関係なく、スペインの選手達は個人の感情をストレートに表現する。監督が言ったことに納得すれば、絶対に実行する。納得できないならば「SI“イエス”」とは言わずに黙り込むか、反論するだろう。先輩や監督に対してでも、公然と反論することに美徳を感じる選手も少なくない。チームメート同士でも良いプレーには拍手、ダメなプレーには厳しく罵る。もちろん先輩、後輩など関係ない。準備運動やストレッチなども至って自由、好きなようにバラバラで行うチームも少なくない。集合や解散もあっけない。やはり「個」を大切にする文化であり、人間関係の基本は横繋がりなのだ。
しかし、スペインのピッチの中にも確かに「上下関係」が存在する。その関係のベースとなるのが「実力主義」である。毎回の練習、そして試合でのパフォーマンスが、次の練習での選手の立場を変えていく。競技であり団体である以上、この選手間の優劣関係や強弱関係は必ず存在するのである。練習ではチームメートの全てがライバルのように競い合っている。それでも練習が終わると、関係は平等になり、握手して、軽く抱き合って、お互いをねぎらい、肩を叩いて「アディオス!」と陽気に家路につくのである。
日本ではよく耳にする「上下関係」という言葉、この先もじっくりと考察してみたい。
(馬場源徳/スペイン)