ヨーロッパニュース一覧

2011-11-22

ヨーロッパ・ニュース Vol.160

2011/11/22


UEFAフットサル・クラブ杯、ベスト4が出揃う

<“スペイン・フットサルのシンボル”とも呼ばれるハビエル・ロドリゲス主将>

 UEFAフットサル・クラブ杯(サッカーのチャンピオンズリーグに相当)の決勝トーナメント出場をかけたエリートラウンド(第3次最終予選)が11月16日から20日にかけて行われ、準決勝進出を決めた4チームの顔ぶれが出揃った。

 今回のエリートラウンドは、中央アジアや、東欧勢などの新興勢力の台頭が期待され、混戦が予想されていた。しかし、優勝候補とされていたバルセロナ(スペイン)、スポルティング・リスボン(ポルトガル)、ディナモ・モスクワ(ロシア)などが手堅く各グループを1位で突破して、準決勝進出を決めている。

 一方、昨年の覇者モンテシルバーノ(イタリア)は1勝2分けと勝ち点を伸ばせず、連覇の夢が途絶えてしまった。しかし、同じグループからは同国のマルカ(イタリア)がグループを勝ち抜いており、久々に強豪のスペイン、ロシア、ポルトガル、イタリア勢がベスト4を独占する形となった。

 準決勝の顔ぶれに目を通すと、ディナモ・モスクワ(ロシア)はこの最終予選3試合で<16得点、失点5、得失点差+11>という攻撃力が自慢である。また、バルセロナ(スペイン)も同じく3試合で<得点12、失点2、得失点差+10>と安定した戦いを見せている。そして、常連のスポルティング・リスボン(ポルトガル)、マルカ(イタリア)という勝負強さを備えた2チームの戦いも素晴らしい。なお、準決勝は来年4月に開催される。

<EHF(ヨーロッパ・ハンドボール協会)20周年記念>

<EHF(ヨーロッパ・ハンドボール協会)20周年記念式典、欧州の各国ハンドボール協会理事長や関係者などが集まって行われた>

 今週、1991年にドイツのベルリンで創立されたEHF(ヨーロッパ・ハンドボール協会)が創立20周年を迎えた。「心を打つハンドボール」と名づけられたこの20周年記念式典はオーストリアのウィーンで行われた。

<EHF(ヨーロッパ・ハンドボール協会)20周年記念式典、欧州の各国ハンドボール協会理事長や関係者などが集まって行われた>

 なお、この式典には各国の協会関係者、現役の選手やOB、サポーターを含めた500名以上のハンドボール関係者が参加しており、ハンドボールの発展や普及に関する数多くのイベントや会議などが18日まで開催された。


<イタリアのロビアンコ、自身4度目のオリンピック出場へ>

 2011年女子バレーワールドカップは、10勝1敗のイタリアが勝ち点28で2連覇を達成した。その原動力となったのが、ヨーロッパニュースVo.158でも紹介した、イタリア代表エレノーラ・ロビアンコ主将(以下ロビアンコ)である。彼女の大活躍もあり、イタリアは欧州選手権4位に終わった屈辱を見事晴らし、2007年に続いての女子バレーワールドカップ2連覇の快挙を果たしている。

<イタリアの名セッターから“イタリア女子バレーの伝説”へとなる>


 同時にイタリアは、2012年ロンドンオリンピック出場も決めており、“歴代最高セッター”との呼び声も高いロビアンコにとっては、これが自身4度目のオリンピック出場となる。

 ロビアンコが2000年のシドニーオリンピックにチーム最年少の20歳で出場して以来、12年が過ぎようとしている。2008年の北京オリンピックでは見事チームを金メダルに導くなど、オリンピックの経験も豊富だ。また、2002年の世界選手権、2007年のワールドカップなど多くの大会での優勝経験を持ち、2005年、2007年の欧州選手権では最優秀セッターにも選ばれていた。今年の冬に乳がんを患い、戦線を一時離脱した。しかし、彼女が復活して、再び華麗なトスを上げ、母国をワールドカップ連覇へ導く姿にイタリア中が感動した。

 イタリアの名セッターとしても知られ、2004年まで同女子代表の主将を務めたマウリツィア・カッチャトーリさんもロビアンコを高く評価しており、同選手の姿勢を以下のように賞賛している。

 「ロビアンコは乳がんを克服して、戦い続けている。まさに“真のチャンピオン”と呼ぶに相応しい。ロンドンオリンピックの開会式では、彼女がイタリアの誇りとして、国旗を掲げて入場するべきよ」




女子サッカーチャンピオンズリーグ、準々決勝の組み合わせが決定

 女子サッカーの欧州チャンピオンズリーグは、17日に決勝トーナメントの組み合わせが決定した。ホームアンドアウェー方式による準々決勝、準決勝は3月、4月に行われ、決勝戦は来年の5月17日にドイツのミュンヘンで行われる。


<前回王者のリヨン、今大会はドイツ勢の活躍にも期待したい>

 前回王者のオリンピック・リヨン(フランス)はブレンビー(デンマーク)と対戦する。強豪アーセナル(イングランド)はヨーテボリ(スウェーデン)との対戦が決定した。

 なお、なでしこJAPANの永里優季が所属するポツダム(ドイツ)はロシヤンカ(ロシア)、そして同じくなでしこの熊谷紗希が所属するフランクフルト(ドイツ)はマルメ(スウェーデン)との組み合わせが決定した。

 また、ドイツ勢の2チームであるポツダムとフランクフルトが別ブロックに入ったことにより、各々勝ち進んだ場合には、決勝の舞台での日本人対決が実現する可能性があることにも期待したい。

<決勝トーナメント・準々決勝の組み合わせ>

*準々決勝 (2012年3月の14/15日、および21/22日)

1: マルメ(スウェーデン)- フランクフルト(ドイツ)

2: オリンピック・リヨン(フランス)- ブレンビー(デンマーク)

3: ポツダム(ドイツ) – ロシヤンカ(ロシア)

4: アーセナル(イングランド)- ヨーテボリ(スウェーデン)

女子ハンドボール・チャンピオンズリーグ、本大会の組み合わせが正式決定


<グループ1は、昨年のファイナリスト2チームと、セミファイナリストが混在する“死のグループ”となった>

 15日、女子ハンドボールの欧州チャンピオンズリーグは、ウイーン(オーストリア)で行われた抽選により、来年の2月に準決勝の4枠を争う本大会の組み合わせが正式に決定した。

 最終予選を勝ち抜いた8チームは、準決勝に向けて4チームずつ2つのグループに別れ、4チームによる総当たり戦を行う。各グループの1位、2位が自動的に準決勝へと進むことになる。組み合わせは以下の通りとなった。

<グループ1>

ラルビック(ノルウェー)

ジェール(ハンガリー)

イチャコ・ナバーラ(スペイン)

ミッドユラン(デンマーク)

 <グループ1>は昨年のファイナリストである、ラルビック(ノルウェー)そして

イチャコ・ナバーラ(スペイン)に加えてセミフィナリストのジェール(ハンガリー)

が混在する超激戦区となった。どの一戦からも目が離せない、本大会にふさわしい豪華な顔ぶれである。強豪に囲まれ、善戦が期待されるミッドユラン(デンマーク)のライアン監督は、以下のように述べた。

 「これこそ“ダイナマイト・グループ”だ。われわれの目標であるベスト8進出はすでに達成した。ここからは新しい目標に向かう。このグループで、2つの枠を賭けて生き残ることは、本当に大変な道のりとなるだろう」

<グループ2>

ブドゥクノースト(モンテネグロ)

オルチム・バルセア(ルーマニア)

クリム(スロベニア)

メス(フランス)

 一方の<グループ2>は、ブドゥクノースト(モンテネグロ)とオルチム・バルセア(ルーマニア)が、下馬評では他の2チームに比べて有利となっている。ブドゥクノーストの会長ペドラグ氏、そしてオルチム・バルセアのスポーツマネージャーであるボグダン氏とも「ブドゥクノーストとオルチム・バルセアが共に準決勝へ進出するだろう」、と両クラブともやや楽観的な見解を示した。



男子バスケ、ユーロリーグ第5節


<アンドレイ・キリレンコのチームプレー重視の活躍が光ったCSKA、5戦無敗と死角はない>

 男子バスケットボールのユーロリーグはレギュラーシーズン第5節が行なわれ、強豪CSKAモスクワ(ロシア)、バルセロナ(スペイン)、これ以上の敗戦は許されないレアル・マドリー(スペイン)などの試合に注目が集まった。CSKAモスクワはアンドレイ・キリレンコの活躍などで、77―66でウニカハ(スペイン)を下して5連勝とした。また、バルセロナもガラタサライ(トルコ)に70_66で勝利し、同じく負けなしの5連勝とした。この絶好調2チームの勢いは、まだまだ治まりそうにない。

 また、モンテパッシ・シエナ(イタリア)、マッカビ(イスラエル)といった有力チームが、4勝1敗という好成績で安定した戦いを続けている。一方、レアル・マドリー(スペイン)もエフェス・ピルゼン(トルコ)との一戦に104_84と大差で勝利し、2敗を守り、復調の兆しを見せている。



<<ショートコラム・スペインからの声>>

 今回は、フットサル元日本代表、名古屋オーシャンズで活躍し、スペインで挑戦を続ける鈴木隆二選手(現・スペイン2部マルトレイ所属)の声をスペインからお届けしたいと思います。鈴木選手はスペインで現役選手として、指導者としての道を確立するために多忙な日々を過ごしています。また同選手はボタフォゴFC(ブラジル)、ベンフィカ(ポルトガル)、ローマ(イタリア)というまたヨーロッパの強豪クラブでもプレーした経験があり、日本人として海外で挑戦を続ける、数少ない逸材です。今回は彼が長い海外経験、無数の試練の中から導き出した「日本とヨーロッパ」の差の核心に迫るような声を届けます。


スペインからの声・第二回「スペインにおける団結精神」
by 鈴木隆二(スペイン・フットサル2部、マルトレイ所属)

 毎週日曜日、バルセロナ郊外にある小学校の校庭のフットサル場で、日本人とスペイン人の大人と子供が一緒になって、遊びでフットサルを楽しむ場所がある。オフの時間などを利用して、できるだけ参加するようにしている。

 この小学校はバルセロナの地域活動の一環として毎週土日の午後の時間を無料開放している。その中に、一際体が大きいスペイン人の友達がいる。彼のプレースタイルはボールを受けると、まずドリブルを仕掛けて、自分のテクニックを見せつけてから、最後に味方にパスを出す。彼は守備をしないので、特に日本人の人達からは、多少なりと軽蔑した目で見られている。彼のそのようなプレーから、時には雰囲気を悪くもする。理由はやはり、仲間意識に欠けているからであろう。
 ある日、僕が集合時間よりも少し早めに着くと、既に彼もピッチへ来ていた。お互いの試合の結果などを話している途中、彼が「先日、衛星テレビで日本のJリーグの試合を見たよ。確かガンバ大阪というチームで、日本でもトップレベルのチームと解説者が言っていた。パスもよく回っていたし、凄く巧かった」と話しを切り出してきた。そして彼はガンバ大阪について、「でも何かが足りない。そうだ、COMPAÑERISMO/コンパニェリズモ(仲間意識、団結精神)が足りないんだ」と言い放った。

 彼の自己中心的に見えるプレーからは、とても想像できない言葉が出てきたので、正直僕は驚いた。日本でも、トップクラスの連動と連携を持ち味にしているガンバ大阪の試合を見て「仲間意識、団結精神」が足りないと言われたのだから。普段はわがままなプレーばかりの彼が、Jリーグのトップクラスのチームのプレーを見て「集団プレーの連携が生み出す創造性が足りない」と言ったのである。さらに彼は同じガンバの試合に関して「もっと仲間同士が理解し合うことが重要だ」とも言った。

 その話をした後のフットサルゲームでは、僕と彼との連携が今までで一番上手に行なえた。自分はドリブル好きの彼を信じてサポートやパスを出すようになったし、彼も素早く自分にパスを出すようになった。その日、僕達2人のプレーの中で新しい関係性が生まれたのだ。
“スペインの「COMPAÑERISMO/コンパニェリズモ(仲間意識、団結精神)」とは、自己主張やコミュニケーションを通して、お互いを理解することから始るのではないか”
 僕はスペインで、エンジョイでサッカー、フットサルを楽しんでいる人達の間にも「COMPA
ÑERISMO/コンパニェリズモ(仲間意識、団結精神)」という価値観がしっかりと浸透している、という事実を強く実感している。また、スペインの「仲間意識、団結精神」は、僕が日本にいたときにイメージしていた「仲間意識、団結精神」とは何かが異なっている。僕自身、様々な体験を通して、それに最近気付き始めている。

 スペインでも今まさに「集団プレーと連携」という課題を、所属チームで取り組んでいる最中だ。しかし自分なりに仲間を理解し、連携を考えて、そのことを強く意識してプレーすると、何か連携などが物足りない。そしてクラブの同僚の選手からは「SUZUKIは“自分の長所”を家に置き忘れたんじゃないか」と指摘されたりもする。そして、再び「自分のプレーの長所とは何か」を考えることになる。

この「周りとの連携を考える」ことと「自分の特徴を押し出す」ことの間のバランスがなかなか難しく、また複雑だ。
 団体ボール競技の歴史がある国には、日本人の自分が想像もしなかった「集団プレーの概念、COMPAÑERISMO/コンパニェリズモ(仲間意識、団結精神)」がしっかりと根付いてる。それは各競技のトップ・エリート層の中にだけに浸透しているのではない。そのエリート層を下で支えている、ピラミッドの底辺にある草の根活動にもしっかり根付いている。ふとした遊びで一緒にフットサルをするスペイン人の青年に、僕はこの国の「COMPAÑERISMO/コンパニェリズモ(仲間意識、団結精神)」の意味を、再び真剣に考えさせられた。