ヨーロッパ・ニュース Vol.161
2011/11/29
● 男子ハンドボ-ル・チャンピオンズリーグ、第6節
男子ハンドボールのチャンピオンズリーグはレギュラーシーズン第6節が行なわれ、ベスト16進出への激しい戦いが繰り広げられた。混戦が続く中でも、ハンブルグ(ドイツ)、バルセロナ(スペイン)が6戦全勝とし、アトレティコ・マドリー(スペイン)も5勝1分けで無敗を守っている。
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グループAは、バルセロナ(スペイン)が6戦全勝で早くも決勝トーナメント進出へ残り勝ち点1と迫っている。グループBは、強豪アトレティコ・マドリー(スペイン)がキェルツェ(ポーランド)を28―27という大接戦で下し、5勝目を挙げると、4勝2敗のMKBヴェスプレーム(ハンガリー)と共に同グループをリードしている。
グループCは、HSVハンブルグ(ドイツ)が難なく6戦全勝として、現時点で唯一のベスト16進出を決めた。一方、混戦が続くグループDは、AGコペンハーゲン(デンマーク)がレオン(スペイン)を30ー29の1点差で下して首位に躍り出ている。今後のグループリーグの戦いからも目が離せない。
● バレーボールW杯男子、快進撃のイラン代表
来年のロンドン五輪出場権をかけた、男子バレーボールのワールドカップ(W杯)が11月20日から日本で開催されている。その大舞台で、20年ぶりのW杯出場となったアジア王者のイランが快進撃を続けている。
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W杯第2ラウンド、日本、中国が5戦全敗という状況の中、イランは4勝1敗という素晴らしい成績を残した。予想を上回る活躍のイラン代表だが、選手達も大きな喜びを感じているようだ。
「チームは一丸となって目標に向かっている。メンタリティーも大きく変化した。一つでも多くの試合に勝利できることを願っている」(アリレザ・ナジ主将)
「こんな大舞台で、世界のベストプレーヤー達と試合ができることが、僕のエネルギーになっている」(プーリャ・ファヤジ)
27日から始まった第3ラウンド、世界ランク4位アメリカとの試合に敗れたものの、28日のエジプト戦を3―0で制した。エジプトとの1戦ではサーブ、ブロック、ディフェンスとも安定感のあるバレーを見せたイランは、着実に成長を続けている。今後のイラン代表の戦いにも注目したい。
<ケベック発のキンボール、ヨーロッパでも普及化が進む>
1986年、カナダのモントリオール大学体育学部出身のマリオ・ドゥマースによって考案された『キンボール』が欧州でも次第に人気を拡大している。“キン”とは運動感覚を意味する言葉であり、正式な競技名称はキンボールスポーツである。カナダのケベック発祥のこのスポーツは、ベルギー、アメリカを経由して国際化が進み、現在の競技人口は500万人を突破しているとされる。
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『キンボール』は、97年に日本で始めて紹介されると、着実に人気を拡大しており日本でも比較的認知度の高い競技となりつつある。また、2001年にはカナダで国際大会が行われるなど、国際化も少しずつ進んでる。2011年には日本での国際大会も予定されていたが、福島第一原子力発電所事故の影響で、開催地がフランス・ナントに変更された。なお、同大会での日本の成績は男子(参加国8)、女子(参加国7)とも銀メダルと好成績を収めている。
ヨーロッパでも、この直径1・2メートル、重さ1KGの巨大なボールスポーツは着実に普及している。11月の26日、27日には9チームから構成される「スペイン・キンボール全国大会」が首都のマドリードで開催されたばかりである。また競技だけではなく、レクリエーションとしてのキンボールも注目を集めている。
キンボールには「コンペティションゲーム」と「リードアップゲーム」の2種類が存在する。「リードアップゲーム」は“鬼ごっこ”、“リフティング”、“ドッジボール”のような大人数での遊び形式のものが多く、小学校低学年や高齢者、障害者の人々にも楽しめるという側面が普及化の理由にも繋がっている。また、この競技に必要とされる協調性や団結精神からも、世界の教育現場で『キンボール』が少しずつ注目を集めている。
● 男子バスケ、ユーロリーグ第6節
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男子バスケットボールのユーロリーグはレギュラーシーズン第6節が行なわれ、強豪CSKAモスクワ(ロシア)、バルセロナ(スペイン)が6連勝を守った。バルセロナ(スペイン)はオリンピア(スロベニア)を72―46と大差で寄せ付けず、隙なしのCSKAモスクワもジャルギリス(リトアニア)を95―82で手堅く破っている。
また、1敗を守るマッカビ(イスラエル)も5勝目を挙げて好調を維持している。最近になって復調の兆しが見られるレアル・マドリ―は、93―89でベルガコム・スピロウ(ベルギー)を破り、4勝2敗とした。モンテパッシ・シエナ(イタリア)、パナシナイコス(ギリシャ)という強豪に加えて、善戦を続けるカハ・ラボラル(スペイン)もフェルナンド・エメテリオの活躍などで4勝2敗と、好調を維持している。
<第2回フットサル女子世界大会12月5日に開幕へ>
12月5日から10日にかけて、第2回フットサル女子世界大会がブラジルのフォルタレザで開催される。2つのグループリーグに分かれて予選を行い、各グループの1位と2位が自動的に準決勝に進出する。Aグループではブラジル、アンゴラ、ベネズエラ、スペインの4チームが対戦する。
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日本代表はグループBに入っており、ポルトガル、ロシア、アルゼンチンといった強豪国との顔合わせとなった。
2010年、スペインで行われた第1回フットサル女子世界大会、女子日本代表は勝ち点3のみ(グアテマラ戦を2―1で勝利)でのグループリーグ敗退となっている。なお、準決勝にはスペイン、ボルトガル、ロシア、ブラジルの強豪4カ国が進出しており、ブラジルが王者に輝いた。第2回大会では、日本代表のグループリーグ突破に期待したい。
● ラグビー、ドバイ・セブンズのグループ分けが決定
27日、HSBC・ラグビーセブンズ・ワールドシリーズの第2ラウンドとなる、ドバイ大会のグループ分けが発表された。なお、オーストラリア大会に出場した日本は不参加となっている。
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開幕ラウンド優勝のフィジーはグループAに入り、強豪のサモア、アルゼンチン、地元のUAEと対戦する。グループBでは、ニュージーランド対南アフリカが注目の一戦だ。グループCのフランス対イングランド、グループDのウエールズ、オーストラリア、スコットランドといった強豪同士の戦いからも目が離せない。また、ジンバブエ、カナダ、ポルトガルといった今季初登場の国にも健闘を期待したい。
<プールA>
フィジー
サモア
アルゼンチン
UAE(アラブ首長国連邦)
<プールB>
ニュージーランド
南アフリカ
アメリカ
ポルトガル
<プールC>
フランス
イングランド
ケニア
ジンバブエ
<プールD>
ウエールズ
オーストラリア
スコットランド
カナダ
● UEFAフットサル・クラブ杯、ベスト4監督のコメント
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UEFAフットサル・クラブ杯の準決勝進出を決めた4チームの顔ぶれが出揃った。破壊力抜群のディナモ・モスクワ(ロシア)、昨年のスペイン3冠王者、バルセロナ(スペイン)、そして、常連のスポルティング・リスボン(ポルトガル)、昨年の覇者を抑えて最終予選突破を果たしたマルカ(イタリア)という顔ぶれだ。なお、準決勝は来年の4月に行なわれる。ここでは、最終予選を振り返っての各監督のコメントを紹介する。
マルク・カルモーナ監督/バルセロナ(スペイン)
「決勝ラウンド進出という目標が果たせて幸せだ。最終予選で2―2と引き分けたアラズ(アゼルバイジャン)は想像よりはるかに難しい対戦相手だった。守備を固めてカウンター攻撃を武器にする相手と対戦する時には、双方がリスクを犯すことが必要。“リスクを犯さなかったチームが負ける”それが、よくある勝負の原則だと思う」
ファウスティーノ・ペレス監督/ディナモ・モスクワ(ロシア)
「ホームでプレーすることが必ずしも有利とは言えない。プレッシャーという心理的要素があるからだ。決勝進出を決めたカイラット(カザフスタン)との一戦は本当に苦労した。試合前には、2つの異なるゲーム展開を想定した練習を入念に行なった。それでも、相当苦しめられた試合となった」
ティアゴ・ポリド監督/マルカ(イタリア)
「われわれは成長しながら最終予選を戦い抜いてきた。それがチームにとってもプラスとなった。この苦しみと成長が、国内リーグやカップ戦での活躍にも繋がるだろう。準決勝から先は、優勝候補など関係ない。毎試合ベストを尽くすつもりだ」
オルランド・デュアルテ監督/スポルティング・リスボン(ポルトガル)
「イベリア・スター(グルジア)との引き分けは自分たちに責任がある。戦力的には問題なく勝利できるはずの試合でも、自分たちの攻撃のミスで試合展開を難しくしたからだ。それでもホームのサポーターの声援などが上手く味方してくれた」
<ショートコラム・スペインからの声>
スペインからの声・第三回「ボールを持った子供達」
by 馬場源徳/スペイン
ボールを持った子供達、遊びながら培う「判断力」
私は母国・日本以外にもスペイン、アルゼンチン、台湾などの国々で仕事をしながらの長期間生活した経験がある。その他、色々な国を訪れてはスポーツ環境に目を通すことに興味を持っている。小学校のグラウンド、公園、空き地、スタジアムを見て「将来のスターはここで生まれるのか」などと感じることがよくある。今回はボールで遊ぶことについて考察してみる。南米では子供が生まれて初めて贈るプレゼントは決まってサッカーボールで、ストリートでサッカーに興じる姿をよく見かける。スペインのような国ではどうだろうか?
スペイン、ポルトガル、イタリアやフランスのような国では頻繁にボールを持って登校する小中学生や、ボールを抱えて両親に連れられる幼児を見かける。もちろん若者や大人もボールを使ったスポーツが大好きだ。そのボールの量に比例して一般開放しているボールスポーツ用の多目的グラウンド(バスケット、フットサル、ハンド、ホッケーなどが練習できる簡易グラウンド)の数は日本とは比較にならないほど多いことにも驚かされる。そのような多目的コートでは、一日中あらゆるボール競技などを、あらゆるカテゴリーの人々が楽しんでいる。そして、様々なボール競技に参加する女性の多さ、そして50、60代男性の多さにも驚かされる。
「多くのサッカー先進国での子供達は、よくボールで遊ぶ。それは多くのボール競技の発展に関連しているだろう」
ボールの数の多さには、スペインの街を歩くとすぐに気がつく事である。あらゆる場所でボールを持った子供や若者を見かける。バルセロナのように人口密度の高い街では特に顕著である。広場、公園、空きグラウンドには常にボールを持った青少年達がいる。学校の課外スポーツもほとんどがボール競技だ。子供達はボールさえあれば友達作りには困らないようである。サッカー大国という事実も確実に影響を与えているのだが、ボールを使った室内競技の人気はスペインではとりわけ目を引く。
また運動を普段は全く行わない若者も、公共の場所で一緒になってボールをけったり、投げたりしている。ビーチに行っても、歩行者天国でも、何と教会の目の前にある広場でもボールを使って遊んでいるのである。もちろん、一番の人気は「ミニサッカー」だ。荷物の入ったバッグやヘルメットなどで簡易ゴールを作ってとにかく試合を真似して遊ぶ。バスケットはリングがないと試合にならないため、やはり場所が限られている。ハンドやラグビーはコンタクトが多すぎるからか、遊びでは少ない。ビーチだけではなく、公園の木と木と間にロープをくくったりする“即席バレーボール”も少なくはないが、主には南米系の女性の方が好んで遊んでいる方が多い。とにかく、日本に比べて圧倒的にボールで遊ぶ人々を目にする機会が多い。
「ボールで遊ぶ子供達は、ボールを扱う技術だけではなく、判断力に長けている」
実は私自身もスペインの公園や、空きグラウンドで友人とフットサルに興じることは少なくない。友人と誘い合わせて行ったり、時間帯が分かっていれば時々、自分1人でも空いた多目的ピッチに向かう。新しい知り合いなども作れるし、新鮮な空気だ。そして競技とは関係のない、ストレスを感じない楽しみには本当に癒されるものである。そのような遊びにも、やはり勝ちたい、相手を負かしたい、という気持ちは誰もが持っているのだろう。たくさんのスペイン人の青少年達を観察して、彼らの全ての根底にある「情熱」にも気がついた。彼らは遊びでも、本当に負けず嫌いなのである。それは情熱と伝統がなせることだろうか。そして競技的な視点から観察すると、スペインの子供達にあって日本人の子供には欠けている「判断力」という言葉が浮かんできた。
「判断力」
例えば、サッカー、バスケット、フットサルなどにおいて、技術では日本人の選手が勝っても、判断力では圧倒的にスペイン人の子供達の方が勝るのはどうしてだろうか?多々ある理由の中から、今回はスペインなどの子供達の「ボール遊びの環境の多様性と、彼らの判断力」に注目してみた。
スペインの子供達はビブスもマーカーなしで、人で混雑した校庭のグラウンドや、公園などの公共の場所でボール遊びを毎日のように行っており、自然とあらゆる判断力を養っている。昼も夜も関係なく、暗くても問題はない。人数が違っても、ぼろぼろのボールでも、とにかく必死にボールを奪い合う。バスケットでもミニサッカーでも、とにかく少人数同士で対戦する。日が暮れるまで1対1を繰り返す。3人なら2対1、4人なら2対2、6人なら3対3、7人なら4対3・・・様々な状況の下でとにかく対戦形式で遊ぶ。他人同士でも、ごく当たり前に即席チームを作る。チームが多ければ即席3チームで勝ち抜き戦、青少年に至っては小銭を賭けて、賭けサッカーなども頻繁に行う。彼らにとって、その全てが「本気の遊び」だ。そんな遊びを毎日繰り返している子供達は、成長するにつれて対人の判断力が鋭く磨かれていく。道行く人にぶつからないように、味方の子供達と叫び合いながら、遊びながらゴールを目指す日々。そこには大きな視覚、聴覚における判断力が要求される。最近スペインでは、サッカークラブの練習メニューとしても取り入れられている“意図的に混雑させるトレーニング”(実戦よりも人数やボール数を増やして行うトレーニング)はこの判断力を養うメソッドに由来している。
スペインでは頻繁に見かけるボールを持った子供達。様々な場所で楽しそうに、がむしゃらにボールを追いかけて遊ぶ子供達。彼らは対戦しながら遊び、創造性を豊かにする。そして色々な技を試したり磨いたりする。テレビで憧れる選手のプレーを真似したり、目の前にいる近所の友達や年上のお兄ちゃんの技を盗んだり、研究したりする。空き地や公園など、あらゆる場所で他人と即席でチームを作ったり、ゲーム形式で対戦することに慣れている。口論は日常茶飯事で、荒いプレーも時々見られる。それでも、「遊び」が「喧嘩」にならないようにコントロールする口論の力と、したたかさも持っている。そして相手への適度なリスペクト、挑戦心、そして自然と身に付いた挑発的な態度や協調性にも目を見張るものがある。
一見何も考えずに、ストリートで遊んでいるように見える子供達。彼らは気づかない間に人数、状況、賭けの有無、見ている人達、仲間、相手のプレーなどに臨機応変に対応して遊んでいる。対人での磨かれた「技術的な判断力」はもちろんだが、「状況や相手を見極める判断力」をも身につけている。彼らは、こんな毎日のボール遊びから、団体競技において非常に大切な「判断力」のエッセンスを会得しているのだろうか。