ヨーロッパニュース一覧

2011-12-6

ヨーロッパ・ニュース Vol.162

2011/12/06


男子ハンドボ-ル・チャンピオンズリーグ、第7節

 男子ハンドボールのチャンピオンズリーグはレギュラーシーズン第7節が行なわれ、ベスト16(ノックアウトステージ)進出の顔ぶれが次第に明らかになってきた。混戦が続く中でも、絶好調のハンブルグ(ドイツ)、前回優勝のバルセロナ(スペイン)が7戦全勝とし、早々とベスト16進出を確実にした。強豪アトレティコ・マドリー(スペイン)は5勝2分として依然として無敗でグループB首位を守っている。

<次第にベスト16への顔ぶれが揃い始めているが、グループCとDでは、まだまだ接戦が続きそうだ>

 グループAは、バルセロナ(スペイン)を追いかけるザグレブ(クロアチア)が6勝1敗でベスト16入りを手中におさめた。また、グループBのMKBヴェスプレーム(ハンガリー)も5勝2敗と勢いを落とさない。グループCは、全勝のハンブルグ(ドイツ)が単独で抜け出している。そして、激しい混戦が続くグループDは、AGコペンハーゲン(デンマーク)が先週の1点差での勝利に続き、34―31の僅差でセゲド(ハンガリー)を粘り強く下して首位を守っている。



サッカー女子ドイツ・カップ、なでしこ情報

<攻撃がかみ合ったフランクフルトは5得点をあげた>

 4日、サッカー女子のドイツ・カップ準々決勝が各地で行なわれた。日本代表DF熊谷紗希が所属するフランクフルトは、同じく日本代表のFW永里優季が所属するポツダムと対戦した。日本人対決が実現したこの対戦は、前半から3―0と強さを見せつけたフランクフルトが5-1で快勝した。なお、熊谷は前半23分から途中出場し、永里はフル出場した。 

 また、デュイスブルクは日本代表のMF安藤梢の3得点の活躍などもあり、格下2部のギュータースローを7-0で下している。



バレーボールW杯男子、若干18歳の最年少キャプテン

 日本で開催されている男子バレーボールのワールドカップ(W杯)に、若干18歳でバレー強豪国を率いる若き主将がいる。キューバ代表のウィルフレド・レオン・ベネロ選手(以下=レオン)だ。今回の男子W杯12カ国中でも、このレオンが最年少の主将である。


<「最年少であることにプレッシャーは感じていない。勝負では得点を取るよりも、ミスを減らすこと」、大人びた冷静な一面もみせるレオン>

 レオンは2008年オリンピック予選に、わずか14歳で代表デビューを果たし、その頭角を現し始める。2009年のワールドリーグでも活躍を見せると、2011年のワールドチャンピオンシップでは母国を決勝まで導いてみせた。決勝戦ではブラジルと第5セットまで大接戦をみせるが、惜しくも銀メダルにとどまった苦い経験もある。

 2011年、母国のコーチ陣はレオンの活躍を熟慮して、若干18歳の彼を主将に任命した。しかし、バレー強豪国キューバを率いることになっても、レオンは全く臆することなく活躍を続けている。このW杯では、12月1日の時点で108ポイントをあげ、スコアランキング7位につけている。また、スパイク179回のトライにあたり、94回を成功させて“52・5%”という非常に高い決定率も誇っている。その上、11月28日のブラジル(世界ランク1位)との対戦では自ら16ポイントを決めて3-2の勝利に貢献するなど、大一番での勝負強さも証明済みの逸材だ。

 キューバ代表監督のオルランド・サムエル監督も、若きレオンには絶大な信頼を寄せており、主将任命に至る経緯を以下のように説明している。

 「レオンがキャプテンには適任だよ。コーチ陣はレオンにどのようにしてチームをまとめ上げるかについて話をしたけど、彼なら問題ないだろう。彼には強靭なメンタリティーがあり、常に勝利を求めてチームのために戦う姿勢を持っているんだ」

 今後も、この世界を代表するキューバの若き主将、ウィルフレド・レオン・ベネロの成長と活躍に期待したい。


<オランダ発の「コーフボール」、ヨーロッパでも普及化が進む>

 ヨーロッパでは時々耳にする『コーフボール』というスポーツをご存知だろうか?1902年オランダの教師ニッコ・ブロークフィセにより、バスケットボールを基に考案されたこの競技は、すでに世界57カ国の国々が国際コーフボール連盟(IKF)に属し、ヨーロッパを中心に多くの国に普及している。

 オランダ語で“バスケットボール”を意味するコーフボールという言葉から想像できるように、バスケットにボールを入れるという概念が基本概念となっている。しかし、コーフボールでは、「1・ドリブル禁止、2・男女混合スポーツ(各チームに男女4人ずつ、合計8人)、3・ゴールの周り360°どこからでもシュートが可能」という概念が存在する。その特徴から、パスワーク中心のゲーム展開、男女共同での連携プレーが重視されるスポーツである。

<コーフボールの試合風景、バスケットようだがリングの周りにボードはなく、360度どこからでもシュートもできる>

 ヨーロッパでは社会人の間にも普及しているコーフボールは、国際化も着実に進んでいる。現在、「コーフボール世界選手権」が1978年より、4年間隔で開催されておりその規模を拡大している。2011年大会はアジア・中国で行なわれており、今後のさらなる国際化も期待されている。なお、優勝常連国は“発祥の地”、オランダ(8度の優勝)であり、続いてその隣国のベルギー、ドイツ、イギリス、その他のヨーロッパの国々が成績上位を占めている。日本でも多くの人々が楽しむこの競技、今後のさらなる普及にも注目したい。


男子バスケ、ユーロリーグ第7節

 男子バスケットボールのユーロリーグはレギュラーシーズン第7節が行なわれ、ベスト16への顔ぶれが次第に明らかになっている。強豪CSKAモスクワ(ロシア)はチームの大黒柱であるアンドレイ・キリレンコを肩の負傷で欠くものの、ブローゼ(ドイツ)を81―78で手堅く下して全勝をキープした。また、バルセロナ(スペイン)もプロコム・グディニャ(ポーランド)相手に76―45と、圧倒的な強さを見せ付けて7連勝でのベスト16進出を決めている。

<CSKAモスクワ、アンドレイ・キリレンコが怪我で戦線離脱となったが、その選手層の厚さには不安のかけらも感じさせない>

 また、完全に調子を取り戻したレアル・マドリー(スペイン)がエンポリオ・アルマーニ(イタリア)を72―65で下して5勝目を挙げると、パナシナイコス(ギリシャ)は94―76で破り、モンテパッシ・シエナ(イタリア)もオリンピアに63―57で勝利し、各有力チームが次々とベスト16入りを確実としている。また、混戦が続くグループAは、6チーム中の3チームが4勝3敗、残りの3チームが3勝4敗とほぼ横一線で並んでおり、他を見ない混戦模様となっている。グループリーグも終盤を迎えたが、この先もまだまだ接戦が続きそうだ。



ラグビー女子、ドバイ・セブンズ・チャレンジカップ


<ドバイ・セブンズ・チャレンジカップ女子、優勝はカナダ代表に>

 ラグビー、HSBC・セブンズ・ワールドシリーズの第2ラウンド、ドバイ大会の開催に伴い、「ドバイ・セブンズ・チャレンジカップ女子」が12月2日、3日にわたって開催された。6大陸を代表する8カ国が参加して、初タイトルを懸けた激しい戦いが繰り広げられた。決勝戦では、気合十分、破壊力抜群のカナダがイングランドを26―7で下して栄冠を勝ち取った。なお、アジアからは中国代表が参加しており、7位に終わっている。

*参加国は以下の通り*

USA(アメリカ)
南アフリカ
イングランド(準優勝)
中国
カナダ(優勝)
ブラジル
オーストラリア
スペイン

スペインの強豪フットサルチーム、大規模な地域活性化プロジェクトを続ける

 スペイン・マドリードを本拠地とする、フットサル・リーガ・エスパニョーラ1部の強豪、『モビスター』ことインテルビューFSが、国内の63箇所をめぐり青少年との大規模なスポーツ交流会を続けている。先日、スペイン南部の人口6万人の小さなモトリルという街でも行なわれたこのスポーツ交流会では、周辺地域の2100人を越える青少年がこのモビスターの活動に参加しておりスペイン国内でも大きな注目を集めた。

 


<スペイン・フットサルを代表するGKルイス・アマド、モビスター・ツアーで子供達とスポーツを通して触れあう>


『メガクラック・モビスターツアー』と呼ばれるこの地域活性化活動は、スペイン全国でこれまでに6万人以上の青少年を動員している。主な活動内容は、多くのスター選手を擁する同クラブが、国内のさまざまな市町村をめぐり、スポーツを通じて子供達と交流を深めるというものだ。同時に、スポーツ障害者を対象とした活動も行なっており、これまでに3500人以上の障害者の人々も活動に参加している。また、訪れた地域の現地アマチュア・フットサルチームとの練習試合などを通して、地域スポーツ活動を推進させるという目的も果たしている。

 12月1日にはスペイン・セゴビアの小さな街でも、現役スペイン代表のスター選手達と600人の青少年達が簡単な練習やゲーム形式でフットサルを一緒に楽しんだ。また、一般向けの練習公開なども行なっており、多くの観衆が練習見学にも訪れた。なお、練習公開を終えた後は、同セゴビア市議会のメンバーとの昼食会での意見交換なども開催しており、盛りだくさんの地域交流に精力を注いでいる。厳しいシーズン中にもかかわわらず、モビスターはスペイン全国を巡ってこの様な活動を続けており、フットサルの普及という枠を越えた社会貢献を果たしている。


<女子ラグビー、「他競技に学ぶ」イングランド代表がレスリングで特訓>

<日本では専修大学などのレスリング部が、強豪ラグビーチームとの合同練習に取り組んでいる>

 11月28日から1週間にかけて、女子ラグビーイングランド対ニュージーランドという豪華なテストマッチが行なわれている。2010年のワールドカップの決勝戦でニュージーランドに敗れたイングランド女子代表は、ボティーバランスとタックルの向上のために、同国の格闘技・寝技チャンピオンを招待して激しいレスリングの稽古をつける練習に取り組んでいる。

 なお、この“レスリング稽古”は、南半球の強豪国やアイルランドやウェールズの男子チームなどでは、頻繁に練習でも取り入れられているトレーニング内容でもある。この「他競技に学ぶ」というコンセプトは、近年では様々なスポーツでも実践される傾向にもある。

<ショートコラム・スペインからの声>

 さて、今回のコラムではスペインフットサル2部の鈴木隆二選手からの声をお届けしたいと思います。鈴木選手が出場した、非常に白熱したスペインでのある公式戦での経験を伝えていただきます。また、同選手がスペインの非常に研究熱心な指導者達との交流を通して感じた思いも伝えていただきます。

スペインからの声・第四回「スペインに流れる血と知」

by 鈴木隆二/スペイン2部・マルトレイ所属

「血」

 昨シーズン僕が在籍していたFuconsa Ja_n FS(スペイン2部フルコサ・ハエン・フットサル・クラブ=以下ハエン)でとても白熱したホームゲームがあった。白熱した理由はハエンの選手が負傷して倒れているにもかかわらず、相手が攻撃を続け得点を決めたからである。当然、選手は抗議したが認められず会場全体が騒然となった。観客は容赦なく、得点を決めた選手と審判に向かって罵声を浴びせた。観客席とピッチを隔てている柵の扉が少し空いている場所があり、そこから観客のおじさんがピッチに入りこみ、審判の真横で抗議をした。その時は、騒動には慣れているはずのスペイン人審判もさすがに困惑した様子だった。ベンチ裏からは観客の一人が身を乗り出し、相手ベンチに向かって文句を言う人がいれば、それを必死で止める人もいる。やがて観客全員で相手チームと審判を罵倒する歌を歌いだす。ハエンの会長もVIP席から身を乗り出して、激しい見幕で一緒になって歌っていた。試合はそこからさらに激しさをまし、ハエンが同点に追いついて終了した。僕はこの会場全体の激しさは「絶対に日本では表現することが不可能だ」と感じた。試合後、怒りが収まらなかった会長はロッカールームの壁を殴ってしまい、拳を骨折してしまった。翌日病院で手術をするほどだ。これは彼らの体に流れている「血」としか言いようがない。またホームゲームでは、タイムアウトの時に、応援団の太鼓を持っている人が相手ベンチの真後ろまで行って、大声で歌いながら太鼓を叩き、相手チームの監督の指示を聞こえないように妨害する。ただこの太鼓がうるさ過ぎて、ホームの自分達も監督が出す指示を聞き取れないぐらいだ。

 ブラジルの場合は、試合会場に銃を携帯した警官が数人必ず居て、非常事態が起こった場合には対応する準備がある。しかし、スペインでは警官が室内競技に待機することはめったにない。この試合も警官がいない中で、どうにか無事に終わった。試合中は極限まで熱くなるが、試合が終わると何事もなかったかのようだ。もちろん多少試合後にも抗議は続くが、それでも大事には至らない。ブラジルでは有り得ないことだ。この辺りは、“ラテン系”と言ってもスペインとブラジルの違いだと思う。

「知」  

「国際サッカー会議」

 スペインフットサル指導者資格レベル1の必須に、課外授業が一つ入っている。今回それはセビージャで3日間行われる「国際サッカー会議”科学とテクノロジー”」に参加するという課題であった。この会議の中には、様々な講演や講義が準備されている。例えば、リーガ・エスパニョーラの現監督の講演、ドイツサッカー協会関係者によるドイツとスペインサッカーの関わりに関する講演、メンタルに関する講義などが、金曜日の午後から日曜日の午前まで行われた。指導者を目指す自分たちには、その中から興味のある講演、講義を幾つか選び、出席することが義務付けられていた。僕が最も興味を持って出席したのは、やはり現フットサルスペイン代表監督のベナンシオと同代表第二監督のフェデによる講義だった。

 この講義は「コーナーキックのオフェンス」について、パワーポイントを使って行われた。まず最初に、コーナーのオフェンスを構成する6個のエレメント(要素)が紹介された。

コーナーのオフェンスを構成するエレメント(要素)は全部で6個存在する、「クロス、方向転換、リズム(走るスピードに)チェンジ、ブロック、連続した動き、フェイント」である。そして、各エレメントの具体的な例が、試合映像などを使って説明された。それから次に、コーナーキックを成功させる為の重要なポイントの説明があった。

*コーナーやセットプレーにおいてはキッカーがもっとも重要であり、キッカーの状況判断能力と、キックの精度がなければ成立しない。キッカーはキック後に次にどの行動を取るかを判断する。

*キッカーは味方の動き出しを見て、ディフェンス側のエラー(ミス)が起きるのを待ち、そのエラーを利用して攻める能力が必要である。

*多くの場合、ディフェンスはボールを注視しているので、それを利用する。

*攻撃側の味方の選手は、パスコースを見つけ出す際の動き出しのスピードを少しだけ緩める。

*ボレーシュートを選択した場合、相手のディフェンスが届かない距離(大外)からシュートを打つことが重要である。

*コーナーのディフェンスは2―1―1のゾーン・ディフェンス(コーナーキッカーに対して三角形をつくる)で守るのが基本である。コーナーにおいて大切なことは、最初にディフェンスが密集する場所を6個のエレメントを使い攻めることである。ディフェンスが多い場所(この場合はゴール付近の2―1の三角形を指す)は一見ディフェンスが強固に思われるが、オフェンス側の選手の動き出しにディフェンスの3人が連携して対応するため、最も問題が生じやすい場所でもあるからだ。

*ディフェンスが付いてくる(マンツーマン)=そこで作られる空いたスペースを攻める。ディフェンスが付いて来ない(ゾーン・ディフェンス)=方向転換、連続した動きで攻める。

この講義の最後には、受講生同士でグループを作り、各グループがコーナーのオフェンスを向上させるための様々なテーマを与えられた。そして、受講生同士で一緒にそのテーマに対するトレーニングメニューを作る、というものであった。僕がいたグループには「キッカーの状況判断能力を上げる為のトレーニング」というテーマが与えられた。その作業中にスペイン代表の第二監督であるフェデが、僕達の様子をみながらアドバイスをしてくれた。僕達のグループは、フェデに「その内容では単純にシュート数が増え、シュート精度を上げる為の内容になっている。キッカーの状況判断能力を上げる為に特化した練習内容になっていない」と指摘を受けた。また、フェデは具体的な彼のアイデアもその場で僕達のために紹介してくれた。

「指導者による、指導者の為のクリニック」

 スペインではシーズンが終了すると有名なスペイン人監督達による、「指導者による、指導者の為のクリニック」が毎年スペイン各地で開催される。僕はシーズンが終了すると、必ずそれらのクリニックに足を運んで講義を受ける。これらのクリニックは3〜4人の世界的にも有名な監督が、それぞれの得意分野やフットサルにおける重要なテーマ(プレス回避、プレッシング、ポゼッション、数的優位の攻撃、数的不利の守備、攻守におけるシステム etc)に関する自論を講義を通して披露するというものだ。
 講義はパワーポイント、映像、語りなどを通して行われる。講義を行っている監督以外の監督も、自分達受講生と同じ真剣な表情で講義を聴いている。

 この講義を行なう監督達は、それぞれの個性を引き出した講義を行なうため、一つ一つの講義が作り出す空気が全く異なる。講義後は毎回受講生の間で、「私は○○監督が好きだ」「自分は○○監督の講義が一番良かった」「○○監督の説明が一番分かり易い」「○○監督のファンになった」という様な会話が行われる。僕はこれらの講義に参加してみて、このような講義会は「監督同士の公式戦」だと感じた。この監督達は、それぞれの持っている知識や能力を出し、お互いに情報を共有し、刺激しあっているのだ。そういった光景は、日本では見たことがなかった。

 クリニックの規模によっては監督と昼食を一緒に取れるものもある。いずれにしても講義終了後は監督達は仲良く食事に出掛ける。クリニックや指導者講習会に参加して、いつも強く感じることは、「彼等は現役の監督でありながら且つ、フットサルというスポーツを通した研究者であると言う表現が一番しっくりくる」ということだ。