ヨーロッパ・ニュース Vol.163
2011/12/13
● フィールドホッケー男子、チャンピオンズトロフィー
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フィールドホッケー男子、世界一を決める「ホッケー・チャンピオンズトロフィー」が11日までオークランド(ニュージランド)で開催され、オーストラリアが2008年から4年連続での優勝を果たした。
当初インドで開催される予定であった今大会は、同国の政府事情によりニュージランドへと開催地の変更が行なわれたが、多くの地元のファンなどで賑わう大盛況の大会となった。
金メダルに輝いたオーストラリアは、決勝戦ではスペインとの大接戦を1―0と制した。また、銅メダル争いでは4000人の観衆が見守る中、地元ニュージランドが健闘を見せるものの、5―3で強豪オランダに軍配が上がった。
なお、個人賞ではベストプレーヤーにサンティ・フレイシャ(スペイン)、得点王にはジェイミー・ドワイヤー(オーストラリア・7得点)が選出されており、フェアプレー賞は優勝したオーストラリアに贈られた。
● サッカー女子ドイツ・ブンデスリーガ、なでしこ情報
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サッカーのドイツ女子1部リーグ・第11節が各地で行なわれ、日本代表DF熊谷紗希が所属するフランクフルトは、同じく日本代表のMF安藤梢のデュイスブルクと対戦した。
ブンデスリーガ、注目の日本人対決は1―1の同点で引き分ける結果となった。なでしこのMF安藤梢は62分に退くまで出場しており、また同じく日本代表の熊谷は68分からの途中出場となった。
また、FW永里優季が所属するポツダムはアウエーでライプチヒに7―0と大勝した。この試合、永里はフル出場すると、25分、61分、85分と3得点をあげてチームの勝利に貢献した。
● ヨーロッパ・ハンドボール連盟(EHF)、指導教材を公式WEBライブラリーに公開
7日、ヨーロッパ・ハンドボール委員会、およびビーチ・ハンドボール委員会は学校教員、青少年チームのコーチなどを対象に複数のハンドボール・トレーニング内容を収録した『指導者向けビデオ』を公式サイトのWEBライブラリーの中で公開した。
(http://activities.eurohandball.com/teaching-videos *こちらのリンクから閲覧可能)
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同委員会によると、EHFの公式サイトを通して今後も指導目的のトレーニングビデオなどを更新する予定であり、様々な指導者からの要望に応じていくとしている。各カテゴリーをクリックすると、様々なビデオを鑑賞することが可能となっている。なお、多くの国の人々が共有できるようにと字幕や会話はほとんど含まれず、映像を通して理解できる内容ばかりが取り揃えられている。なお、今回収録されているビデオの主な内容は以下に記載するの5つの項目に分かれている。
1. Minihandball(青少年を対象としたミニ・ハンドボール集)
2. Basic Handball(ハンドボールの基礎、戦術、守備トレーニング集)
3. Alternative Games(ゲ-ム形式による得点感覚を目的としたレーニング集)
4. Beach Handball(ビーチ・ハンドボールの試合、およびトレーニング集)
5. Wheelchair Handball(車椅子ハンドボールのプロモーションビデオ集)
<男子バレーW杯、23歳のマキシム・ミハイロフがMVPに>
FIVBワールドカップ2011男子大会(W杯)は12月4日に東京で幕を閉じた、この過酷な11戦を制したのはは10勝1敗のロシアで、1999年以来、3大会ぶり6度目(旧ソ連含む)の栄冠となった。なお、2位はポーランド、3位にはブラジルが入り、2012年ロンドンオリンピックへの出場権を獲得している。そして、栄えある今大会のMVP(最優秀選手)にはロシアの新鋭、マキシム・ミハイロフ選手が選出された。
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23歳のミハイロフは今大会の得点ランキングでも185ポイントをあげて(スパイク150、ブロック20、エース15ポイント)総合3位につけており、スパイク決定率でも288回で150を成功させ、52・08%で3位に立った。
11月29日のキューバ戦では28ポイントをあげる大活躍もみせたミハイロフではあるが、今大会では攻撃力、サーブの素晴らしさに加えて、粘り強い継続的な活躍が評価されてのMVP選出となった。
<また、その他の個人賞は以下の通りとなっている>
・MVP: マキシム・ミハイロフ(ロシア)
・ベストスパイカー: アハメド・アブデルハイ(エジプト)
・ベストブロッカー: マルチン・モジジョネック(ポーランド)
・ベストサーバー: クリスティアン・サバーニ(イタリア)
・ベストリベロ: 任_[レン・チ](中国)
・ベストレシーバー: セルジオ・サントス(ブラジル)
・ベストセッター: ルチアノ・デセッコ(アルゼンチン)
・ベストスコアラー: フェルナンド・エルナンデス(キューバ)
● 男子バスケ、ユーロリーグ第8節
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男子バスケットボールのユーロリーグはレギュラーシーズン第8節が行なわれ、新たにマッカビ・エレクトラ(イスラエル)、カントゥ(イタリア)、エフェス・ピルゼン(トルコ)らがベスト16進出を決めた。いよいよレギュラーシーズンも残り2節となったが、4試合の勝敗が5ポイント差以下で決まるなど、依然として接戦が繰り広げられている。
混戦が続いているグループAでは、カントゥ(イタリア)、フェネルバフチェ(トルコ)が5勝目をあげており、カントゥはベスト16ラウンドへの進出を決定しており、フェネルバフチェもほぼ次ラウンド進出を確定させている。グループBでは、早々と決勝ラウンドを決めたCSKAモスクワ(ロシア)とパナシナイコス(ギリシャ)を除いては、いずれの対戦も拮抗している。
グループCはエフェス・ピルゼン(トルコ)がエンポリオ・アルマーニ(イタリア)を84―70で下しており、同じく5勝目をあげたマッカビ・エレクトラ(イスラエル)と共にベスト16入りを決めた。グループDでは、バルセロナ、モンテパッシに続いてユニックス・カザン(タタールスタン)が予選突破を確実にしている。
なお、強豪CSKAモスクワ(ロシア)はザグレブ(クロアチア)に予想以上の苦戦を強いられるものの、元NBAのネイナド・クリスティッチの活躍もあり8連勝を飾った。同じく8連勝のバルセロナ(スペイン)ではファン・カルロス・ナバーロが攻撃面を中心にチームを牽引する活躍を見せた。
● 第2回フットサル女子世界大会
12月5日から10日にかけて、第2回フットサル女子世界大会がブラジルのフォルタレザで開催された。今大会は8カ国が2グループリーグに分かれて予選を行い、各グループの1位と2位が自動的に準決勝に進出、3、4位のチーム同士が下位トーナメントに回る形式で行なわれた。
日本代表はポルトガル(0―4)、ロシア(0―1)、アルゼンチン(1―1)とグループ予選を行ない、1分け2敗で下位グループへと回わった。予選の総括としては、3試合全体を通して決定力不足が浮き彫りになったものの、順位決定戦ではベネズエラ、アルゼンチンを破り総合5位という結果に終わった。
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なお、決勝戦ではブラジルがスペインを激しい延長戦の末に4―3で下しており、大会2連覇を達成した。3位決定戦ではポルトガルがロシアを3―0を下しており、男子フットサルを代表する強豪国の顔ぶれが、同じく女子大会の上位4カ国を占める結果となった。女子日本代表は目標の「ベスト4進出」こそ達成できなかったものの、近い将来に世界の強豪国と戦える日が来ることに期待を寄せたい。
● ラグビー、セブンズ・ワールドシリーズ・南アフリカ大会
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HSBC・ラグビー、セブンズ・ワールドシリーズの第3ラウンドとなる「南アフリカ・セブンズ」の決勝が10日にポート・エリザベス(南ア)で行われ、ニュージランドがホスト国の南アフリカと下し優勝を果たした。
3万人の観衆を動員した決勝戦は、地元の大観衆に後押しされた南アフリカが最後までリードを保ちながら優勢に試合を進めた。しかし、試合終了のホイッスル直前にまさかの大逆転劇を起こしたニュージランドが31―26の激戦を制した。また、3位決定戦ではサモアがイングランドを17―14で退けている。
この結果、HSBC・ラグビー、セブンズ・ワールドシリーズの勝ち点を51に伸ばしたニュージランドがフィジーと並んで首位に立っており、南アフリカ(48)、イングランド(47)らがその後を追っている。
<ショートコラム・スペインからの声>
スペインからの声・第五回 「個人の自由と責任」
by 馬場源徳/スペイン
ヨーロッパにはルームシェアという習慣が存在しており、一つの家を数人で貸しきったり、大きなアパートやマンションを、友人または他人同士で共同出費してシェアすることはごく普通の習慣である。日本のように個別で住むように設計されたアパートやマンションは、西ヨーロッパでは少数派であり、学生や30代ぐらいの人でも他人と物件をシェアして暮らすことは珍しくない。もちろん色々な人がいるので、問題が起こったりすることも少なくはないが、多くの若者が一度は経験する社会経験のようなものだ。日本とは違った風習で、若い学生などが他人と共同して生活することを覚えるという意味でも特徴的な習慣と言えるだろう。また最近では欧州経済危機の影響もあり、都市部におけるルームシェアの習慣の高齢化も進む傾向が見られている。
私も2010年の春、バルセロナの家で空いている部屋を貸しに出した経験がある。誰でもいいという事情ではないために、環境や食事に配慮して、スポーツ選手を優先対象にして募集してみた。募集を始めて間もなく、あるバスケット選手から3ヶ月間の滞在の希望があった。フィンランド出身のローラ・ラティネンさんというプロフェッショナルのバスケットボール選手で、現役8年目だという自己紹介をいただいた。どうやらオフシーズンを利用してスペインでの“夏休み”を過ごしに来るということで、私も喜んで彼女の短期滞在をお手伝いすることを約束した。そして、彼女がバルセロナに到着したのは2010年6月の中旬のことだった。
20代後半のローラさんは、バスケットでは母国の代表に選ばれるくらいの選手ということで、多くのタイトルを獲得しているチームに所属している。彼女が出場している試合のビデオなども見せていただいたが、すばらしい盛況ぶりで白熱した雰囲気の試合に感動を覚えた。長い金髪で、背も高く、端正な顔立ちでいたって上品なヨーロッパを感じさせる女性だが、確かにその大きな手と、広い肩幅などは男性顔負けとでも表現しようか、長年のトレーニングを思わせるものだった。話を聞けば、ローラさんは夏の3ヶ月を異国のバルセロナで過ごすということで、チームメートとは3ヶ月も練習しないという。私の方が心配して、現地のバスケットチームなどに連絡を取ろうかと彼女に尋ねたところ、「バスケットボールさえあれば大丈夫。チームがなくても問題ないはずよ」と全く心配していない様子であった。3ヶ月という期間は日本人の私の感覚では練習環境などがなければ不安で仕方ないような長い時間に思えるのだが・・・
何日間が過ぎて、共同生活の中で話をしていくうちに、私はローラさんの様々なプロ選手としての側面を理解することができた。彼女は、母国フィンランドの企業を提携しているバルセロナの企業に研修生として来たという。そして、その国際企業で毎日5時間ほど英語を使って仕事をするという。また夏の3ヶ月間、仕事だけではなく、スペイン・地中海での生活を満喫しに来たという。どうやら空いた時間はバルセロナのビーチで海水浴と日焼けをするらしい。再び心配になった私が「肝心のバスケットは?」と質問すると、「バスケットリングがある場所はある?」とやはり特には心配していない様子であった。
ローラさんがバルセロナに着いてから10日ほど過ぎて、私たちはバスケットボールを購入しに、市内のスポーツショップまで一緒に向かった。さすがにこの時ばかりは、彼女が細かく色々なボールをチェックしてから購入していたのが印象に残っている。ボールを掴んだり、指の上で回したり、撫でたり、ひっかいたり、重さを気にしたりと、“検査”をしている様子は印象に残った。それからは、週に1回ほどランニングがてらに付近の公園で音楽を聴きながら、フリースローやドリブルを簡単に復習する姿を見かけるぐらいであった。れっきとしたプロ選手でありながら、彼女の全くバスケット選手を連想させないその生活に私は何度も本当に驚かされた。家にいても全くバスケットの試合も見なければ、バスケットの話題は何も口にしないし。でも確かに週に1回の、公園でのフリースローやボール捌きを見ると、確かにプロ選手だと素人にでも分かるほどの腕前だ。
ローラさんは自分の「オン」と「オフ」ははっきり区別していると断言した。もちろんバスケットこそが彼女にとっての“パッション”で、プロ選手として生活できることに限りない幸せを感じていると言う。それでも、オフシーズンには個人の趣味や学業を精一杯追及することが彼女にとっての“楽しみ”だと表現した。オフシーズンの2、3ヶ月間、ぎりぎりまでバスケットに対する意欲を溜め込んで、いざシーズンを迎えたらエネルギーを全開するのだという。そして、シーズンによって事前合宿などに間に合わないような個人の用事がある場合は、「個人の責任」の下で体調やスケジュールの全てを調整するということである。実際バルセロナから帰国する時期には、もうチームでのプレシーズントレーニングは始まっているとのことだ。しかし、バルセロナでの某国際企業における研修は決しておろそかにせず、且つプロ選手として自覚を持って最後の2週間は空いた時間をバルセロナのジムや公園で1人でシーズンへ向けて準備をするということだ。
プロのスポーツ選手が一人でオフシーズンを利用して海外で研修を受け、チームメートと連絡も合同練習もせずに、シーズン開幕のぎりぎりまで海外で3ヶ月もの時間を自分のために過ごす。そして選手本人はチームと合流する時期に合わせて自己調整を行ない、クラブにとって問題とならないように自己責任を果たす。ローラさんに見られるような選手とクラブの間にある「独立した関係」は、欧州ではプロ、アマチュアに関係なく珍しいことではない。それは団体意識の強い日本から来ている私には、驚くような個人と団体との付き合い方である。
スペインでも屋外競技も室内競技も7月、8月(カテゴリーなどでは6、7月)が全て休みとなるチームがほとんどである。もちろん、プロの選手では講習会やクリニックなどの行事も多くあり多忙な選手も多いであろうが、やはり公式戦日程という観点からは2ヶ月は休みという状況がほとんどである。これらの国々のアマチュアやセミプロの休みも同じくらい長い期間で行なわれている。彼らもまた夏休みを特別に大切にしており、夏の2、3ヶ月はチームとは関係を持たずにプライベートでの時間を過ごすのである。家族と過ごす時間、旅行に出かける時間、怠ける時間、友人などとリラックスする、一緒に遊ぶ、お金を貯める時間、お金を使う時間、仕事(スポーツを含めて)をしない個人のための時間・・・その多くを「夏の充電期間」と考えているようである。
私は、フィンランドのバスケット選手であるローラさんが楽しそうに、それでも孤独に異国のスペインで自分の学業や休暇を追及する姿を見て「個人の尊重」、「個人の自由」という言葉の意味を考えさせられた。このような個人の尊重や自由は、やはり「個人の責任」を果たしてこそ成り立つものだろう。「団体の中での責任」を優先する私たち日本人とは対象的に、欧米の人々やアスリート達は、やはり「個人の責任」を全うすることが大前提であり思考の土台となっているようである。