ヨーロッパニュース一覧

2011-12-20

ヨーロッパ・ニュース Vol.164

2011/12/20


男子バスケ、ユーロリーグ第9節

 男子バスケットボールのユーロリーグはレギュラーシーズン第9節が行なわれ、いよいよ最終節を残すのみとなった。新たに2チームがベスト16入りを決めたものの、最終節には依然として5つの枠が残されており、最後まで接戦が予想される。


<CSKAモスクワのネイナド・クリスティッチ、安定したパフォーマンスでチームの9連勝に貢献>

 混戦が続くグループAでは、最終節に4つのチームが3つの決勝トーナメント進出枠を競い合うという非常に拮抗した状態が続いている。グループBでは破竹の勢いのCSKAモスクワ(ロシア)が強豪パナシナイコス(ギリシャ)を91―75と寄せつけず、怒涛の9連勝を飾った。グループCではレアル・マドリー(スペイン)がパルチザン(セルビア)に101―83と貫禄を見せつけ、前回のアウエーでの敗戦のリベンジを果たしている。なお、この試合ではキャロルとニコラが大活躍し、大量得点での勝利に貢献した。グループDではガラタサライ(トルコ)が安定した戦いぶりでベスト16を自らの勝利で引き寄せた。また、バルセロナ(スペイン)はモンテパッシ(イタリア)に74―77の接戦の末敗れ初黒星を喫したが、依然としてグループDの首位を維持している。



2012、FIFAフットサル・ワ-ルドカップ(W杯)欧州予選


<ベテランと若手の融合も上手く進み、死角なしのスペイン代表>

 フットサル男子、2012年にタイで開催されるFIFAフットサル・ワ-ルドカップ(W杯)に向けての欧州予選が各地で行なわれ、最終予選の顔ぶれが次第に明らかになってきた。欧州28カ国の代表が本大会への出場枠7つをかけて争うことになるが、最終予選(プレーオフ)は来年の3月末から行なわれる予定となっている。

 現在行なわれているヨーロッパ予選ではスペイン、イタリア、ロシア、チェコ、セルビア、ポルトガル、ウクライナなどが予選を1位で通過、プレーオフ進出を決めている。なお、2010年の欧州選手権を制覇したスペインは現在6年以上に渡り、107戦無敗(PK戦を除く)という黄金時代を築こうとしており、ヨーロッパを代表する優勝候補として前回準優勝に終わったブラジル大会への雪辱が期待される。

 なお、2008年に行なわれたブラジル前大会は、決勝戦でブラジルがスペインをPK戦の末に下しているが、来年のタイ大会でも多くの好勝負が期待される。




フィールドホッケー男子、2011年度MVPが決定


<9月に膝の故障から復帰を果たし、受賞を果たした32歳のジェイミー選手>

 フィールドホッケー男子、2011年に最も活躍した選手に贈られる年間最優秀選手賞が決定した。今年度のMVPにはホッケー・チャンピオンズトロフィーでも得点王に輝いたジェイミー・ドワイヤー選手(オーストラリア・4試合/7得点)が3年連続の受賞を果たした。また、ジェイミー選手は2004、2007年にも同賞を獲得しており史上最多5度目の受賞という快挙達成となった。2004年オリンピック・アテネ大会でも優勝を果たしたジェイミー選手は、来年のロンドンオリンピックに向けて2度目となるオリンピック金メダル獲得に意欲を見せている。

 なお、年間最優秀選手・ヤング賞には22歳にして強豪オーストラリアの守備の要として活躍するマテュー・スワン選手が選出されている。



ドイツ女子サッカー、日本人選手情報

 サッカー女子ドイツ1部リーグは18日、日本代表DF熊谷紗希が所属するフランクフルトがアウエーでエッセン・シェーネベックと対戦し、試合終了間際の2連続得点などもありフランクフルトが3―0で勝利した。なお、熊谷は後半25分から出場している。

 また、18日に予定されていたFW永里優季が所属するポツダム、FW安藤梢のデュイスブルクの試合はいずれもピッチ状態が良好ではないために延期となった。



2011年女子ハンドボール、ワールドチャンピオンシップ

 ロンドン五輪出場権をかけた2011年女子ハンドボール、ワールドチャンピオンシップが18日に幕を閉じた。南米・ブラジルで行なわれた本大会、準々決勝に出揃った8カ国中の6カ国がヨーロッパの代表となったが、開催国のブラジルおよびアフリカのアンゴラもベスト8に進出した。


<優勝に輝いたノルウェー、ベスト4を欧州勢が独占する結果となった>

 注目の決勝戦ではフランスを32―24で破ったノルウェーが12年振りの優勝を果たし、ワールドチャンピオンシップ、オリンピック、ヨーロッパチャンピオンッシップの合計優勝回数を8とした。一方、敗れたフランスは2009年にロシアに敗れて以来、2連続での準優勝で優勝には手が届かなかった。また、ノルウェーの本大会優勝により、EHFユーロ準優勝のスウェーデンにもロンドン五輪出場資格が与えられることとなった。

 準決勝ではスペインがGKのシルビアの大活躍もあり、デンマークの猛攻を防いで24―18で破り、ワールドチャンピオンシップ初めてのメダル獲得で銅メダルを手に入れた。一方のデンマークにとっては、攻勢が続いていた後半だけに、勝利を逃す悔しい結果となった。

 なお、日本代表は4位に終わったデンマークと決勝トーナメント一回戦で対戦すると、延長戦にもつれ込む大接戦の末に22―23で敗れている。白熱した一戦は、日本が最後までリードを保ったものの最後の決め手に欠くと、試合終了間際に同点に追いつかれてしまう。延長戦の末敗れた日本代表だが、北欧の強豪相手の健闘も光った。

<8位までの順位は以下の通り>

1・ノルウェー

2・フランス

3・スペイン

4・デンマーク

5・ブラジル

6・ロシア

7・クロアチア

8・アンゴラ


<女子サッカー、スコットランド協会が推進する拡大活動>


<スコットランドでも拡大する女子サッカー振興活動>


 スコットランド・サッカー協会(SFA)は13日、同国内での女子サッカーの発展および活動拡大に向けて、新たに6名の女子サッカー管理委員を任命した。スコットランド政府の協力を受け、地域活性化プログラムの一環として取り組まれている“女子サッカー振興活動”では、「女子サッカー選手の新規登録」、「新規女子サッカークラブの設立」、「サッカー環境の整備と発展」などを大きな目標として掲げて活動が続けられている。

また、スコットランド・サッカー協会は、国内での女子サッカー人口が年々増加しているものの、多くの選手が正式なクラブでプレーする環境に恵まれていないことを指摘、改善に取り組んでいる。なお、同国内には約2万7000人の女子サッカー選手が活動しているが、正式なサッカークラブで活動する女子選手は1500名にとどまっている。
 また、同協会の具体的な目標として、毎年1500人の新規登録選手を募ると同時に、国内各地域における女子サッカーの設備、環境の大幅な向上に取り組むことを表明している。スコットランド政府の援助を受けて、新規の女子クラブ設立などにも力を注ぎ、結果として地域活性化などにも貢献する目的がある。

パドルテニス、スペインや南米で大流行


<“パデル”では四方を強化ガラスのような壁で囲んで行なわれる。小さなコートで身体的負担もテニスに比べては少なく、楽しみやすい側面を備えている>

 パドルテニス(または“パデル”)と呼ばれるラケットを用いたスポーツが欧州ではスペイン、イタリア、フランスを中心に、また中南米ではアルゼンチン、チリ、ウルグアイ、ブラジル、メキシコなどで盛んに行なわれている。1970年代中頃にメキシコで発明されたパデルは、スペインのリゾート地経由でイギリスなどにも普及するなど、多くの国々への普及化が続いている。通常は二人一組(ダブルス)で、テニスコートの半分ほどの縦20・横10メートルの閉鎖された空間で行なう。

 パドルテニスはテニスのスカッシュに比べると肉体的な負担が少なく、年齢やテクニックにかかわらず楽しむことができることが特徴とされる。多くの人が30分もあればプレーの要領をつかむ事ができるとも言われ、楽しみやすさが普及の鍵ともなっている。なお、パデル強豪国にはスペイン、ブラジル、メキシコなどがあげられるが、世界大会優勝最多国はアルゼンチンとなっている。また、スペインなどでは多くの学生や女性がこのラケットスポーツを気軽に楽しんでおり、多くのスポーツ施設や娯楽施設にもパデルを楽しむ人々を見かけることができる。


<ショートコラム・スペインからの声・第六回>


スペイン・フットサル指導者レベル1資格取得のための講義

『Global・グローバル』と『Analitico・アナリティコ』のトレーニング

By 鈴木隆二選手(スペイン・フットサル2部、マルトレイ所属)

 僕は公式戦の試合日程の合間をぬって何度かスペイン・フットサル指導者資格レベル1の講義を受講した経験がある。

 各々の講師は自分の科目に対して独自の考えで講義を進める。講師は自分で研究したテーマや独自の考えを、一般的なテキストを使わずに展開していくことがほとんどである。講師がスポーツ現場で活躍している場合や、該当種目の経験が豊富であればあるほど内容は面白くなる。

 授業の様子は一言でいうと“たいへんにぎやか”である。それは毎回、講師と受講生が各テーマについて議論を始め、様々な話題がクラス中を巻き込んで広がるからである。あちこちでテーマについて自分の体験や理念をもとにした議論が行われる。時には大騒ぎになる。受講生は自分の経験談や自己解釈した例をはっきりと主張する。中には疑問に思わせる主張もあるが、主張する受講生はまったく気にしない。主張をすることで講義に参加している。

 受講生は講義中でも電話が鳴れば外に出て電話に対応する。それに対して講師は全く注意しない。議論はその間も途切れることなく続いていて、違和感がまったくない。あちこちでテーマについて自分の体験や理念をもとにした議論が行われた後、
 最終的に講師がその分野の原則を説明し、その原則に沿ってある程度の解決策を示す。それぞれが強い主張を持っている為、「原則」というものが、議論をまとめるのにとても重要になってくる。

「Tecnica・テクニカ=技術」

 フットサル技術に関する科目は、元スペイン代表で過去にスペイン2部リーグを指揮した経験のあるカルロスと、スペイン代表第二監督のフェデが共同で、2回にわたって講義と実技を担当した。僕が最も注目した講義は、各技術項目(パス、ボールコントロール、ドリブル、パスの受け方、フェイク、一対一、シュート、etc)のトレーニングを、どの様にして『Analitico(分析的)からGlobal(総合的)な内容へと展開』していけばよいかというものであった。そしてその講義をピッチ上で実際に実践形式を通し行う内容であった。

 スペインフットサルにはAnalitico(分析的)な練習とGlobal(総合的)な練習という2種類の技術トレーニング方法が区別されている。ひとつひとつの技術練習項目をマスターさせる場合にも、指導者には、それぞれの技術項目毎にAnalitico(分析的)な練習だけでなく、Global(総合的)な練習へと展開させていくことが求められている。例えば達成したい技術的項目が『シュートの精度』の場合は、シュートの精度を向上させるため、Analitico(分析的)な練習だけでなく、状況判断力を要求するGlobal(総合的)な練習へと展開していくことが、シュート技術の獲得には欠かせないとされている。

 僕が受けた講義では、まず受講生で二人組みを作る。次に講師はどの技術的項目のトレーニングについてAnalitico(分析的)な練習とGlobal(総合的)な練習として研究するかの指示を出す。指示を与えられた技術的項目について、各グループは自分達で議論しながら、トレーニングメニューを作成して発表する。発表の方法は、各グループが作ったトレーニングメニューに従い、その他の受講生全員で実際に実践トレーニングしてみるというものだ。

 受講生は、例えば「パス」という項目を与えられる。最初は二人で向かい合っての単純なパス交換から始め、徐々にパスを行なう選手の人数を増やしてみる。そして複数のマーカーを配置して、パスを出した人は『次にどこへ移動したらいいのか』、『ボール保持者は次に誰にパスを出したらいいのか』などの判断材料が必要になるメニューを作成してトレーニングを複雑化させていく。
 これはどの項目のどのグループでも似た様な展開になっていた。

 作成中に担当講師から「Analitico(分析的)な練習とGlobal(総合的)な練習の正しい定義がしっかりと反映させていない内容だ」、などと何度も指摘される。講師はどのグループにも、「いつ、どこからAnatilico(分析的)な練習の段階からGlobal(総合的)な練習の段階に入ったのか?」と質問していた。

 多くの受講生が選手の人数や使用するボール、マーカー、ビブスの数が多くなる段階でGlobal(総合的)な練習の段階に入ったと主張していた。その度に講師から「それはGlobal(総合的)な練習ではなく、Analitico(分析的)な練習の段階である。」又は「それは既にGlobal(総合的)の段階に入っていてAnalitico(分析的)ではない」と指摘されていた。

ここで講師がAnaliticoとGlobalの定義を説明する。

 「Analitico(分析的)な練習」とは、誰もが次の展開を予測できる内容の練習内容。
 「Global(総合的)な練習」とは、誰もが次の展開を予測できず、状況判断が求められる練習内容。

 自分も含めてほとんどの受講生は「状況判断が求められる内容のものがGlobal(総合的)な練習である」と講義の段階で学んでいたので、これらの定義はすでに知っていた。

 その為受講生側から、「選手やボール数、ピッチのサイズ、マーカー等の用具の数や種類を増やすことで次の展開を予測するのが難しくなり、状況判断が求められる様になっていくのではないか?」と質問が出る。
その質問を受けた講師は「それでは何が加わった時に状況判断が求められる様になるのか?」と逆に質問した。

 講師の説明は「敵が一人でも加わった時に、初めて状況判断が求められるようになる。」「敵が一人でも居れば、どんなに選手やボールの数が少なくても状況判断が必要になり既にGlobal(総合的)な練習である。またどんなに複雑な内容にしても敵が一人も居なければ、それは状況判断は必要とならずAnalitico(分析的)なトレーニングである」と言うものであった。
この定義説明で、多くの受講生は講師の原則をしっかりと理解した。
この定義説明の後は、ほとんどの受講生が原則を理解した内容で様々なトレーニングメニューを作成した。内容によっては講師が「それは新しくて良い発想だ!今度自分も使わせてもらう」と言うものもあった。カルロス講師が「今日の講義でひとつ学んだ」と言っていたのが印象的だった。

 僕はスペインではスポーツのトレーニングの内容を作成する時だけにAanalitico(分析的)な練習とGlobal(総合的)な練習が存在しているわけではないと思った。それはフットサル指導者資格の講義の進め方にも貫かれ、存在していた。
各講師が独自の価値観を持ってその各科目の授業内容を構成する。生徒もそれぞれの価値観や経験、過去の例を持って積極的に発言し授業に参加する。

 講師が準備した講義内容がAnalitico(分析的)な練習であり、受講生が主体性を持って率先的に授業に参加することでGlobal(総合的)な練習になる。講師と受講生は相互に影響を与え合いながら、講義が展開してく。それを通して講師は自分の原則を確かなものにしていく。
 僕はこうした実践形式の講義を通して、「何が加わると状況判断が必要となるか?」「何が加わるとGlobal(総合的)な練習になるのか?」、「なぜGlobal(総合的)な練習な状況が必要か?」、などが理解できたような気がした。