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2012-2-14

ヨーロッパ・ニュース Vol.169(特別編)

2012/02/14


INAC神戸バルセロナ遠征特集

 昨年ドイツで行なわれた女子ワールドカップでの優勝を機に日本では空前の女子サッカーブームが訪れているが、2012年の始動となるなでしこジャパンの始動に先立ち、プレナスなでしこリーグ2011年度のチャンピオンで全日本女子サッカー選手権とあわせて昨季2冠を達成したINAC神戸レオネッサが、1月30日から2月8日にかけ、スペイン・バルセロナへの遠征を行った。筆者は日本のテレビ局のコーディネーターとしてこの遠征に密着したのだが、NHKをはじめ日本の主要なテレビ局がこぞって取材に訪れ、2009年6月に中村俊輔選手(現横浜マリノス)がエスパニョールに移籍した時以来の空前の日本メディアフィーバーとなり、あらためて世界大会における優勝効果を実感させられた。
今回は、INACのバルセロナ遠征に現地のサポート選手として参加した小堺めぐみさんのコラムを通じて、同クラブの海外遠征を振り返ってみたい。


<INAC神戸レオネッサ、バルセロナ遠征帯同記>

C.E.エウロパ・レディース  小堺めぐみ

<写真右が小堺さん>

 今回の遠征には、なでしこジャパンのメンバーでもある澤、川澄、海堀、近賀、大野、田中、_瀬をはじめ、常盤木高校出身の新人でU-19代表の京川、仲田、またJFAアカデミー出身でU-19代表の田中などが参加し、2012年度の本格始動をスペインの地でスタートすることになった。バルセロナのC.E.エウロパ女子でプレーしている私は、幸いにもこの遠征にサポートメンバーとして参加し、INACの選手たちと10日間をともにする機会に恵まれた。この遠征を日を追って振り返り、感じたことを書いてみたいと思う。

1月30日(1日目)
 この夜、チームはバルセロナへ到着。バルセロナの空港にはINAC目当てに日本から大勢の報道陣が駆けつけ、日本での女子サッカー人気を今さらながらに実感した。

1月31日(2日目)
 午後からスペインでの初練習。4対2のボール回しに始まり、最後は11対11の紅白戦で終了。長旅後の練習とあってか、選手からは「ボールが足につかないね」という声も聞こえた。ここ数日、シベリアからの寒波のせいで、例年よりかなり冷え込む日が続いている。選手たちもかなり寒そうだった。

2月1日(3日目)

<日本人学校訪問を取材する日本メディア>

<前日記者会見の様子>

 午前中にはINACの5選手がバルセロナの日本人学校を訪問。約70人の生徒とゲームなどを通じて交流し、楽しいひと時を過ごした。その後、チームは地元のクラブであるエウロパのスタジアムで公開練習を行なう。バルセロナレディースとの試合前日ということもあり、終盤はハーフコートでのビルドアップの戦術練習、さらにフルコートで紅白戦を行い、実戦形式の練習をこなした。ここでも、日本 のメディアが大勢詰めかけたが、これにまじって現地メディアも取材に訪れるなど、注目度の高さが伺えた。その後、夕方には市内のホテルで澤選手、大野選手、星川監督が記者会見を行なったが、やはり、2011年度バロンドールの澤選手に質問が集中していた。

2月2日(4日目)
 遠征のメインでもあるバルセロナレディースとの親善試合“セイコーカップ”の日。試合会場のミニスタディに向かうバスの中ではテンションの高い音楽がかけられ、「音量下げて!」と声があがるほど。盛り上がるスタッフとは裏腹に、選手たちは心を落ち着かせ試合に臨もうとしていた。

<バルセロナレディース対INAC神戸マッチレポート>

<試合後インタビューに応える澤選手>

 INAC神戸の相手は、今季のスペイン・スーペルリーガで18勝1分無敗で首位を独走中のバルセロナレディース。緻密なパスワークを得意とする日西両チームの戦いに注目が集まった。
 ともに4-3-3のフォーメーションで臨む両チームだが、前半は互いに丁寧なプレーでボールをキープするが、なかなかシュートまで至らない。それでも前半14分、INACはMF南山千明が左サイドを抜け出し、韓国女子代表MFチ・ソヨンからの裏へ抜けるパスをコントロールして、ペナルティエリア手前から浮き球をループシュート。INACのこの試合最初のシュートは、大きな弧を描いてゴールネットを揺らした。先制したINACは、その後も右サイドを中心とした崩しでバルサゴールへ迫る。しかし前半終了間際の44分、PA左手前でFKを与えると、ゴール前の混戦から相手に同点ゴールを許してしまう。

 後半、リーグ戦真っ最中のバルセロナは2選手を残して全選手を交代。一方のINACはMF澤に代え、新人のFW京川舞を投入。バルセロナは、この試合で度々見られたINACのビルドアップのミスを付くが、得点に至らない。一方のINACも、MFチ・ソヨンを中心に攻撃を組み立て裏を狙ったスルーパスなどでバルセロナゴールを脅かすものの、シュートがポストに嫌われるなど決定機を逃す。バルセロナも終盤、ミドルシュートなどで会場を沸かしたが、スコアは動かず、そのまま試合は終了。注目の一戦はドローに終わり、2チームはセイコー杯を分け合った。

2月3日(5日目)
 この日は終日オフ。選手は観光に出かけ、バルセロナの町を満喫した。

2月4日(6日目)
 バルセロナ体育大学のグラウンドで午後からトレーニング。怪我の影響で別メニュー調整の選手もいたが、最後はきっちりと紅白戦で締めた。夜はリーガ・エスパニョーラのFCバルセロナ対レアル・ソシエダの試合を観戦。9万8千人を収容するヨーロッパ最大のスタジアム、カンプノウでの試合観戦に選手たちは大興奮。澤選手とINACの会長はFCバルセロナ幹部にVIPルームに招かれ観戦、選手、スタッフも特別席での観戦となった。試合は2-1でバルセロナが勝ったが、夜10時からの試合が終わる頃にはひときわ厳しい寒さに見舞われ、選手たちも凍えていた。

2月5日(7日目)

<ビーチトレーングの様子>

 午前中は会員制のマリンクラブ内にある砂浜でビーチトレーニング。ビーチバレーも取り入れ、負けたチームの選手が罰ゲームを行うなど、バルセロナでの最後のトレーニングは和気あいあいとした雰囲気の中で行われた。

2月6日(8日目)
 午前中に郊外にあるバルセロナ練習場を訪れ、バルセロナトップチームの練習を見学。澤選手は憧れのチャビからメッセージ入りのサイン入りユニフォームをもらい興奮気味だった。バルセロナの練習を間近に見たINACの選手たちは、イニエスタのパス回しの質、バルデスやピントら ゴールキーパーの足元の巧さに驚いていた。また、この日は別調整していたメッシとも記念撮影するなど、クラブ側からも手厚い歓迎を受けた。

2月7日(9日目)
 昼食にカタルーニャの冬の郷土料理であるカルソッツ(焼きねぎのようなもの)を堪能。上からねぎを口に入れる独特の食べ方に戸惑いながらも、選手たちは大満足。その後はバルセロナのオフィシャルショップや市内で買い物を楽しみ、思い残すことなくバルセロナでの最終日を終えた様子だった。

2月8日(最終日)
 早朝にバルセロナ空港に到着した選手たちは、10日間の滞在を終えて帰国の途に着いた。

遠征全体としては、練習・親善試合に加えて、フラメンコに始まり日本人学校訪問、バルセロナとの親善試合、レセプションパーティー、カンプノウでのバルセロナ観戦、ビーチトレーニング、海辺での食事、バルセロナの練習観戦、市内観光、買い物と、現地との交流・食事・サッカー文化を感じることのできる、とても充実して内容の濃い遠征といえるだろう。

<遠征を終えての感想>
 トレーニング全体の印象としては、練習はすべて若手とベテランに組分けされ、ベテラン選手は質をお互い高め合うように、若手は少しでも追いつくようにレベルをあげて欲しいという監督の意図があったように感じた。また、チーム練習後も居残りでボールを蹴ったり、自主的に走り込みや体幹トレーニングを行う選手、ランニングで近くのホテルまで帰る選手も見受けられたほか、ホテル内でも時間を惜しんで自主トレに励む選手の姿も見られ、個々の意識の高さ、日本一、世界一というプライドをひしひしと感じた。
 筆者自身は、3日目に練習を行ったエウロパというスペイン2部の女子チームでプレーしているが、周りのスペイン人選手に比べると、INACの選手は広い視野を持っており、正確なタッチや判断力など、どれをとっても質が高い。トラップ1つをとっても丁寧で正確だ。一方、スペイン人選手は、力の出しどころを自分で判断し、練習ではたいしたことがないように見えるのだが、実際に試合が始まると豹変し“戦えるチーム”になる。彼女たちの本番での強さに、日本のサッカー文化との違いを見た気がした。

フットサル: UEFAユーロ2012はスペインが4連覇

 クロアチアで行なわれていたフットサルの欧州選手権(UEFAユーロ2012)は11日にスペインとロシアの間で決勝戦が行われ、延長の末2ゴールでスペインが3-1でロシアを下し、4大会連続で通算6度目となる欧州王者に輝いた。 1996年、2005年に続き同大会で3度目の決勝での顔合わせとなった両者だが、過去2会の対戦と同様、今回もスペインに軍配が上がった。
 33分にプラのゴールで先制したロシアはそのままタイムアップ寸前までスペインを無得点に抑えるが、勝利をほぼ手中に入れた残り30秒にロサノのゴールを浴びて試合を振り出しに戻されると、延長に入ってからも2点を奪われ、スペインに逆転負けを許した。なお、3位決定戦では、準決勝でスペインに0-1で敗れたイタリアが地元クロアチアを3-1で下している。



フットサル: 2012年ワールドカップ・タイ大会、欧州プレーオフ組み合わせが決定

 2012年11月にタイで行なわれるフットサル・ワールドカップの出場権をかけた欧州プレーオフの組み合わせ抽選が11日に行なわれ、同じ日にユーロ2012優勝を決めたスペインはスロバキアと、準優勝のロシアはアゼルバイジャンとの対戦が決まった。欧州プレーオフは、昨年12月に行なわれたグループ予選の首位および2位チームがホーム&アウエーで対戦し、勝利した7チームがワールドカップ本選への出場権を手にする。

<欧州プレーオフ組み合わせ>
スペイン vs スロバキア
ロシア vs アゼルバイジャン
イタリア vs ノルウェー
ベラルーシ vs ポルトガル
スロベニア vs チェコ
ルーマニア vs ウクライナ
ハンガリー vs セルビア




ラグビー: 6カ国対抗戦第2節、ウェールズ、イングランドが2連勝

 ラグビーの6カ国対抗戦は11、12日に2試合が行なわれ、開幕戦でアイルランドを破り勢いに乗るウェールズがスコットランドを27-13で下したほか、イングランドも苦しみながらイタリアに19-15で勝ち、ともに開幕2連勝とした。なお、11日にパリのスタッド・ド・フランスで予定されていたフランス対アイルランド戦は、悪天候のため延期された。