ヨーロッパ・ニュース Vol.181
2012/09/11
● 女子バレー:全日本のエース木村沙織がトルコリーグの名門ワクフバンクへ
|
||||
|
||||
東レを退社し、トルコリーグの名門ワクフバンク・テュルクテレコム・イスタンブールへ移籍した全日本のエース木村沙織(26)が7日、成田からトルコへと出発した。
木村が挑戦するトルコリーグは、イタリア、ロシアなどと並ぶ女子バレー世界トップリーグのひとつで、近年は海外からも有力選手を集めるなどレベルアップしており、国際大会でも好成績を収めている。その証拠に、欧州ナンバーワンクラブを決定するCEV欧州チャンピオンズリーグではここ2年連続でトルコのチームが優勝しており(2011=ワクフバンク、2012=フェネルバフチェ)長年にわたりイタリアクラブ勢の牙城だった欧州女子バレーの勢力図を塗り替えつつある。
木村が移籍したワクフバンク・テュルクテレコムは、トルコリーグで優勝6回、欧州チャンピオンズリーグでも優勝1回(2011)、準優勝2回(1998、1999)を誇る名門クラブのひとつで、2008年から日本でもおなじみのイタリア人監督ジョバンニ・グイデッティ氏(女子ドイツ代表監督と兼任)の下、トルコ代表選手だけでなく、ポーランド代表のグリンカ、セルビア代表のブラセコビッチ、ニコリッチら世界レベルのプレーヤーを揃えており、木村といえどもレギュラーの座は約束されていない。ロシアへ移籍したものの出場機会がほとんどなかった栗原恵のように、いかに全日本で実績があろうとも、トルコリーグで活躍できる保証はないのだ。一方、昨シーズンから同じトルコリーグのフェネルバフチェでプレーする韓国代表のキム・ヨンギョンは、チームの大黒柱としてチャンピオンズリーグ初制覇に大きく貢献し、アジア人として初の大会MVPを獲得するなど成功を収め、欧州の厳しい戦いの中で一回り成長した。木村にとっては、身近にいるアジア人のライバルの存在はよい刺激になるはずだ。
強豪ひしめくトルコリーグでは厳しい戦いが待っている。ワクフバンクは、2004-2005シーズンを最後にリーグ優勝から遠ざかっている。リーグ戦17回の最多優勝を誇り、昨シーズンは4年ぶりに王座に返り咲いたエスキシェヒール、2012年のチャンピオンズリーグ覇者で、それまで3年連続リーグ優勝を続けてきたフェネルバフチェといったライバルたちが立ちはだかる中、木村には、チームを優勝に導く活躍を期待したい。
女子バレーの全日本経験者ではこれまでも、栗原、荒木、佐野、狩野らが海外リーグへ挑戦しているが、今季は木村の他にも、元全日本でNECを退団した伊野亜希子がアゼルバイジャンのアゼイル・バクーに移籍している。伊野は以前もフランスのカンヌでプレーした経験があり海外移籍は2度目となるが、アゼルバイジャンも、ラビタ・バクーが2011年のチャンピオンズリーグで準優勝するなど女子バレーに力を入れている新興国であり、この2人の日本人女子選手の欧州での挑戦に注目したい。
● スペイン危機:トップリーグ参加を辞退するクラブが急増
ロンドンオリンピック、夏季休暇が終わり、欧州では各スポーツのトップリーグが新シーズンを迎えようとしているが、深刻な経済危機に見舞われているスペインでは、スポーツからのスポンサー企業の撤退などが相次ぎ、今シーズンは、サッカーをはじめ主要スポーツで、遠征費用や選手への給与を払えないことなどを理由にトップリーグ参加を辞退するクラブが急増している。
テレビ放映権などである程度の収益が保証されている男子サッカーのトップリーグ、リーガ・エスパニョーラ(1部、2部)は、リーグ戦への参加を辞退するクラブこそなかったものの、一部のクラブで選手への未払いなどが問題になり、財政難から海外への主力選手の放出が増えた。当然ながら、新戦力の補強を控える傾向も顕著で、今年の夏の移籍市場でスペイン1部リーグのクラブが補強に費やした金額は、欧州5大リーグ(イングランド、スペイン、イタリア、ドイツ、フランス)中で最低となり、海外から高額で選手を獲得してきたこれまでの移籍市場とは様相を異にしている。
また、同国でサッカーに次ぐ人気を誇るプロリーグを持つ男子バスケットのトップリーグACBでは、今季からトップリーグに昇格を決めた2クラブが参加を辞退。さらに、残留組からも1クラブが新シーズンの参加見送りを決めたため、ACBは降格予定だった2クラブをトップリーグに残留させたほか、新たに1クラブを昇格させることで、なんとか昨シーズンと同じチーム数でのリーグ戦開幕を迎えることになった。その下のカテゴリーである2部リーグはさらに深刻で、3つのクラブが活動停止を決定。さらに4クラブが財政難から2部から3部への降格を申請し、今季のリーグ戦は、昨シーズンの18チームから大幅減の13チームで行うことを余儀なくされた。もともと運営が苦しかった女子バスケットリーグも同様で、トップリーグはチーム数こそ昨シーズンより1チーム減の13チームだが、何よりショッキングだったのが、過去リーグ戦8回優勝の名門クラブ、ロス・カセレスが今シーズン限りで活動を停止するとのニュースだった。2011-12シーズン、ロス・カセレスはクラブ史上最高の布陣でリーグ優勝、ユーロリーガ優勝の2冠を達成し、スペインと欧州の頂点に立ったが、その後になってクラブの活動停止が発表され、歓喜に浸っていたチーム、ファンは一気に天国から地獄に突き落とされることとなった。
スペインで3番目の人気を誇るプロリーグを持つ男子ハンドボールリーグASOBALも例外ではない。昨シーズン、名門シウダー・レアルがホームタウンをマドリードに転籍し、アトレティコ・マドリーの参加で再出発したのは周知のとおりだが、欧州リーグの常連であったサン・アントニオを含む3チームがトップリーグへの参加を辞退。2部への降格が決まっていたアンテケラは活動停止を決めた。また、先のオリンピックで銅メダルに輝いた女子ハンドボールのトップリーグも深刻だ。リーグ戦3連覇中で、2011-12シーズンには欧州チャンピオンズリーグを制したイチャコは、メインスポンサーの撤退、地域行政からの補助金カットによりプロチームとしての経営が困難となり、チーム内の大リストラを敢行。手始めに監督、コーチングスタッフを解任し、さらにはスペイン代表8選手、その他の国の代表5選手を含む主力16選手を他クラブに放出する大ナタを振るったのだ。今季もかろうじてトップリーグには残留したものの、大幅な戦力ダウンは否めず、苦しいシーズンとなりそうだ。
その他、プロである男子フットサルリーグでも、昇格組の2チームを含む5チームがトップリーグへの参加を辞退したため、2部リーグから新たに3チームを特別昇格させたが、今季の参加クラブは16チームから14チームへと減少。男女のバレーボールリーグでも、今季のトップリーグへの参加クラブがそれぞれ10チームから9チームへと減少するなど、各リーグのクラブとも深刻な経営難に直面している。いずれも世界トップレベルにあるリーグだけに、財政難による人材流出、国全体のスポーツ競争力の低下が懸念される。
● 男子ハンドボール:スーパーグローブ(世界クラブ選手権)はアトレティコがリベンジ
|
||||
カタールのドーハで開催されていた男子ハンドボールのスーパー・グローブ(世界クラブ選手権)は2日に決勝戦が行われ、欧州代表のアトレティコ・マドリー(スペイン)が、同じく欧州代表のキール(ドイツ)を28ー23で下し、今シーズンの初タイトルを獲得した。決勝は昨シーズンの同大会と同じ顔合わせとなったが、前回はキールに敗れており、アトレティコが1年ぶりにリベンジを果たした。
● 女子バレー:ロシア代表監督がホテルの自室から遺体で発見、自殺か
|
||||
8月に行われたロンドンオリンピックの女子バレーに出場し、金メダル候補と言われながら準々決勝でブラジルにフルセットで敗れ無冠に終わったロシア代表のセルゲイ・オブチンニコフ監督が、監督を兼任していたディナモ・モスクワがプレシーズン合宿を行っていたポレック(クロアチア)のホテル自室で首をつって死亡しているのが発見された。警察によると自殺の可能性が高いという。同監督は今年12月からロシア代表の指揮をとっていたが、オリンピックでメダルなしに終わった結果を厳しく非難され、悩んでいたと言う。
● ロンドンオリンピック:JTL加盟スポーツ団体全成績一覧
男子バレー
<準々決勝>
ブルガリア 3-0 ドイツ
ポーランド 0-3 ロシア
アルゼンチン 0-3 ブラジル
アメリカ 0-3 イタリア
<準決勝>
ブルガリア 1-3 ロシア
ブラジル 3-0 イタリア
<決勝>
ロシア 3-2 ブラジル
<3位決定戦>
ブルガリア 1-3 イタリア
<最終順位>
金 ロシア 銀 ブラジル 銅 イタリア
4.ブルガリア 5.ドイツ 5.ポーランド 5.アルゼンチン 5.アメリカ 9.オーストラリア 9.セルビア 11.イギリス 11.トルコ
女子バレー
<準々決勝>
ロシア 2-3 ブラジル
日本 3-2 中国
イタリア 1-3 韓国
アメリカ 3-0 ドミニカ共和国
<準決勝>
ブラジル 3-0 日本
韓国 0-3 アメリカ
<決勝>
ブラジル 3-1 アメリカ
<3位決定戦>
日本 3-0 韓国
<最終順位>
金 ブラジル 銀 アメリカ 銅 日本
4.韓国 5.中国 5.ドミニカ共和国 5.イタリア 5.ロシア 9.イギリス 9.トルコ 11.アルジェリア 11.セルビア
男子バスケット
<準々決勝>
ブラジル 77-82 アルゼンチン
アメリカ 119-86 オーストラリア
フランス 59-66 スペイン
ロシア 83-74 リトアニア
<準決勝>
アルゼンチン 83-109 アメリカ
スペイン 67-59 ロシア
<決勝>
アメリカ 107-100 スペイン
<3位決定戦>
アルゼンチン 77-81 ロシア
<最終順位>
金 アメリカ 銀 スペイン 銅 ロシア
女子バスケット
<準々決勝>
オーストラリア 75-60 中国
アメリカ 91-48 カナダ
トルコ 63-66 ロシア
フランス 71-68 チェコ
<準決勝>
オーストラリア 73-86 アメリカ
ロシア 64-81 フランス
<決勝>
アメリカ 86-50 フランス
<3位決定戦>
オーストラリア 83-64 ロシア
<最終順位>
金 アメリカ 銀 フランス 銅 オーストラリア
女子サッカー
<準々決勝>
イギリス 0-2 カナダ
アメリカ 2-0 ニュージーランド
スウェーデン 1-2 フランス
ブラジル 0-2 日本
<準決勝>
カナダ 3-4 アメリカ(延長)
フランス 1-2 日本
<決勝>
アメリカ 2-1 日本
<3位決定戦>
カナダ 1-0 フランス
<最終順位>
金 アメリカ 銀 日本 銅 カナダ
4.フランス 5.イギリス 6.ブラジル 7.スウェーデン 8.ニュージーランド 9.北朝鮮 10.南アフリカ 11.コロンビア 12.カメルーン
男子ハンドボール
<準々決勝>
アイスランド 33-34 ハンガリー
スウェーデン 24-22 デンマーク
スペイン 22-23 フランス
クロアチア 25-23 チュニジア
<準決勝>
ハンガリー 26-27 スウェーデン
フランス 25-22 クロアチア
<決勝>
スウェーデン 21-22 フランス
<3位決定戦>
ハンガリー 26-33 クロアチア
<最終順位>
金 フランス 銀 スウェーデン 銅 クロアチア
女子ハンドボール
<準々決勝>
ブラジル 19-21 ノルウェー
ロシア 23-24 韓国
スペイン 25-22 クロアチア
フランス 22-23 モンテネグロ
<準決勝>
ノルウェー 31-25 韓国
スペイン 26-27 モンテネグロ
<決勝>
ノルウェー 26-23 モンテネグロ
<3位決定戦>
韓国 29-31 スペイン
<最終順位>
金 ノルウェー 銀 モンテネグロ 銅 スペイン
男子ホッケー
<準決勝>
オーストラリア 2-4 ドイツ
オランダ 9-2 イギリス
<決勝>
ドイツ 2-1 オランダ
<3位決定戦>
オーストラリア 3-1 イギリス
<最終順位>
金 ドイツ 銀 オランダ 銅 オーストラリア
4.イギリス 5.ベルギー 6.スペイン 7.パキスタン 8.韓国 9.ニュージーランド 10.アルゼンチン 11.南アフリカ 12.インド
女子ホッケー
<準々決勝>
オランダ 2-2(SOC 3-1) ニュージーランド
アルゼンチン 2-1 イギリス
<決勝>
オランダ 2-0 アルゼンチン
<3位決定戦>
ニュージーランド 1-3 イギリス
<最終順位>
金 オランダ 銀 アルゼンチン 銅 イギリス
4.ニュージーランド 5.オーストラリア 6.中国 7.ドイツ 8.韓国 9.日本 10.南アフリカ 11.ベルギー 12.アメリカ