ヨーロッパ・ニュース Vol.216
2013/09/10
● 2020年オリンピック開催誘致に失敗したマドリードの失望
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9月7日、アルゼンチンのブエノスアイレスで行われたIOC総会で2020年のオリンピック開催地が東京に決まったが、通算5度目の立候補で、総会前の下馬評では最有力候補とも言われたマドリードが一次投票で早々と姿を消す”惨敗”を喫した。
この大会を経済回復の起爆剤としたかったマドリードだったが、その願いはかなわず、国民の間には大きな失望感が漂っている。
近年、国内が深刻な財政危機に見舞われているスペインの首都マドリードだが、招致レースの最有力と言われたイスタンブールが相次ぐデモなど政情不安から評価を落とし、東京も原発問題の懸念が払しょくされ切れない中、今年7月に行われたテクニカルプレゼンでフェリペ皇太子のスピーチがIOC委員の高い評価を得たことや、わずかではあるが経済情勢に回復の兆しが見え始めてきたことなどプラスの要因が重なり、ここへきて一気に本命に浮上した。
今回が3大会連続の立候補となるマドリードだが、前回の2016年誘致ではリオデジャネイロとの決選投票に残るなど票集めには自信があっただけに、決選投票にも進めずに敗戦したことは全くの予想外でかなりのショックを受けている。
2016年大会の候補地決定投票で決選投票まで進みながら敗退した時や、同じく5度目のオリンピック立候補となり、誘致レース序盤は開催地の最有力候補と言われたイスタンブールと比べても、より悲壮感が漂っている。これは、地元でのオリンピック開催を切望していたスポーツ界だけでなく、2020年オリンピック開催がもたらす莫大な経済効果や雇用回復を見込んでいた政財界、一般市民の期待がいかに大きかったかを物語っていると言えよう。
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また、失望と同時に一部の市民の間では八つ当たりに近い怒りの声も噴出しており、その矛先はマリアーノ・ラホイ首相、マドリード市長アナ・ボテージャ女史、マドリード五輪招致委員会、はたまた決定主体であるIOCや票を確約しておきながら”裏切った”とされる委員、さらには開催地に決まった東京にまで向けられている有様だ。ただし、このような誹謗中傷が決してスペイン人の総意ではないことを付け加えておきたい。
<敗戦分析>
マドリードの敗退が決まると早速、国内外の多くのメディアが敗戦分析を始めた。まず注目されたのが今回のマドリードの得票数だ。一次投票では東京が42票で抜け出し、イスタンブールとマドリードがともに26票で引き分けたため両都市間での投票が行われた結果、49-45でイスタンブールが決選投票に進むことになったが、マドリードにとってこの26票というのは、過去2回の候補地選考投票の中で最低の数字となった。最終的には50票を見込み、一次投票突破は確実と踏んでいたマドリードにとっては、まさに大誤算だったのだ。
マドリードにとって最大のマイナス要因となったのが財政危機であることは疑いの余地がないが、他にも、相次ぐドーピング問題の発覚と対応の遅れ、IOC名誉会長サマランチ氏の死去による政治力の低下、2024年オリンピックをパリで開催したい勢力による欧州勢つぶしなどが取りざたされている。また、2016年のリオ五輪を前に会場の工事が大幅に遅れていることに不安を感じているIOCが、先行き不透明な財政難に苦しむマドリードよりも資金面に不安がない東京を推したとの見方もある。また、直前のプレゼンの差が明暗を分けたとの意見も多くみられ、招致委員会の一人として最終プレゼンを行ったマドリード市長アナ・ボテージャ女史が戦犯扱いされている。その一方で、マドリードを勝たせないIOCの陰謀だという感情的な意見もある。テニスのトッププロであるフェリシアーノ・ロペスはツイッターで、「IOCはまたもやスポーツ的な観点を軽視した汚いやり方で恥ずべき決定を下した」、「マドリードが敗退した理由は(IOC委員への)収賄と経済問題、それにプエルト・オペレーション(自転車チームの組織的なドーピング事件)が原因としか考えられない」という過激な意見を掲載した。IOC委員の一人でマドリード招致委員長でもあるアレハンドロ・ブランコ氏は、「完璧なプロジェクト案、市民の高い支持率、施設の大部分が完成済みである事実、どこよりも積極的なロビー活動、ベストなプレゼンを行ったことなどを考えると、我々の敗退は論理的に説明できない」、「IOCはおそらく欧州以外のマーケットでの開催を望んだのだろう」などとコメントし、自分たちが行ってきた招致活動に非はなかったことを強調した。
<2024年のオリンピック開催地立候補には否定的>
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今回の落選を経て、スペイン最大の発行部数を誇るスポーツ紙「マルカ」が2万人を対象に行ったアンケートによると、回答者のうち77.5%が2024年のオリンピック開催立候補に反対と言う結果が出た。
2024年大会には、隣国で1924年大会以来100周年を迎えるパリをはじめ、同じ欧州のイタリア(ローマ、ミラノ)、ドイツのベルリン、その他の地域でも、中東のドーハ、北米(ボストン、ダラス、フィラデルフィア、ロサンゼルス、サンディエゴ、ワシントン、トロント)、アジア、アフリカからも複数の重要都市が立候補を検討していると言われ、マドリードは分が悪い。正式な決定は下されていないものの、現時点ではマドリードの2024年大会への立候補はないという見方が大半だ。
<2022年の冬季オリンピックにバルセロナが立候補か>
マドリードが2024年のオリンピック候補地に立候補しない可能性がささやかれる中、スペインではこれに代わって2022年の冬季オリンピックにバルセロナを立候補させる案が浮上している。2010年には当時のバルセロナ市長がピレネー山地でのオリンピック開催に前向きな姿勢を見せたが、その後を継ぐ現職の市長はバルセロナの単独開催には懐疑的で、フランスを含む”ピレネー地域”での開催が現実的との見方を示している。
2022年の冬季オリンピック立候補の受け付けは今年6月から11月の14日までとなっており、オリンピック史上初の同一都市による夏冬五輪開催を目指すかどうか早急な決断を迫られている。
● 女子バレー: 欧州選手権2013は決勝ラウンドへ、ドイツ、ベルギーが好調
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9月6日からドイツとスイスの共催で行われている女子バレーボールの欧州選手権2013はグループリーグによる予選ラウンドを終了し、いよいよ決勝ラウンドに入る。予選ラウンドのプールAでは地元ドイツが躍進。トルコ、オランダという強豪相手に連勝し首位通過を決めた。一方、プールBではベルギーの健闘が光った。ベルギーは最終戦で同じく2連勝のイタリアを3-1で下して首位を確定した。プールCは予想通りロシアが3連勝、プールDはセルビアがチェコと2勝1敗で並んだがセット数でセルビアが首位となった。その他、クラブチームの活躍が著しいアゼルバイジャンは3連敗であえなく予選ラウンド敗退が決まったが、ベラルーシがそのアゼルバイジャンを下して同国史上初となる欧州選手権での勝利を挙げ、決勝ラウンド進出も果たした。
● 男子バスケット: ユーロバスケ2013、イタリアが早々と決勝Rへ、ロシアは崖っぷち
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スロベニアで行われている男子バスケットボールのユーロバスケット(欧州選手権)2013は予選ラウンド4試合が終了し、残り1節で決勝ラウンド進出チームが出揃う。残り1節の時点で、前回優勝国のスペイン、準優勝のフランスを抑え4連勝で早々と決勝ラウンドの切符を手に入れたのがイタリアだ。グループAのフランス、グループCのスペインは首位につけているものの、ともに1敗を喫している。これに対しグループDのイタリアは、強豪ロシア、トルコ、ギリシャに連勝し、最終節を待たずに4戦全勝で首位を確定した。これと対照的なのが前回大会3位のロシアだ。ロシアは初戦でイタリアに敗れると、その後もギリシャ、スウェーデン、フィンランドに連敗し、現在4連敗でグループD最下位に沈んでいる。最終節でトルコに勝利すれば、わずかながら決勝ラウンド進出への望みが残るものの、予選ラウンド敗退の崖っぷちに追い詰められている。