ヨーロッパ・ニュース Vol.235
2014/02/18
● ソチ五輪男子アイスホッケー: Gラウンドでアメリカがロシアとの死闘を制す
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ソチオリンピックの男子アイスホッケーはグループラウンドが終了し、各グループ首位(アメリカ、カナダ、スウェーデン)プラス2位のうち最上位につけたフィンランドの4チームがまずは準々決勝進出を決めた。
このラウンドで最も世界の注目を集めたのが15日に行われたグループAのロシア対アメリカ戦だ。
予選ラウンドとはいえ、ともにNHL(米ナショナルホッケーリーグ)のスタープレーヤーを揃えるドリームチーム同士の対戦は期待を裏切らない好ゲームとなった。試合は両者一歩も譲らず2対2のまま延長へもつれ込むが60分戦っても勝負はつかず、GWS(ゲームウィニングショット)も8人目まで突入。最後はアメリカのFWオーシーがシュートアウトを決め、アメリカが地元の声援を受け気合いっぱいのロシア相手に死闘を制した。アメリカは続くスロベニア戦も5-1で勝利して全勝の首位で8強入りを決めたが、ロシアは最終戦でスロバキアに苦戦。延長戦の末1-0で勝利してグループ2位となったものの勝ち点でグループB2位のフィンランドを勝ち点で上回れず、準々決勝進出を賭けたプレーオフでノルウェーと戦うことになった。国の威信をかけた一戦に敗れたロシアはなんとかアメリカにリベンジしたいところだが、両者が勝ち上がれば決勝で再び顔を合わせる可能性がある。とはいえ、その前にフィンランド、スウェーデン、カナダといった強豪国を倒さねばならない。
一方、グループBの最終戦でも優勝候補カナダとフィンランドが激突。カナダが延長戦を制して2-1で勝利した。また、グループCではスウェーデンが3連勝で首位通過を決めている。
● ソチ五輪女子アイスホッケー: スマイルジャパンは4連敗で7位決定戦へ
男子と異なり出場チームが少ない女子アイスホッケーの予選は、グループAに世界ランキング上位の4チーム、グループBにその他4チームが入りグループラウンドを行い、グループAの上位2チームが直接準決勝に進出する一方、グループAの3位、4位チームとグループBの上位2チームが準々決勝を戦う”ブラケット方式”が採用されている。
強豪チーム同士が顔をそろえたグループAでは、世界ランキング1位カナダが3連勝。そのカナダに敗れ2勝1敗の世界ランキング2位アメリカも順当に準決勝を決めた。一方、3位フィンランドは準々決勝でグループBの2位のスウェーデンと、4位スイスはグループBの1位ロシアと対戦。その結果、フィンランドを4-2で下したスウェーデンと、ロシアを2-0で破ったスイスとが準決勝でそれぞれアメリカ、カナダと対戦することが決まった。ここまでの対戦では戦前の予想通りカナダ、アメリカの圧倒的優位は変わらず、金メダルは両者の争いになりそうだ。
<スマイルジャパンは全敗>
一方、1998年の長野オリンピック以来、初めて予選を突破して五輪出場を果たした日本代表スマイルジャパンだったが世界の壁は厚く、グループラウンドで3連敗(対スウェーデン0-1、対ロシア1-2、対ドイツ0-4)を喫すると、その後の5位決定戦でもロシアに3-6で敗れて4連敗となった。18日に最終戦となる7位決定戦で再びドイツと対戦することになり、悲願のオリンピック初勝利を目指す。
● サッカー: スタジアムの平均観客動員率に見る主要リーグの浮き沈み
先週、スペインのスポーツ新聞『ムンド・デポルティーボ』紙に興味深いデータが掲載されていたのでここに紹介したい。
この記事は、欧州サッカーの主要トップリーグ(プレミアリーグ=イングランド、リーガ・エスパニョーラ=スペイン、セリエA=イタリア、ブンデスリーガ=ドイツ、リーグアン=フランス)を対象に、それぞれのリーグをデータで比較したものだ。中でも面白いのが、各リーグのスタジアム別平均観客動員率というデータだ。
このデータによると、スタジアムの平均観客動員率が最も高いのはイングランド1部のプレミアリーグで、なんと94.8%(平均観客動員数36533人)にも上る。さらに、プレミアリーグで最も人気がある5クラブに限って言えば、マンチェスター・ユナイテッドが99%(75167人)、アーセナルが98%(59248人)、マンチェスター・シティが99%(47107人)、リバプールが98%(44698人)、チェルシーが99%(41191人)と、いずれのチームのスタジアムでも毎試合ほぼ100%の観客席が埋まっている状況だ。実際、これらのチームのホームゲームでチケットを入手するのは非常に困難である。とはいえ、イングランドではビッグクラブだけでなく中小の地方クラブを含めた全体の平均動員率でも9割を超えていることにこそ着目すべきだろう。プレミアリーグは、地方の小さなクラブにも毎週試合を見に行く熱心な地元サポーターが多いことで知られているが、今回のデータはそれをあらためて裏付けることになった。このプレミアリーグに次いで2位につけたのが、平均観客動員率89.87%、平均観客動員数42907人のドイツ・ブンデスリーガだ。数年前まで、人気、実力ともにイングランド、スペイン、イタリアに大きく水を空けられ格下扱いされていたドイツサッカーだが、今やその立場は完全に逆転している。バイエルン・ミュンヘン(平均動員率98%=平均動員数71014人)、ボルシア・ドルトムント(99%=80536人)、シャルケ04(99%=61568人)を筆頭に、国内の人気クラブはここのところ欧州の大会で好成績を収めているし、ドイツW杯のおかげもあり、どんな地方都市にも近代的なスタジアムとピッチがあり、快適に観戦を楽しむことができる。とはいえ、イングランドと同様にドイツも昔から地元密着型でスタジアムの観客動員率は高く、ここへきて急激に客足が伸びたというわけではない。
むしろ、かつて栄華を極めたリーグの急激な凋落ぶりは深刻な問題と化している。プレミアリーグ、ブンデスリーガと対照的に、ここ数年、観客動員率の低さにあえいでいるのがリーガ・エスパニョーラ(以下リーガ)とセリエA(以下セリエ)だ。リーガの現在の平均観客動員率は68.61%、平均観客動員数は26781人でスタジアムの入りは7割に満たない。さらにこの数字は、世界的な人気クラブであるFCバルセロナ(72%=71731人)とレアル・マドリード(86%=73182人)や、スペインで最も地域密着型のアスレティック・ビルバオ(96%=35072)、熱狂的なサポーターで知られるアトレティコ・マドリード(84%=45885人)など一部の人気クラブを除けば、さらに下がる。ここ数年の経済危機でクラブ間の財政格差が広がり有力選手がバルセロナ、レアル・マドリードに集中したことで、2強以外のチームの試合は空席が目立つようになった。この2強ですら、今ではスタジアムが満員になるのは年間数試合のみだ。また、熱狂的なファンが多いことで知られかつては高い観客動員率を誇っていたセビージャやベティス、バレンシアといった地方クラブでは、会費を払えなくなりスタジアムの年間シートを手放すソシオ(クラブ会員)の数が増えている。こうしたサポーターのスタジアム離れには国が直面している経済的な要因も大きく影響している。80年から90年代にかけて名実ともに世界一のリーグだったセリエAの凋落ぶりも、このデータに如実に表れている。セリエAの平均観客動員率は49.73%(23672人)で、今や5割を切っているというのだから驚きだ。昨年、新スタジアムが完成したユベントス(83%=37897人)を除けば、長友、本田が移籍し日本で話題になっている名門インテル・ミラノやACミランといったクラブも(両チームは同じスタジアムを使用)例外ではない。財政難によるスター選手放出やチームの成績低迷などから観客離れが進み、平均観客動員率はそれぞれ58%(46525人)、45%(37020人)と散々な状況だ。さらに、イタリアではスタジアムや施設の老朽化が進み、ピッチコンディションもきわめて劣悪だ。こうしたインフラの不備もファンがスタジアムに足を運ばなくなった傾向に拍車をかけている。
プロスポーツが興業である以上、劣悪な環境のスタジアムでクオリティの低いパフォーマンスを見にわざわざ金を払ってスタジアムまで足を運ぼうとは思わないだろう。
たしかに、国全体が抱える経済危機の余波を受け、クラブやサポーターのふところが厳しくなっていることが”スタジアムからの客離れ”を招いた要因のひとつではあるが、この先たとえ財政状況が好転したとしても、豊富な資金を持つ一部のビッグクラブに頼ることなく、地方の中小クラブを含めたリーグ全体のレベルアップと魅力を高めるためのしくみを作らなければ、今後も一度離れた観客を再びスタジアムに呼び戻すのは難しいだろう。
● 女子サッカー: なでしこジャパンの大野と近賀がアーセナル・レディースへ移籍
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なでしこジャパンのメンバーとして2011年の女子W杯、2012年のロンドン五輪に出場し、それぞれ優勝、準優勝を経験したMF大野忍(30)とDF近賀ゆかり(29)が、イングランド女子スーパーリーグのアーセナル・レディースに移籍することが決まった。
大野は昨年夏にフランスのリヨンを退団し、前年チャレンジリーグに降格したASエルフェン狭山(現エルフェン埼玉)に入団すると、チームのなでしこリーグ復帰に貢献した。近賀はINAC神戸からの移籍となる。イングランドの女子トップリーグでは、すでにチェルシー・レディースでプレーする大儀見優季に続く日本人女子選手となる。
アーセナル・レディースは現在、イングランド女子スーパーリーグで3位につけており、欧州女子チャンピオンズリーグでも準々決勝に勝ち残っている。
● 男子ハンド: CLでバルサがPSGに大勝、キールはドロー
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男子ハンドボールの欧州チャンピオンズリーグはグループラウンド第9節が行われ、グループCで首位FCバルセロナ(スペイン)対2位PSG(フランス)の注目の一戦が行われた。
フランス代表カラバティッチ、マケドニア代表ラザロフ、ブルガリア代表ルテンカ、スペイン代表ビクトル・トマスら各国代表の主力級を擁するバルセロナに対し、豊富な資金にものをいわせた大型補強で今季に臨んだPSGも、先の欧州選手権でMVPに輝いたフランス代表アバロ、デンマーク代表ハンセン、クロアチア代表ボリ、アイスランド代表グンナーソンらメンバーの顔触れでは負けてはいない。ところが、ふたを開けてみれば試合は一方的な展開となった。序盤こそリードを奪ったPSGだったが、徐々にペースを取り戻したバルセロナが着実にゴールを重ねて逆転すると、ここから一気に突き放し19-9と大差をつけて前半を折り返す。PSGは精彩を欠きミスが目立つハンセン、アバロに代わってアントニオ・ガルシア、エムティアらが気を吐くが、バルセロナの固い守備を最後まで崩すことができず、38-28の大差で敗れた。バルセロナはこれでグループラウンドの対戦成績を8勝1分けとし、リーグ戦を含む今季無敗をキープしている。バルセロナにとって唯一の誤算だったのは、試合途中に守護神のステルビックが負傷退場したことだろう。一方、グループBでは首位のTHWキール(ドイツ)がターギ・キエルツェ(ポーランド)と25-25で引き分け、バルセロナと並びここまで無敗を続けるグループAの首位MKBヴェスプレーム(ハンガリー)、8勝1敗でグループD首位のハンブルク(ドイツ)は、クロアチア・サグレブ(クロアチア)、ハルムスタッド(スウェーデン)にそれぞれ快勝した。