スポーツビジョン〜アスリートは眼が命〜一覧

2014-3-13

スポーツビジョン評価項目・トレーニングとその効果について

1)スポーツビジョンの評価項

 スポーツに重要な視覚機能のことを「スポーツビジョン」という。
視覚から得た情報によって場面を判断しそれに対応して体を動かす、この一瞬の状況判断を支える重要な機能である。
実際に一流のアスリートはスポーツビジョンの成績が抜群にいいと報告されている。

 このスポーツビジョンの評価は、次の8項目によって評価できる。
簡単に説明すると・・・

① 静止視力(SVA)
 一般的に眼科で行う視力検査のこと。遠方の目標がどこまで小さなものまで識別できるか(最小分離域)を測定する。第2回でお話したようにスポーツをする上で最も基本となる能力。

② KVA動体視力(KVA)
 遠方から近づいてくる目標を識別する能力。
 KVA動体視力は、静止視力と相関性があり、静止視力が悪ければKVA動体視力も悪くなる。

③ DVA動体視力(DVA)
 眼の前を横に移動する目標を識別する能力。
 こちらは静止視力との相関性はない。競技中は先ほど述べたKVA動体視力と共に働くことが多い。

④ コントラスト感度(OS)
 白黒の微妙なコントラストを識別する能力。
 コントラストとは、対象物の明るさとその背景の明るさの対比のこと。年齢とともに低下する。

⑤ 眼球運動(OMS)
 素早く動くものを眼で追う能力。
 両眼がバランスよく、目標に対し視線を素早く動かし、追従できるかが重要である。

⑥ 深視力(DP)
 距離感、位置関係を見極める能力。
 大型や2種の運転免許の基準にも検査として使われる。両眼で見る能力(両眼視機能)が非常に重要となる。

⑦ 瞬間視(VRT)
 一瞬のうちにたくさんの情報を正確につかむ能力。
 競技中はゆっくり周囲を見る時間はなく、一瞬で味方の位置、相手の位置など状況を把握することが必要である。

⑧ 眼と手の協応動作(E/H)
 目でとらえた情報に手や足で素早く反応する能力。
 一点だけに集中せず、どれだけ広い視野もって見ているかが大切である。

以上の8項目によってスポーツビジョンは評価できる

2)スポーツビジョントレーニングとその効果について

 スポーツビジョンを鍛えることは競技成績の向上、またけがの予防にもつながる。良い成績を残すためには今まで行われてきた身体やメンタルの管理だけでは不十分でスポーツを前提とした専門的なビジョントレーニングが必要である。トレーニングを行なうことによってスポーツビジョンはさらに向上し、効果が保持されることが期待できる。

 トレーニングを行う上でまず必要なことは、眼科的検査を行い、必要に応じて適切な視力矯正を行うことである。何度も言っているが、スポーツをする上で最も重要となるのが、「静止視力」である。
 外界の情報の8割以上を視覚から得ているとも言われているが、適切な矯正を行うことで、視機能レベルが高まり、高いパフォーマンスにつながる。

3)スポーツビジョントレーニングの実例

 当院では、スポーツビジョントレーニングにVTS(visual training system)3D動体視力トレーニングステムソフトと動体視力トレーニング眼鏡(視覚負荷トレーニング)を使って行っている。

◆当院で行っているスポーツビジョントレーニングの1例
 VTS(visual training system)を使い、2か月間 週2回のトレーニング行い、トレーニング前後で測定を行った結果が下記である。

競技種目:テニス
体験者:30代男性

 

 トレーニング後、スポーツビジョン評価項目である「動体視力」「深視力」「眼球運動」の向上が見られた。

 実際にトレーニング行っている本人に聞いたところ、「トレーニングした後ではラケットに当たるときの球の回転方向まで見やすくなり、確実に視界が広がっている!」とトレーニング効果を実感していた。

 動体視力トレーニングを体験した本人が技能レベルの向上を体感でき、試合成績も上がったと喜んでいるは嬉しい限りである。

 次回はその他のトレーニング方法について詳しく説明する。



医療法人社団 順孝会 安達眼科




1974年生まれ 視能訓練士長 保険科学博士

九州保健福祉大学保健科学部視機能療法学科講師

現在、臨床では
視能訓練士(国家資格)として、眼科検査や弱視斜視の視能訓練治療、発達障害のある子供たちへの視覚発達支援、またスポーツ選手の視機能検査やトレーニングに携わり、教育では九州保健福祉大学で教壇に立ち、研究では視覚情報処理過程からみた眼疲労の研究、薬剤の開発に取り組んでいます。

最近の研究論文・所属学会
・事象関連電位とATMTによる眼疲労の検討. あたらしい眼科 2010:27(10):1459-1465

・事象関連電位と酸化ストレスマーカーによる眼疲労の検討. 眼科臨床紀要 2011:4(12)

日本視機能矯正学会員
日本ロービジョン学会員
日本弱視斜視学会員
ファイトフォービジョン会員