スポーツビジョントレーニングについて
前回お話したようにスポーツビジョンはトレーニングを行なうことによってさらに向上し、効果が保持される。
スポーツ選手は、他の人よりもスポーツビジョンが優れていることがこれまでの研究で明らかになっており、ここ数年、競技能力を向上させるためのスポーツビジョントレーニングに注目が集まっている。
実際に、今年の春の選抜高校野球大会でも決勝戦まで登りつめたチームがスポーツビジョントレーニングを毎日の練習の中で積極的に取り入れていると新聞でも報道された。
スポーツビジョントレーニングはアイデア次第で日常生活の中でも簡単に行うことができる。今回、身近にスポーツビジョンを鍛える方法をいくつか紹介したい。
○電車からホームの駅名や看板を読む
電車に乗りながら目の前を通り過ぎる駅の看板の文字などを読んだり、電柱を目で追ったりすることで横方向の動体視力を鍛えることができる。
※頭を動かさないようにして目だけで追うようにする。
○パッと一瞬開いて閉じた本のページや文字を把握する
瞬間視のトレーニングで、競技中はゆっくりフィールドを見る余裕はなく、一瞬でどれだけの情報を正確に手に入れるかが大切。
○伸ばした両手の指先を交互に見る
両手を肩幅より少し広めにして真っ直ぐ伸ばし、1本指を立てその指の先を素早く交互に見る。※頭を動かさないようにして目だけで追うようにする。
眼球運動のトレーニングで、指を見るときは早くしっかりと見る。慣れるまでは、初めゆっくりと行い、徐々に早くするとよい。
また、伸ばした両手の幅をさらに広げたり、横方向だけではなく上下や斜め方向に両手を伸ばすと、より効果的なトレーニングとなる。
○ボールに文字や数字を書き、それを投げてボールに書いた文字を読む
縦方向の動体視力トレーニングで、しっかりとボールの回転を見て見極める事が必要。
○書かれた数字や平仮名を順に眼で追う
1から50まで記入したカードや「かるた」をランダムに置き、頭を動かさないで数字や平仮名を順番通りに素早く眼で追う。
※ストップウォッチでタイムを計測すると結果の比較ができる。
◎動体視力トレーニングメガネ「プライマリー(primary)」を使った新しい動体視力トレーニング
このメガネは両目を液晶シャッタで断続的に遮断する機能があり、視覚負荷をかけることで動体視力トレーニングとしての2つの効果が期待できる。
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1.スローモーション効果
レンズに搭載された液晶の点滅システムによって、高速で移動・回転・振動するもがゆっくりと見える。反応速度も向上する。
2.視覚負荷効果
視野を断続的に遮断することで眼に負荷を与える。集中力を高め、最後までしっかりと眼で追うことを習慣づける効果がある。
今回紹介したものは、ほんの一例しかなく、スポーツビジョントレーニングは、目の動きを意識して行えば、やり方ひとつでいくらでも行うことができる。
■トレーニングを行う上で必要な事
・適切な視力矯正
まず、トレーニングを行う上で眼科的検査、必要があれば視力矯正をしなければならない。静止視力が悪かったり、両目の視力のバランスが悪ければ、いくら動体視力トレーニングをしても効果は出ない。
・トレーニングを継続する
今日からトレーニングを始めてすぐに効果が表れるものではない。継続をすることが重要。目安は1日5分〜15分程度でよい。トレーニングも自分なりの工夫を、飽きないようにしていくことも大切である。
・安全な環境で実施する(無理をしすぎない)
見えにくいものを無理に見ようとして、集中するがあまりに周りの情報に気づかず、アクシデントになってしまったり、連続して行いすぎ疲れてしまっては本末転倒。
目を徐々に慣らしていき、疲れたら適度に休む。周りの状況に気を配って行うことも重要である。
次回は最終号「スポーツビジョンのまとめ」
医療法人社団 順孝会 安達眼科
1974年生まれ 視能訓練士長 保険科学博士
九州保健福祉大学保健科学部視機能療法学科講師
現在、臨床では視能訓練士(国家資格)として、眼科検査や弱視斜視の視能訓練治療、発達障害のある子供たちへの視覚発達支援、またスポーツ選手の視機能検査やトレーニングに携わり、教育では九州保健福祉大学で教壇に立ち、研究では視覚情報処理過程からみた眼疲労の研究、薬剤の開発に取り組んでいます。
最近の研究論文・所属学会
・事象関連電位とATMTによる眼疲労の検討. あたらしい眼科 2010:27(10):1459-1465
・事象関連電位と酸化ストレスマーカーによる眼疲労の検討. 眼科臨床紀要 2011:4(12)
日本視機能矯正学会員
日本ロービジョン学会員
日本弱視斜視学会員
ファイトフォービジョン会員