スポーツ解体新書
「スポーツとは、人間の創り出した素晴らしい文化であり、それは、誤って政治的に利用されたり経済的に利用されたりした過去は存在しても、本質的には、非暴力的で、民主的で、人間社会を豊かにするものであり、ひとびとの生活に幸福をもたらすものである」とは本書のまえがきの一文である。 本書は日本のスポーツライターの第一人者と言われる著者によって、そもそもスポーツとは何か?日本のスポーツはどのように伝えられ、展開し、今後どう発展していくのか?日本のスポーツと欧米を中心とした諸外国のスポーツは文化的、経済的に見てどの様に違うのか?等について、古くは古代オリンピックまで遡り、現在の日本のスポーツを考察している。本書の論点の中心となるのは、「学校体育」「企業スポーツ」「アマチュアリズム」「ジャーナリズム」といった、諸外国とは異なった日本特有のシステム・思想についてである。戦後の日本のスポーツを支えてきた上記の構造、欠点、そして今後の展望を語っている。 近年、Jリーグを中心とした地域密着型プロスポーツチームの台頭や、バブル崩壊による企業スポーツの衰退、そしてそれに伴うクラブ事業化や新しい企業スポーツの在り方など、日本のスポーツ界は一つの転換期を迎えていると言える。そんな激動のスポーツ界にあって、いま一度「そもそもスポーツとは何か?」「なぜ地域密着型のチーム作りをする必要があるのか?」「スポーツには人々を幸せにする社会的価値があるのか?」「スポーツが社会に及ぼす経済的価値はどの程度のものか?」といったことを整理し考察する必要があるように思われる。 スポーツチームの経営を行う者、目指す者にとって、「スポーツ」を体系的・論理的に学ぶことは重要であり、本書はそのための格好の教科書と言えるだろう。
|