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スポーツ経済効果で元気になった街と国




 今や五輪やサッカーW杯はスポーツの祭典だけでなく、大きなビジネスチャンスの場となっている。世界中で数十億の人たちがテレビで熱狂し、数十万人の人が実際に現地で観戦し、関連グッズを買うといった消費行動はもとより、開催地にとっては、建設、工業、商業、輸送などを中心とした産業部門も活性化される。もちろん、国際的な大イベントに限らず、国内のプロリーグや大会も、直接的間接的な経済効果は公共事業をはるかに上回るといわれる。
 本書はスポーツと経済の関係に言及し、今後の都市や経済の発展にスポーツをどのように活用すべきか、地域と市民に根ざしたスポーツ文化をいかに育み、根付かせるべきか、の問いに対し、筆者が持論を展開している。ロサンゼルス五輪の商業化や1990年代の衛星放送・ケーブルテレビなどの登場でスポーツイベントの価値が一気に上がった、という筆者の指摘は、昨年の北京五輪を見れば明らかで、スポーツ用品メーカーだけでなく、メディアにとってもスポーツはビジネスの主戦場になっている。
 最終章では、「スポーツで元気になった街」としてJリーグ・鹿島アントラーズや浦和レッズの事例に触れ、「長期ビジョンを計画し、長い年月をかけてクラブが到達すべき目標を明確にすること」や「スポーツを支えるファンや地域住民とどのようにコミットしていくか、新たな戦略を構築すること」の重要性を訴える。日本における地域に根ざしたスポーツクラブづくりを欧州のように根付かせるためにどのように発展させるべきか、本書にはヒントがたくさん詰まっている。