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地域スポーツクラブのマネジメント クラブ設立から運営マニュアルまで




 本書は地域スポーツクラブ運営にあたっての総合的な運営マニュアル本である。著者は、行政書士の資格を有しており、クラブ運営にあたって必要なマネジメント、特に“法令順守”、“リスクマネジメント”、“クラブ運営に伴う様々な権利(知的財産権等)の扱い”、“税務に関するマネジメント”といった内容が具体的かつ実践的に述べられている。一見すると難しい内容のように思えるが、非常にわかりやすい形で文章化されており初学者でも十分理解できる構成となっている。
 スポーツ振興基本計画のもと、地域におけるスポーツ環境の整備充実方策として「全国の市区町村に最低一つは総合型地域スポーツクラブを創設する」、という事業がこれまで展開されているが、現在のところ2010年までに策定している目標数値に到達するかは未知数であり、かつ設立された地域スポーツクラブ全てが順調に運営されているわけではない。筆者も述べているように、スポーツクラブの運営に必要なのは通常の会社と同様、“お金の管理”、“会員(顧客)の管理”、“法律的な知識”、“リスクマネジメント”といった“マネジメント能力”である。これは今までの日本の地域スポーツクラブに不足していた部分であり、今後の地域スポーツクラブ運営にあたって必ず必要とされる能力の一つである。
 その他、本書の最終章にこれからの地域スポーツクラブの形として、地域スポーツクラブを街のコミュニティーとして活用していくことを提案しており、“スポーツ選手のセカンドキャリアの受け入れ先としての地域スポーツクラブ”、“プロスポーツと地域スポーツクラブの協働”、“地域の社会問題を解決する手段としての地域スポーツクラブ”について言及している。
 『地域スポーツクラブを立ち上げたいが、どうすればいいか分からない』、『地域スポーツクラブを立ち上げたが、どうマネジメントしていけばいいのか分からない』、『今のクラブにおけるマネジメントは果たして適切であろうか?』といった疑問を持つ人々にとって、本書は格好の教科書となるだろう。