イチオシ!スポーツ Book Review一覧

トップアスリート




 本書には、日本や世界を代表するアスリートたち35人が登場する。五輪で連覇を達成した競泳の北島康介に女子レスリングの吉田沙保里、ワールドベースボールクラシック(WBC)連覇の立役者となった松坂大輔などそうそうたるメンバーのほか、カーリングの本橋麻里やサッカーの梅崎司、義足のハイジャンパー・鈴木徹などマイナースポーツや今後期待の選手もバランスよく扱っているので、スポーツ初心者が広くスポーツに興味を持つのには最適の書だ。
 著者は、インタビューを重ねることで、トップアスリートの強さだけではなく弱さを見ていく。そして「彼らの弱き姿、儚き心にこそ真実がある」という思いを強く抱くようになる。例えば、常に強気な発言で自らを鼓舞し、結果に結びつけてきた北島は、「自らに天賦の才能など感じたことがない」と打ち明ける。初出場したシドニー五輪では100メートル平泳ぎで4位に終わったが、「金メダルを取らなければ水泳が好きだという気持ちを証明できない」と猛特訓した末、アテネで金2つ、そして北京でも金2つの連覇を達成したのだ。「金メダルは幸運だけでは絶対に手に入れられない。意志が必要なんです」。有言実行の男の言葉には、重みがある。
 また、登場するトップアスリートに共通するのは、スランプや選手生命を脅かす大けがを経験しても、常に競技を続けられることに感謝し、周りに感謝する謙虚な姿勢を持ち続ける点だ。これこそがトップアスリートをトップたらしめている最大の要因なのだろう。
 
本書には1人1ページのモノクロのグラビアも掲載されている。トップアスリートたちの競技中には決して見られない穏やかな表情が新鮮だ。