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誰も知らないプロ野球「審判」というお仕事




 多くの人が一度は野球観戦をしたことがあるだろう。球場、あるいはテレビの画面を通して映し出される選手の活躍に惹かれたことも少なくないはず。しかし、ゲームを進行させている審判の姿を見て憧れを抱いた人は一体どれほどいることだろう。審判とはそういうものなのだ。ほとんど脚光を浴びることなく、誤審でもしようものなら非難の的となる。周りからナイスジャッジと称えられることもないばかりか、常に完璧を求められるのだ。
 本書はセントラルリーグの審判を16年間勤めた篠宮愼一氏が自身の体験を元に、普段、我々が知ることのないプロ野球の審判という仕事がどういったものであるのかを紹介している。先に「セントラルリーグの審判」とあったが、日本のプロ野球は二つのリーグに分かれている。セントラルリーグとパシフィックリーグだ。プロ野球選手はどちらかのリーグに所属する球団と契約しているが、実は審判もどちらかのリーグの野球連盟と契約してプロ野球審判となる。こういった事は意外に知られてないのではないだろうか。上記以外にも審判の給料、罰金といった表に出ない話とそれに関わる筆者とのエピソードが分かりやすく語られており、プロ野球審判という職業をよく窺い知ることが出来る。そして落合博満選手や古田敦也選手、イチロー選手といった名選手達、また球界の親分こと大沢啓二氏や野村克也氏、王貞治氏のような名監督達に纏わるエピソードも描かれており、審判の視点から見える各人物はまた一味違った印象を与えてくれる。
 本書を読んでみて思うことは、著者は本当に野球が好きだということだ。野球少年がそのまま大人になったようなもので、甲子園で審判を務めることになった時や、スター選手を前にした時の感動がとても伝わってくる。そもそも野球が好きでなかったら審判はやっていられない。それほどまでにプロ野球審判とは過酷な職業であるのだ。本書を読んで頂ければ審判へのイメージがきっと変わるだろう。それを踏まえて、野球観戦をする時、あるいは実際に試合をするときにまた違った見方をしてみるのも面白いのではないだろうか。