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告白




 先ごろ行われた米メジャーリーグ(MLB)のワールドシリーズ。4勝2敗で世界一の座をつかんだニューヨーク・ヤンキースの話題の中心にいたのは、最終戦で6打点を記録し、ワールドシリーズMVPに輝いた松井秀喜だった。巨人時代に日本一を経験した松井にとって、世界一は悲願だった。その思いが綴られているのが、2年前に刊行された本書である。野球に真摯に愚直に取り組んだ半生、そして世界一になるために何をすべきかなど、素直な言葉で語っている。
 さらに、この2年の間で松井にはもう一つの大きな変化が訪れた。昨年3月の結婚だ。本書には「人生観」「野球観」に加え、「恋愛観」で一項目設けているのも特筆ものである。「理想の女性は、自分を感動させてくれる女性」「未来の花嫁には、毎日でも『愛している』と言える」など、滅多に聞けない内容も盛りだくさんだ。その理想を現実のものにしたからこそ、世界一もついてきたのかもしれない、そう邪推するのも楽しい。
 本書を読んで、ふと昔見たアニメで自分の願いを描き込むと何でも叶う「ドリームノート」を思い出した。そう考えると、本書は松井秀喜の「ドリームブック」なのかもしれない。ただ、圧巻すべきは、現実の世界で自分の思いや希望をすべて現実のものにしているところである。そこに、常人では到達できない「松井秀喜」の領域を感じられるのだ。