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「決定力不足」でもゴールは奪える




  今年はサッカーW杯イヤー。昨年行われた組み合わせ抽選会で、日本はグループEでオランダ、デンマーク、そしてカメルーンと同組に入った。いずれもFIFAランキングで日本を上回り、早くも予選リーグで一勝もできないのではないか、という悲観論もある。「決定力不足」はここ数年日本代表が言われ続けてきた課題であるが、本書を読めば、現在の日本代表の本当の課題が浮き彫りになると同時に、「決定力不足」を克服するヒントもつまっている。
  著者は第一章で、かつては「得点力不足」と言われていたのが、いつしか「決定力不足」という言葉に置き換えられたと主張する。本書では、チームとしての問題の意味合いが強い「得点力不足」に対し、特定のストライカー個人が戦犯になりうる「決定力不足」を分けて論じるところから始まる。「4-2-3-1」の守備を重視した布陣に対応できていない現状に触れ、世界の潮流から乗り遅れている中盤至上主義との決別やサイド攻撃、ドリブルの強化を提案している。そして「決定力不足でも工夫次第で、得点力不足は解消できる」と結論づける。
 著者は1982年のスペイン大会以来、7大会連続でW杯を取材しており、海外サッカーへの造詣も深い。過去の名選手の具体的なプレーが多く出てくるので、サッカーファンは本書を読みながら当時に思いを馳せることができるだろう。また、日本サッカーを通して日本人論にも言及しており、サッカー初心者でも楽しめる部分も多い。