蹴球日記
本書は現サッカー日本代表監督(2010年次)である岡田武史氏が2002年日韓ワールドカップを現場からではなく外から見て、また1998年フランスワールドカップ代表監督時代からの自身の活動を織り交ぜて振り返った内容となっている。 フランスワールドカップ予選、電撃的な監督就任と劇的なワールドカップ初出場を決めた当時、どんな考え、また哲学をもって代表監督に臨んでいたのかを窺い知ることができ、話題になった発言やカズの代表落ちの真相など知る上でも本書は貴重である。また表現が豊かで、まるでその時の光景が浮かんでくるかのように非常に読みやすく面白い。 本書を読み進んでいく上で驚くべきは、筆者のサッカーはもちろん環境問題から文学といった幅広い知識の豊富さ、そして何よりも先を見た冷静な判断を伴う行動力だ。よりサッカー、コーチングを学ぶためにドイツへ留学した際に起きたアクシデントの数々、例えば留学先のクラブに連絡が通っていなかったという考えられないような緊急事態が起きた時に筆者がとった行動や、苦労して他クラブから許可が下りたものの、最初はグランドに入る事が出来ず練習を眺める周りのおじさんと何ら変わらない状況の中から、慎重にそして大胆に行動を起こしていきチームに溶け込んでいく様子は、正に筆者をよく表しているように思える。また、言葉がうまく伝わらない中での住居探し、さらに苦労して車のナンバーを取得した際のやり取りや、家族の事を気遣う様子など、テレビ画面から映し出される岡田監督からは想像も出来ないような姿に思わず親しみを感じてしまう。もちろん専門家の視点から見た98年、02年のワールドカップの各試合への解説、感想は流石と思わずにはいられない程分かりやすく、その知識と読みの深さに驚くばかりだ。 筆者のサッカー、そして家族への愛情を感じ、滅多に表に出ることのない本音を知ることができる本書は、現岡田ジャパンをより理解するきかっけになると同時に、サッカーをプレーしたこと事があるないに関らず楽しむことできるオススメの一冊だ。
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