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野球を学問する




 甲子園の寵児、読売ジャイアンツのエース、そしてメジャーリーガーと華々しいキャリアを積み上げてきた桑田真澄が現役を引退してなお、新たなキャリアに挑戦した。それが「早稲田大学への入学」だ。2009年4月、晴れて早稲田大学大学院スポーツ科学研究科・1年制コースに入学し、1年後には同コースを首席で修了。桑田の修士論文は最優秀論文賞を受賞する成果も挙げた。本書は、桑田と担当教官だった平田竹男教授の対談を通して、桑田の早稲田での1年を振り返り、論文のテーマとなった「野球道」の内容を紹介している。
 桑田によれば、「野球道」は大正時代に早稲田大学野球部監督を務めた飛田穂州に遡る。飛田は「学生野球は教育の一環」としており、桑田は飛田の「野球道」を「練習量の重視」「精神の鍛錬」「絶対服従」の3つの言葉に集約する。「戦時下であったからこそ生まれた飛田の野球道が、現在の平和な日本でも生き続けていることが問題」と指摘し、桑田の研究はさらにプロ野球の現役選手や大学生選手270人へのアンケート調査につながる。「指導者が練習時間内にタバコを吸っていたか」「指導者から体罰を受けたことがあるか」など、野球の良さも問題点も知り尽くした経験者ならではの画期的な質問も多く、桑田の問題意識の高さ、洞察力の深さが伺われる。
 一年間の研究を通して桑田がたどりついた「答え」は必読。野球以外にも通じる部分が多くあり、平田教授も大絶賛する理由がよく分かる。桑田の研究は、日本野球の将来にとって、ひいては日本スポーツの将来にとっても大きな提言となるだろう。