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W杯に群がる男たち 巨大サッカービジネスの闇




 この6月、日本列島を熱狂の渦に巻き込んだFIFAワールドカップ南アフリカ大会。先日も、アディダスが“W杯効果”で2010年上半期の純利益を前年同期の約23倍に増やしたというニュースが伝えられ、サッカーは世界的関心事のひとつで、大きなビジネスチャンスになり得ることを証明している。
 本書は、アジアで初めてのW杯となった日韓大会(2002年)開催決定までの日韓両国の招致合戦の舞台裏と、共催を決定した男たちの思惑を交錯させながら、スポーツビジネスの暗部を明らかにしたスポーツノンフィクションだ。
 W杯を自国で開催するには、潤沢な資金と強力な人脈が必要であろうことは想像できるが、本書にはその部分が生々しいまでに綴られている。前FIFA会長のアベランジェ、現会長のブラッター、FIFA副会長で日韓共催を実現した立役者、鄭夢準らが登場し、彼らの点の動きが実は全て線のようにつながっていたと明らかになる。FIFA会長選挙を巡る権力闘争だけでなく、放映権ビジネスにスポンサー契約など五輪にも共通するスポーツビジネスの話題も興味深い。
 折しも、日韓両国は共催から20年後の2022年W杯開催国への招致にも乗り出している。2002年の招致では、日本は高いIT技術と計画を持ちながらも、FIFA理事会内での“外交下手”が災いして韓国との共催に押し切られた苦い過去がある。2022年、日本が単独開催を勝ち取るために何をすべきか、また何をしてはいけないのか。そのヒントと教訓が詰まっている。