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賢いスポーツ少年を育てる~みずから考え行動できる子にするスポーツ教育




 子ども達でチームを作り、勝利を目指す指導者のどこかに、選手を集めなければいけないという気持ちがちらつくことはないだろうか。強いチームには魅力がある。私もかつて、「バスケットボール部がそれなりに強いから」という理由で高校を選んだことがある。
 私の母校のバスケットボール部は、「意識の高い」集団だった。個人練習は、欠かさない。ただ、同時に「周りの見えない」集団でもあったので、練習中の雰囲気はぎすぎすして、他人の意見など取り入れようとしない者ばかりだった。指導者、キャプテンにチームをまとめる力はなく、大きな大会を目前にしてもチームはいつもバラバラだったのを覚えている。
 「賢いスポーツ少年を育てる」を読み始めて、つい最近の思い出がよみがえってきたのは、そこに書かれていることが、私が経験してきたことによく似ていたからだ。
 サインは、追い込まれるまでとにかく「待て」。ひたすら四球を狙い、塁が埋まったところで「小学生にしては大きな子」いわゆる早熟な選手が一発大きなあたりでランナーを還す。少年野球では、この方法が勝利に近づく術かもしれないが、状況に応じたバッティングや選手自身が考え、判断するプレーがほとんど入っていない。選手たちは本当に野球をしたといえるだろうか。
 子どもに自由にプレーをさせた場合、判断力の未熟さからミスの危険性が高まる。子ども達には失敗から生まれる試行錯誤が大切だが、指導者の中には失敗自体を受け入れられない者がいる。どこかで、選手育成よりも目先の勝利に執着しすぎているからかもしれない。
 勝利にこだわることが必ずしも悪いとは言えない。勝つ喜びが練習意欲を刺激することが少なくないからだ。負けて、得るものは大きいが、負けてばかりではモチベーションの維持が難しい。子どもの目を競技に向かせる手段としても勝利の役割は大きい。
 自分で判断する力を養わずに育った子どもはどのような人間に育つのか。考える力の無さから、物事の善し悪しも判断がつかず、セルフコントロールがきかなくなってしまうことはないだろうか。
 選手育成において、指導者の持つ役割は様々だ。考え、判断する力を養う。一握りのスター選手を育てるだけでなく、社会で手本となる人間形成に力を貸す。スポーツをすることで集団の中で生きる道、スポーツマンシップを学ばせる。身に付けたことを社会に出て役立たせる。それこそ、指導者の果たすべき役割ではないだろうか。小さな勝利のために、スポーツマンの資質を失わせるようなことがあってはならない。