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心を整える。勝利をたぐり寄せるための56の習慣


 慌てて家を出るとき、忘れ物に気づいても、なかなか見つからない。あきらめて、帰宅後にもう一度探してみると、案外すんなりと見つかる。似たような経験は誰にでもあるのではないか。

 スポーツの場でも同じことが言える。カッと、熱くなって無駄な反則を犯す。相手からのプレッシャーに焦ってミスパスを出す。ミスを犯さないためには、自分を見失わないための、常に安定した心の状態を持つことが大切なのである。

 サッカー日本代表キャプテンの長谷部誠は、自身を「一目でわかるような突出した武器がない、評価しづらい選手」と評する。それでも代表では欠かせない選手となり、所属クラブで数々のタイトルを手にしてきた。単に運が良かっただけではない。プロの世界で生き、勝利をたぐり寄せるための習慣を、長谷部は戦いの中で身につけてきた。

 キーワードは「心」。心はサッカー以外の部分も影響する。特に、ヨーロッパで活躍する日本人選手には時差の問題が付きまとう。実際、時差ボケによる体内時計の乱れは、動きを重くし、「調整不足」などと批判される原因となる。しかし、長谷部は一週間前から就寝時間を早くするという独自の時差対策で、きちんとしたパフォーマンスを発揮するための準備を行っている。

 常に安定した心を備えることで、一定以上のパフォーマンスを発揮できる。睡眠、食事などは、大事な試合前もいつもと同じリズムで準備する。プレッシャーに対し、強靭なメンタルで打ち勝つのでなく、メンタルコントロールでプレッシャーを受け流す。高いプロ意識と、安定した心が、勝負どころで結果を出すための秘訣だ。

 まずは、しっかりと準備すること。そうすれば慌てて家を出なくてすむ。仮に忘れ物に気がついても、心にゆとりを持っていれば、すんなりと見つかるだろう。