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日本男児


 ユニバーシアード代表、プロ入り、A代表デビュー。南アフリカW杯後「世界一のサイドバックになる」と決意し、イタリアのチェゼーナに移籍。アジアカップ優勝を決定づけるゴールを演出すると、移籍期限ギリギリのタイミングで世界屈指のビッグクラブ、インテルに加入した。驚異的なスピードと無尽蔵のスタミナで左サイドを制圧する日本のサイドバックは、速度を維持したまま一気に階段を駆け上がった。シンデレラボーイと呼ぶ人もいるが、長友佑都は着実にステップアップしている。
 ギアが、がっちりと噛み合うようになったのは、サイドバックに転向した大学時代。裏を返せば、大学までのサッカー人生は、あまり日の当たらない道を歩んできた。道が平坦でなかったことは、しっかりとした土台を造る。中学時代、目標に掲げていた全国大会には手が届かなかったが、予選敗退直後から駅伝に挑戦し、誰にも負けないスタミナを身に付けた。大学時代、椎間板ヘルニアとの戦いで、体幹トレーニングの重要性を再確認。今では強靭なフィジカルを誇るアフリカの選手達にも当たり負けしない。こうした土台を身に付けたからこそ、一気に加速し、倒されることなく走り続けることができる。
 「フィジカルが弱い」「要求しない弱気な姿勢」といった、ヨーロッパの日本人に対するネガティブなイメージを、日本男児は払しょくし、どの場面でも味方のために走る献身性、助言に耳を傾ける謙虚さなどの“日本人らしさ”は、今後の急激な成長を可能にする。
 インテルでの熾烈なポジション争いの真っただ中。定位置を掴むことはできるのか。少しでも気を抜けば一気に置いてかれる厳しい環境で、世界一のサイドバックへの挑戦は、まだまだ続く。