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進化する日本のサッカー



 『物を見るのは魂であり、目それ自体は盲目である。物を聞くのは魂であり、耳そのものは聾である。』日本サッカーの父、デットマール・クラマーの言葉である。この言葉に何を感じるだろうか。

 皆さんは、長友佑都の出ているテレビCMをいくつかご存知だろう。サッカー日本代表の試合を見たことのない人が果たしているだろうか。メッシと、なでしこジャパンの澤穂希の2ショットは、デットマール・クラマーなくして有り得なかったと言っても過言ではないかもしれない。

 今や、サッカー日本代表の動向は、誰もが興味のある関心事だと言える。その盛り上がりは順調であるように映っているかもしれないが、決して平坦な道ではなかった、日本サッカーの歴史を本書で知る事ができる。歴史といっても、単に事象的な事柄が並べられているわけではなく、その歴史の背景のエピソードも書かれている。皆さんもご存じの名前もたくさん出てきているため、本書はよりリアルで身近に感じられるのではないだろうか。  また、日本サッカーを進化させるために、どんな信念があったのかなどコーチングの哲学書としても読むことができる。そしてこの本書から窺い知れる日本サッカーの進化は、どんなスポーツにもあてはまることであり、更にはスポーツの領域を超えて、多くの分野にも置き換えられる。

 著者はサッカーを語るとき、『指導者養成』と『若手の育成』の二つを思い出してほしいと言って、この本を締めくくっている。なぜ、この二つなのかは本書を読めば納得できるし、現在の日本サッカーの国内での存在感、世界で戦える選手の登場も頷ける。この功績の陰には、魂を訴えたクラマーから始まり、そこから学んだ多くの日本人指導者の試行錯誤、葛藤、対立、協力などの語りつくせない光と影があったことを、忘れてはならない。『指導者は学ぶことを辞めたとき、指導を辞めなければならない』というこの本にも出てくる言葉が忘れ去られない限り、日本サッカーは進化し続けるだろう。