采配
オレ流など存在しなかった。
落合博満の魅力がぎっしりと詰まった本である。彼に対してあまり良い印象を持っていない人にもお薦めしたい。また、監督・コーチ、アスリート、スポーツに関わっている人のみならず、多くの立場の人、さまざまな職業の人にも是非一度読んでもらいたい一冊。読んでみれば体感してもらえると思うが、プロ野球の世界を舞台にした話なのに、いつの間にか野球とは無縁の自分自身に置き換えながら読み進めてしまう。 野球人落合の真の姿がここにある。文中に出てくる彼のエピソードは、彼が作って来た多くの伝説のおそらくほんの一部に過ぎないと思われる。しかし、それらからあの王貞治でさえ二度であった三冠王を三度も成し遂げた偉人ぶりが窺える。きっと、読み終わったあと、落合博満という人物についてもっと知りたくなるだろう。マスコミを通じて、私たちに届いていた彼の姿とはかけ離れた人物像が露わになる。著者への見方が変わると同時に、情報化社会の中で、メディアリテラシー(情報を評価・識別する 能力)の必要性を改めて感じている。 ただし、断って置きたいことは、この本は自叙伝ではない。 近年スポーツの有効性は高まり、ますます、有能なアスリートが増えて行くと予想される。昨年の夏にはスポーツ基本法が施行され、アスリートのセカンドキャリアキャリアについても言及されている。しかし、制度改革や、環境の改善が進むと同時に、指導者や選手達がそれに甘んじることなく学んで行かなければ、本書に出てくるような残念な事例を生んでしまうだろう。著者は絶対的な方法論など存在しないと強調している。そんな彼の指導哲学を読んで、自分の方法論、受けてきた指導を見つめ直す機会にしてみてはどうだろうか。 |