イチオシ!スポーツ Book Review一覧

戦力外通告 第2の人生を生き抜く男たち



 29歳。これは、過去のあらゆるプロ野球選手が引退するときの平均年齢である。高校もしくは大学などを経て会社員として就職し定年を迎える場合、だいたいの方たちは60歳ごろが一般的な引退時期であろう。ましてや20代後半はこれからが働き盛りという年代である。
 しかし、プロ野球選手という職業は同じ29歳でも日本球界やメジャーリーグで活躍する選手もいるが、方や同期入団しながら世間に注目されることなく引退してしまう(もしくはせざるを得ない)こともある厳しい世界である。
 この本では、栄光と挫折を経験した選手たちが戦力外通告を受けてもなおその後の人生に勝負を挑んでいく姿をテレビ版とは違う独自の取材によって記されており、現実の厳しさや将来に対しての葛藤など様々なものを感じることでいかにプロ野球という世界が過酷なものか、華やかな世界の裏で実際に起こっている真実はこれほどにまで辛いのか、ならびに野球に人生を懸けた7人の男たちのように諦めない姿勢や未来に向かうための希望を抱くことの大切さをあらためて知ることのできる一冊である。
 登場する7人の男たちの人生は様々で、人気球団の4番を務めたものから格闘家を経験したものまでいる。だが7人に共通するのは、いちど野球人生において挫折を味わったということである。そこから、どうしても野球選手という夢を捨てきれずに再挑戦する姿。選手とは違う場所から夢を追い続ける姿。今まで培った経験を糧にして全く違う道に進む姿など、自身の再スタート地点は同じでも、きっと生涯のゴール地点は全く違うものになるだろう。
 私たちもいつか彼らのような厳しい決断をする日がきっと来るだろう。、これから挫折と向き合うかもしれない人々はもちろん、今までに山も谷も歩んできた方々にぜひ読んでもらいたい一冊と言える。